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骨折するとなぜ痛い? 痛みの原因と緩和させる方法

交通事故やスポーツに付きものの「骨折」。しかし、その痛みを感じるメカニズムや骨折時の応急処置について、正しく知っている人は少ないのではないでしょうか。医師に聞きました。

骨折の痛みの原因や、痛みを緩和させる方法は?
骨折の痛みの原因や、痛みを緩和させる方法は?

 交通事故やスポーツ、あるいは転倒などによって「骨折」を経験した人は少なくないと思います。傷口が見えない、あるいは血が出ない場合でも、激痛を感じることについて不思議に思った経験もあるかもしれません。骨折の痛みを感じる仕組みや原因、骨折時の応急処置に関して知っておくべきことを、医師の髙田女里さんに聞きました。

骨折すると痛みを感じる理由

 そもそも、なぜ骨折すると痛みを感じるのでしょうか。それには2つの理由があります。

【骨の周りの膜が破れるため】

 私たちが爪を切ったり、髪の毛を切ったりしても痛みはありません。それと同様に、骨にも知覚神経はありません。しかし、骨は骨髄を包み込む形で、表面は「骨膜」という膜で覆われています。骨膜には血管も神経も巡っており、骨に栄養を運んだり、神経経路を伝って知覚を脳に届けたりします。骨が折れることによって骨膜も損傷し、神経を刺激してしまうことで痛みが生じるのです。

【周りの組織が傷つくため】

 骨折の被害は骨膜だけにはとどまらず、骨の周囲に存在する筋肉や靭帯(じんたい)なども同時に損傷するため、軟部組織からの影響があります。また、多くの血管もあるため、血管が傷つくことで出血し、いわゆる内出血として腫れたり変色したりします。痛みの根本は骨自体の痛みではなく、付随している組織の痛みを「骨折の痛み」と認識しているのです。

骨折の種類

 ひと口に骨折といっても、実際には多くの種類があります。

【単純骨折(閉鎖骨折)】

 骨が折れた時に、皮膚表面から骨の露出がない状態をいいます。1本の骨の骨折が1カ所のみの場合も単純骨折となります。

【複雑骨折(解放骨折または開放骨折)】

「複雑」というと骨がバラバラに砕けてしまうイメージですが、骨折した部位の皮膚も損傷し、骨が露出することで外気に触れている状態のことを指します。

【粉砕骨折】

 複雑骨折の内容と間違われやすい名称ですが、文字通り、骨が粉々に砕けた状態です。ぶつかり合うスポーツや交通事故の強い衝撃などをきっかけに生じるケースや、骨粗しょう症の人の骨折にこのタイプが多いとされています。

【亀裂骨折】

 骨にヒビが入り、ズレが生じた状態の骨折です。比較的軽いため、骨折部位を動かした時だけに痛みを感じる程度ですが、時間がたつにつれて骨と骨の間が広がるため、放置すると変形したまま治癒することもあります。

【剥離骨折】

 外部からの衝撃で骨の一部がはがれる骨折です。テーブルの脚に小指をぶつけたり、日曜大工で指を打ったりするなど、日常的な動作が原因で起きることが多いものです。カルシウム不足によって骨の質が落ちてきている人に多く見られるため、高齢の方は特に注意が必要です。

【疲労骨折】

 金属の同じ部分の曲げ伸ばしによって、その部分がもろくなってしまう状態を想像するとよいでしょう。スポーツをしている場合にも多く見られ、継続的に負担がかかったり、動きを支える筋力が不足したりすることで生じます。女性にも多く、女性ホルモンの低下や、ダイエットによるカルシウムやタンパク質の不足などによって骨が弱くなることで、起きることがあります。

【圧迫骨折】

 骨が潰れたように骨折するものです。老化に伴って、筋力や骨が弱くなると起きやすくなります。尻もちをつく、重い物を持ちあげる、くしゃみをするなどの衝撃が原因となります。特に生じやすいのは脊椎(せいつい)の圧迫骨折です。

骨折の修復過程

 骨折の手術はあくまでも骨の固定にすぎません。また、保存的療法として固定したとしても、骨が新しく置き換わる「リモデリング」を待たなければなりません。骨の性質や働きとともに、どのような経路で治癒していくか知っておきましょう。

【炎症期】

 骨折すると血管も切れます。骨折の仕方によっては骨が粉々に砕けてしまう場合がありますが、炎症期においては、この部分に血液成分の一つであるリンパ球など、治療に導く細胞が集まり、炎症を起こします。リンパ球は処分しなければならないものを溶かして排除していきますが、その時、骨を作る「骨芽細胞」にも働きかけます。炎症時期はおよそ3日程度でピークを迎え、この頃には、痛みや腫れが一番強い時期となります。ある程度時間がたつと当初の痛みがなくなるのは、この炎症期が過ぎた一つの現れです。

【修復期】

 骨折の数日後から修復期に入ります。期間は数週間~数カ月と病状によって幅があります。リンパ球の働きにより、骨と骨の間には隙間(すきま)が空きます。この隙間に毛細血管が伸び、肉芽が形成されたり、骨が補充されたりします。しかし、通常の骨の新陳代謝でも同様ですが、骨芽細胞によって骨が作られてもカルシウムのない“ただの器”にすぎません。まず仮骨ができ上がり、骨の硬さや丈夫さを作り上げていきます。骨折した後も同様のことが起こるため、新しくできた骨にはカルシウムが含まれていない状態です。できたばかりの骨はとてももろく、安定の仕方が悪いと変形したり、接合部のズレが生じたりします。

【リモデリング期】

 3~6週間後からリモデリング期に入ります。数カ月間かけて骨芽細胞と砕骨細胞が相互作用しながら、仮骨を成熟した骨に置き換えていきます。徐々に硬くなって本来の骨の性質に変化していきます。この骨が刺激なしに骨折するということはありませんが、圧力などをかけると痛みが生じることがあります。

病院に行くまでの正しい処置は?

