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公共の場で“授乳”はアリ? ナシ? 「ヒヤヒヤする」「泣かれるよりマシ」と賛否両論、専門家は?

公共の場における「授乳」について、ネット上で議論が交わされました。乳児の食事である授乳は同時に、女性の胸元がはだける瞬間であり、大きく賛否が分かれています。専門家の見方とはどのようなものでしょうか。

公共の場での授乳、あなたはどう感じる?
公共の場での授乳、あなたはどう感じる?

 公共の場での「授乳」について先日、ネット上で話題になりました。授乳は、乳児にとって大切な栄養補給の時間ですが、女性の胸元がはだける行為でもあり、人前で行うことに関しては、賛否両論の声が上がっています。最近は「授乳ケープ」(上半身を隠す布)が普及していますが、たとえ布で隠したとしても、人前で授乳すること自体に疑問を覚える人もいるようです。

 授乳の場に居合わせたことのある人からは「正直、同性でも目のやり場に困る」「胸元がはだけそうになっている人もいてヒヤヒヤする」「授乳室でやってほしい」「泣き続けられるよりマシ」「ケープ使うならどこで授乳してもいいと思う」など、さまざまな反応が見られます。

 これについて、識者の見方はどのようなものでしょうか。著書に「1人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ」(日本実業出版社)などがある、子育て本著者・講演家の立石美津子さんに聞きました。

女性同士であっても温度差がある

Q.人前で授乳することについて、どうお考えになりますか。

立石さん「赤ちゃんは周りの状況に関係なく、おなかが空けば泣きますよね。授乳は赤ちゃんの食事ですから、何よりも最優先でおっぱいをあげたくなる気持ちは、子育て経験者としてよくわかります。ただし、人前で行う場合は、やはり臨機応変な配慮が必要です。誰もが授乳姿を温かく見守ってくれるほど、社会は寛容ではありません。

男性であれば当然、目のやり場に困ると思いますし、同性の場合でも独身者と母親の間には少なからず温度差があるように感じます。私自身、講師をしていた幼児教室で、ケープも使わずに胸がはだけた状態で授乳している母親を見て、困惑した記憶があります。当時、私は独身で、同性であっても他人の胸を見る経験がなかったので、目のやり場に困ってしまいました。

大人になると、自分の母親にさえ裸を見られることに躊躇(ちゅうちょ)する女性もいると思いますが、同じように、他人の胸元が目の前でさらされることに抵抗がある女性もいるのではないでしょうか」

Q.授乳ケープを使用して、公共の場で授乳することについてはどうでしょうか。

立石さん「家族やママ友など親しい間柄とプライベートな空間を共にしている場合であれば問題ないと思います。しかし、電車内や飲食店など不特定多数の人がいる場では、ケープありの授乳でもさまざまな見方をされてしまいますので、目につかない場所で行うことも必要だと思います。

例えば、男性の目がある場所であれば、たとえ授乳ケープを使ったとしても、布の下に隠されている部分を想像してしまう人が全くいないとは言い切れません。自分の身を守るという観点からも、『授乳ケープを使用するのであれば、場所を問わず授乳してよい』とは必ずしも言えないのではないでしょうか」

Q.公共の場で授乳をする際、周囲に対して気を付けるべきことは何でしょうか。

立石さん「女性は、子どもができると『女性』というより『母親』としての意識が強くなるものです。そのため、授乳時に周囲が気にならなくなってしまう側面があるのかもしれません。しかし前述の通り、公共の場で授乳をする母親に対する感じ方は、同性である女性同士であっても温度差がありますし、『温かく見守ろう』と考える人もいれば『あらぬ想像をしてしまう』人がいることも事実です。このことを頭の片隅に入れておきましょう。

また近年、多目的トイレが増えていますが、そこはあくまでもトイレであり、そこで赤ちゃんの食事である授乳をすることに抵抗がある人が多いと思います。授乳専用のスペースがない場合、家で母乳を搾乳し、赤ちゃんにもほ乳瓶に慣れてもらい、これを持ち歩く工夫をしている人もいます。授乳できる専用スペースが今後さらに多くの場所に設置されていく、そんな子育てに優しい社会になっていくことを願います」

(ライフスタイルチーム)

立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

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