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強制わいせつ容疑の山口達也、なぜ「容疑者」ではなく「メンバー」? 弁護士に聞く

TOKIOの山口達也さんが、強制わいせつ容疑で書類送検された事件では、マスコミ各社が山口達也「メンバー」と表記。SNS上では「『容疑者』じゃダメなの?」など疑問の声が上がっていますが、その理由とは――。

どうして山口達也「メンバー」?
どうして山口達也「メンバー」?

 アイドルグループ・TOKIOの山口達也さんが、女子高生に対する強制わいせつ容疑で書類送検された事件。その報道において、新聞・テレビ各社が山口達也「メンバー」と表記しています。過去に、男性アイドルグループのメンバーが逮捕された際も「メンバー」が使用されており、SNS上では「なんでアイドルは『メンバー』なの?」「違和感がある」「『容疑者』じゃダメなの?」など、さまざまな声が上がっています。

 山口さんらに「メンバー」が使われるのはなぜでしょうか。グラディアトル法律事務所の刈谷龍太弁護士に聞きました。

中には「容疑者」を使用する新聞社も

Q.そもそも「書類送検」とは何でしょうか。

刈谷さん「書類送検とは、読んで字のごとく『書類』が『検』察官に『送』致されたことを意味する言葉です。一般的に、1次的な捜査機関は警察ですから、犯罪を犯した疑いがある場合、警察がまずその捜査をすることになります。そして、容疑者を裁判にかけるか否かの判断を検察官に仰ぐため、捜査によって得た情報を検察庁に送ることになります。刑事訴訟法246条において『司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない』と規定されており、これがいわゆる書類送検ということになります」

Q.「容疑者」はどのような人に対して用いられる言葉でしょうか。

刈谷さん「容疑者という言葉は、犯罪を犯した嫌疑がかけられている人に対して用いられる用語です。刑事司法においては『推定無罪』といい、有罪判決が出るまでは無罪として取り扱わなければならないという原則があります。そこで、犯罪を犯した容疑がかけられている人として、容疑者という言葉が用いられます。似たような表現としては『被疑者』という言葉があり、意味はほぼ同じです」

Q.「被告」はどのような人に対して用いられる言葉でしょうか。

刈谷さん「被告と被告人は似て非なる言葉であり、全く意味が違います。被告とは、民事訴訟において訴えられている側を指し、被告人は、刑事訴訟において訴追されている人を指します。

メディアなどにおいても、被告と被告人は混同されて用いられていることがありますが、先述の通り、両者は意味の異なる言葉です。被告人は、刑事裁判にかけられているとはいえ、やはり有罪判決が出るまでは無罪とする原則があることから、犯罪者であるかのように表現することは許されないでしょう。被告人も、広い意味では容疑者や被疑者に含まれることになります。

ただ、実際には、単に捜査の対象となっている人を容疑者や被疑者、裁判にかけられている人を被告人と使い分ける傾向にあると言えます」

Q.山口さんらに「メンバー」が用いられるのはなぜでしょうか。

刈谷さん「これについては、報道機関各社の判断によるため、法的な定義があるわけではありません。今回の山口さんのケースでも『メンバー』を使う報道が多い中、読売新聞は『容疑者』を用いていました。

共同通信社の『記者ハンドブック』は被疑者の呼称について『実名を出す場合の任意調べ、書類送検、略式起訴、起訴猶予、不起訴処分の場合は“肩書”または“敬称”(さん・氏)を原則とする』としています。

また、朝日新聞社も、同社の記者の行動指針をまとめた『事件と取材の報道2012』の中で『書類送検されても起訴されないケースは多く、書類送検の時点では原則、実名・肩書き呼称とするのが望ましい』としています。

容疑者や被疑者という言葉は、本来の意味からすれば犯罪を犯した疑いがあるだけなのですが、多くの場合に犯罪をしているかのように用いられることが多いため、犯罪者のイメージがついてしまう恐れがあります。今回のケースは、人気男性アイドルグループの一員であるという立場を考えて報道する側が避けたということでしょう」

Q.「メンバー」同様に用いられる類似の言葉はありますか。

刈谷さん「過去にも、芸能人が書類送検された際に上述のような配慮から『タレント』や『司会者』といった肩書きが使われたことがあるようですが、一般的ではありません。

通常のニュースなどでは、スポーツ選手の場合には『選手』、ゴルファーなどの場合には『プロ』という肩書きが用いられることがあると思いますが、いずれも犯罪報道の場合は容疑者や被疑者という言葉が使われている印象です。私自身もメディア出演時などは弁護士という肩書きがついて『刈谷弁護士』と記載されることが多いように思いますが、犯罪を犯したら容疑者という肩書きがつくと思いますので、やはりイメージが重要な芸能人に対する、報道側の特別な配慮と言えるのではないでしょうか。

容疑者、被疑者、被告人の他に『受刑者』『死刑囚』という肩書きがありますが、こちらは、裁判が終わり、刑が確定した人に対して用いられます。有期刑または無期懲役が確定した人が受刑者、死刑が確定した人が死刑囚です」

(ライフスタイルチーム)

刈谷龍太(かりや・りょうた)

弁護士

1983年千葉県生まれ。中央大学法科大学院修了。弁護士登録後、都内で研さんを積み、2014年に新宿で弁護士法人グラディアトル法律事務所(https://www.gladiator.jp/)を創立。代表弁護士として日々の業務に勤しむほか、メディア出演やコラム執筆などをこなす。男女トラブル、労働事件、ネットトラブルなどの依頼のほか、企業法務において活躍。アクティブな性格で事務所を引っ張り、依頼者や事件に合わせた解決策や提案力に定評がある。

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