 骨折したかもしれないと思った時、病院に行くまでの正しい処置はどのようなものでしょうか。

【骨折部位の確認をする】

 骨折している場合、関節であれば、あらぬ方向に曲がっていたり、骨折部に強い痛みを感じたりするでしょう。また、動かそうにも動かせないという点も、骨折を強く疑う判断材料になります。骨折の大きな特徴である変色は、ケガなどをした日から2~3日後に多く見られます。「当日は大丈夫だったが、後でだんだんと赤くなった、紫色になった」という場合も骨折の可能性が高いです。

【安静を保持する】

 骨折するシチュエーションによっても異なりますが、腕や顔を骨折した場合、安静にできる場所に移動しましょう。多量出血しているなど外傷がひどい時は、ケガをした人を安静にできる場所に連れて行き、寝かせます。ただし、脊椎を骨折している可能性がある場合は脊髄(せきずい)の損傷も考えられるため、できるだけ動かさないようにしてください。

【患部を冷やす】

 骨折したと思われる部位を動かさないようにしながら、冷やします。氷のうなどを使って患部に当てるのがベストですが、氷や道具がない場合は濡れタオルだけでも構いません。氷を使う際は凍傷にならないように、タオルや布で覆って患部に当てるようにしてください。

【患部を心臓よりも高い位置に持ち上げる】

 患部の位置は心臓よりも高い位置に固定してください。骨折部位は見た目に変化がなくても出血している場合が多く、心臓よりも低くするとうっ血し、腫れが悪化しやすくなります。

【圧迫する】

 棒や板など添え木になるものを当て、タオルやハンカチ、包帯や布で固定してください。骨折したと思われる部位を挟んだ上下の関節まで添え木を当て、動かないように固定します。神経や血管をそれ以上損傷させないこと、痛みを少なくすることが目的です。固定する時は、きつく縛りすぎると血流を悪くしてしまうため、固定できる程度のきつさにしましょう。何よりも患部を安静にし、できるだけ早期に病院を受診することが適切です。

【すぐに病院で診察を受ける】

 腕であれば、三角巾で固定すると移動しやすくなりますが、自分で動けない、外傷がひどい、出血が多いなどの場合は救急車を呼ぶなどして、できるだけ早急に病院へ行きましょう。交通事故などで骨盤骨折があった場合でも、それと気づかずに歩行できる場合があります。

 骨盤は出血があっても容積が大きいため、骨盤内の出血量がある程度多くならなければ外見に現れないケースがあります。大丈夫だと思って歩行しても、数時間後に出血性ショックを起こす可能性が高いため、一度は病院の診察を受けるようにしてください。

痛みを緩和させるためには?

 それでは、骨折部の痛みを緩和させるにはどうすればよいのでしょうか。

 骨折の応急処置を終えても、骨折部では炎症が起きているため、痛みが持続することが多いと思われます。痛みで眠れない、集中できない、といった場合もあると思いますが、炎症が起きている場合、温めることは厳禁です。氷のうがなければ、タオルや布などで氷を包んで患部に当てるとよいでしょう。

 また、就寝時などは患部の下にタオルやクッションを入れて、高く固定するのも手です。我慢できない痛みの場合、病院から処方された痛み止めの内服薬や座薬で対処しましょう。

 骨折した部位が完治してからも痛みが残る場合や、「血流が悪い」「筋肉が落ちた」「関節の動きが100%でない」など、受傷前に完全に戻るのが難しい場合もあります。骨折部位にもよりますが、温めることやストレッチなどで痛みが緩和されることもあるため、医師に確認してください。

いざという時に慌てないために

「骨折の痛みは経験した人にしかわからないものです。『骨折したら痛むのは当たり前』と思っていても、その理由については、疑問を抱いていた人もいるかと思います。骨折は予測や前兆のある病気とは異なり、突然起きてしまうもの。いざという時に慌てないためにも、骨折への処置の仕方をしっかりと覚えておくのがよいでしょう。そして何よりも、骨折を起こさないように日頃から気を付けて行動することが大切です」(髙田さん)

(ライフスタイルチーム)

髙田女里(たかだ・めり)

医師(形成外科)・医学博士(法医学)

1980年8月15日生まれ。慶応義塾大学法学部法律学科の憲法ゼミで学んだ後、医師を目指して秋田大学医学部へ学士編入。医師免許取得後、2年間研修医として各科を回り、その後、法医学分野の博士号を取得した。日本形成外科学会会員、日本抗加齢医学会会員、日本医師会認定産業医。

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