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子どもができてすみません…妊娠の順序を決める“妊娠順番制”に賛否両論、法的問題は?

職場の上司や同僚によって、あらかじめ妊娠の順番が決められる「妊娠順番制」が議論を呼んでいます。「人権侵害」と批判する声が上がる一方、「現実的には必要なルール」と容認する声も。弁護士の見解を聞きました。

「妊娠順番制」の法的問題は?
「妊娠順番制」の法的問題は?

 職場における「妊娠順番制」に関してネット上などで議論になっています。きっかけは、保育士の妻を持つ男性が全国紙に寄せた投稿。男性の妻が働く保育園では、妊娠の順番が園長によって決められており、その順番を守らなかったために夫婦で「子どもができてすみません」と謝罪したとのことです。これについてSNS上では「時代錯誤」「人権侵害じゃないの?」「パワハラ・マタハラ」などの批判の声が上がっています。

 一方、園側にとっては妊娠の順番や産休取得の時期などをルール化することで「運営に支障をきたさないようにする」「引き継ぎをスムーズにする」狙いがあるようで「以前働いていた保育園にも同じようなルールがあった」「同僚の産休の時期がかぶると困る」と理解を示す人も見受けられます。

 この妊娠順番制がはらむ法的問題について、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

妊娠順番制の強要は人権侵害

Q.職場で、妊娠・出産の時期や順番が定められることについて、法的問題はありますか。妊娠順番制は人権侵害や、パワハラ・マタハラに該当しうるのでしょうか。

牧野さん「女性が妊娠・出産を行うことは、その『時期』を含めて基本的人権です。仮に妊娠順番制を強要する場合、人権侵害やパワハラ・マタハラといったハラスメントに該当するでしょう」

Q.仮に、このようなルールが社則として「明文化」されていた場合、従業員に従う義務はありますか。

牧野さん「妊娠順番制ルールが社則として明文化されていた場合、民法90条の公序良俗に反する規定として無効になりますので従業員に従う義務はありません。『暗黙のルール』と化している場合であっても同様に、従業員に従う義務はありません」

Q.妊娠順番制を含めて、妊娠について何らかのしっ責や嫌がらせを受けた場合、従業員は法的措置を取ることはできますか。

牧野さん「マタハラ(パワハラ)に該当する可能性があり、マタハラを受けたことによる精神的損害に対しては慰謝料を請求することができます。マタハラによるストレスが原因でうつ病になった時は治療費や通院費も請求できますし、働くことができない期間の給料相当額の賠償の請求もできます。

病院に理学療法士として勤務していた女性が妊娠を理由に降格されたことが、男女雇用機会均等法に反するかが争われ、広島高裁が精神的苦痛による慰謝料も含めて約175万円の賠償を病院側に命じたケースがあります」

Q.職場で妊娠・出産によるトラブル(減給や解雇など)が起きた場合、従業員はどのような法的手段に訴えることができますか。

牧野さん「出産を機に育児休暇を会社に申請したものの、拒否され、解雇を促されて退職した女性が、無効訴訟を提起したケースがあります。裁判所は、育児休業の拒否とそれを理由とした解雇は違法であるとして、無効の判決を下しました。

また、育児短時間制度を利用して8時間労働から6時間労働に変更した従業員が、昇給額を4分の3に抑えられたこと(不当昇給)に対して無効を訴えたケースでは、東京地裁はマタハラと判断して約24万円の損害賠償を命じています」

(ライフスタイルチーム)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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