「食品用ラップ」は4種類! それぞれの特性を知って、賢く使おう
キッチンに欠かせない食品用ラップ。実は、素材によって4種類に分類され、それぞれに適した用途があることをご存じですか。素材ごとの特性を知ることで、より賢く、便利に使うことができます。

食材や料理の保存に欠かせない「食品用ラップ」。各メーカーから発売されている製品はどれも同じように見えますが、素材の種類よって個性があり、それぞれに適した食材や用途があります。SNS上では「お皿にくっつきにくいラップもある」「電子レンジ不可のラップもあるのかな」「汁もれを防げるラップが知りたい」などさまざまな声が上がっています。種類によるラップの使い分けについて、一般社団法人日本食品包装協会事務局長の広瀬和彦さんに聞きました。
家庭用ラップの約8割は樹脂製ラップ
Q.食品用ラップにはどのような種類があるのでしょうか。
広瀬さん「食品用ラップは素材によって、主に4種類に分類されます。種類ごとに、引張弾性(ハリ・コシ)、密着性(くっつき)、カット性(切りやすさ)、ガスバリア性(酸素や水蒸気の通しにくさ)、耐熱性、透明性などの性能が異なります。素材ごとの特性は以下の通りです」
【1】ポリ塩化ビニリデン(PolyVinyliDene Chloride、PVDC)
家庭用ラップの約8割はこの樹脂製ラップです。この素材は、においや湿気、酸素を通しにくいので、キムチやニンニク漬けなどの冷蔵庫内でのにおい移りがなく、食材の酸化劣化の抑制や乾燥を防止し、みずみずしさを保つのに有効です。また、耐熱性は140度で電子レンジ適性もあり、引張弾性、カット性、透明性などの点で一番優れています。ただ、他素材の製品と比較して最も高価格です。
【2】ポリエチレン(PolyEthylene、PE)
各性能が他の素材と比較して劣りますが、酸素を通しやすいという弱点は、逆に、呼吸しているある種の野菜や果物の保存に適している場合もあります。耐熱性は110度で食品を温めるだけであれば問題はなく、価格は最も廉価です。
【3】ポリ塩化ビニル(PolyVinyl Chloride、PVC)
収縮性が強いため器にくっつきやすく、飲食店やスーパーなどの業務用ラップとして使われることが多い素材です。耐熱性は130度で電子レンジ適性もあります。
【4】ポリメチルペンテン(PolyMethylPentene、PMP)
1990年代、塩素系プラスチック(ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニルなど)によるダイオキシンの発生(およそ300~500度で発生)が社会問題になりました。そこで、非塩素系プラスチック素材(ポリエチレンなど)の需要から、「耐熱性の高い非塩素系ラップ」として商品化されたのがポリメチルペンテンです。プラスチックごみ処理の技術改善に伴い存在感が希薄になり、現在では、180度の耐熱性がセールスポイントと言えます。
Q.容器とラップがうまく密着しない場合、どうすればよいのでしょうか。
広瀬さん「ステンレスや木製の食器などは、表面は平らに見えますが、拡大すると凹凸があってラップとの接触面積が小さくなるため、くっつきにくいことがあります。そうした場合、容器のフチを水で濡らすと、接触面積が増えてぴったりとくっつきます」
Q.ラップを温める際、有害物質が溶け出すなど、安全面の心配はありませんか。
広瀬さん「食品に用いられる器具・容器包装は、食品衛生法に基づき規格基準が定められており、合成樹脂製の食品用ラップには、材質試験および溶出試験の規格が適用され、さらに、PVDC、PE、PVC、PMPなどについては、個別の規格が定められています。また従来、合成樹脂の衛生に関する業界団体では、使用できる原材料のリストを定め、ラップに使用するモノマー(単量体)や添加剤を限定するなど、食品に使われるプラスチック製品の安全性を高めるための自主的な取り組みを行っています。安全性の心配はありません。
ただし、市販のラップには、材質や用途、耐熱温度などの特性や、取り扱い上の注意事項などが表示されています。注意事項に従わない使い方をすると、ラップが破れたり溶けたりして食品の中に入る恐れがあることから、注意事項に従う必要があります」
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