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清原果耶、「霊媒探偵・城塚翡翠」で新境地へ “定番ヒロイン像”に染まらない“透明感”

清原果耶さんが主演を務める新連続ドラマ「霊媒探偵・城塚翡翠」(日本テレビ系)が10月16日よりスタートします。“俳優・清原果耶”の魅力を探るとともに、新垣結衣さんとの共通点を紹介します。

清原果耶さん
清原果耶さん

 俳優の清原果耶さんが主演を務める新連続ドラマ「霊媒探偵・城塚翡翠」(日本テレビ系、毎週日曜 午後10時30分)が10月16日よりスタート。自然体な演技に定評のある清原さんが霊視能力を駆使して難事件を解決に導くヒロインを演じます。

「おかえりモネ」百音、「ファイトソング」花枝… “定番ヒロイン像”を覆す魅力

 清原さんが主演を務め、2022年1月期に放送された連続ドラマ「ファイトソング」(TBS系)の第2話で、清原さん演じる木皿花枝が「いらないです。付き合わない? とかそういうの。そういえば、女の子が喜ぶんじゃないかなとか思ってるならマジでいらないです」というセリフを吐きました。

 同作は、不慮の事故により夢を絶たれた元空手選手の花枝と、一発屋でクビ寸前のミュージシャン・芦田春樹(間宮祥太朗さん)が偶然出会うところから展開されるヒューマンラブコメディー。それまで全く接点のなかった2人を結びつけたのは、芦屋がかつて所属していたバンドのヒット曲「スタートライン」でした。

 それは花枝の亡き母が大好きで、花枝自身も試合前に必ず聴いていた勝負曲。その作者が芦屋であることを知り、花枝は感動しますが、直後に芦屋から「俺と付き合ってくれない?」と提案され、上記のセリフを投げかけるのです。

 従来のラブストーリーだったら、そこで胸をときめかせるヒロインの姿が描写されていたはず。でも現実問題、いくら憧れのミュージシャンといえども出会ったばかりの男性に告白されたら多くの女性は不信感を抱きます。

 そこには「女の子はみんな少女漫画みたいな展開が好きでしょ?」という安直な発想とあざとさがあり、それに対してキッパリとNOを突きつけるのが花枝。2話以降も、いきなりキスしようとしてきた芦屋に拳をお見舞いしたり、必死で思いを伝えようとしてくる彼をとある理由から拒否し続けたり、とにかく一筋縄ではいかないキャラクターとして描かれていました。

 そんな花枝に対し、一部の視聴者からは「めんどくさい」「素直になればいいのに」との声も挙がっていたように記憶しています。しかし、劇中で芦屋が「強いというかかたくな」「自分が決めたことを絶対に変えない。それは強さでもあるけど、それしかできない弱さでもある」と分析していたように、花枝は人に弱みを見せるのが苦手で、自分だけで問題を抱え込む不器用な女性でもありました。

 花枝を見ていて思い出すのは、同じく清原さんが演じたNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「おかえりモネ」(2021年度前期放送)の永浦百音です。同作は東日本大震災から10年という節目に放送された作品で、百音は被災地である宮城県気仙沼市の島で育ったヒロイン。

 震災当時、高校の合格発表で地元を離れていた百音が、自分は何もできなかったという思いから“人の役に立ちたい”と願い、やがて気象予報士を目指すというストーリーでした。

 朝ドラヒロインといえば、明るくて天真爛漫。周囲の人たちを笑顔にする太陽のような存在をイメージする人が多い中、百音はどこか暗い影をまとっており、人生もまた順風満帆ではありません。幾度となくあの日のトラウマに襲われ、その度に立ち止まり考える。

 そんな百音に対する視聴者の意見も賛否両論。ですが、この物語はそもそも誰かに共感を求めるものではありませんでした。環境に限らず、心に抱えている痛みは人それぞれ違います。

「おかえりモネ」はあくまでも、大切な家族や友人が怖い思いをしている時にそばにいてあげられなかった、何もできなかったと自分を責める声から、少しずつ遠ざかっていく百音という一人の女性を描いた作品だったのです。

 朝ドラでも民放ドラマでも、従来のヒロイン像を覆してきた清原さん。彼女の何にも染まることのなさそうな透明感や、大げさではない自然体の演技が、花枝や百音のように弱さを抱えた、だけど悩み抜いた先に自分なりの答えを見つけ出す芯の強いキャラクターに説得力をもたせているのではないでしょうか。

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苫とり子(とま・とりこ)

エンタメ系ライター

1995年、岡山県生まれ。東京在住。学生時代に演劇や歌のレッスンを受け、小劇場の舞台に出演。IT企業でOLを務めた後、フリーライターに転身。現在は「Real Sound」「AM(アム)」「Recgame」「アーバンライフメトロ」などに、エンタメ系コラムやインタビュー記事、イベントレポートなどを寄稿している。

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