帰宅を渋る38歳夫と、無視続けた末に泣き出す35歳妻…“夫婦の危機”招く「察して病」のリアル
程度によってはモラハラにも該当し得る、「察してほしい」という態度。度を越えた「察して妻」に苦しむ男性から相談を受けた筆者が、夫婦間における「察して病」の危険性を指摘します。
どんなときでも“私をかまって”オーラを出してくる人を「かまってちゃん」と呼ぶことがあります。夫婦においては、かまってちゃんはまだかわいい域です。困りものなのが、「なぜ気持ち(状況)を察してくれないの」「私のことを分かってくれないの?」という“察してちゃん”です。最近では「察して病」というワードも目にします。
離婚理由の上位に「相手からのモラハラ」があります。モラハラとは「モラルハラスメント」の略称で、嫌がらせなどで相手を精神的に追い詰める行為全般を指す言葉です。
過度の“察してちゃん”は、態度によってはモラハラに該当し、離婚理由として法的にも認められ、慰謝料を支払わなければいけない可能性があります。“察してちゃん妻”が自らを追い詰めた事例を見ていきましょう。
理由も言わずに泣く“察して妻”
亮介さん(38歳、仮名)が相談にいらしたとき、あまりにやつれているので驚きました。聞けば、パートナーの響子さん(35歳、同)から過度のモラハラを受けているとのこと。モラハラと一言でいっても、たいしたことのない言葉から、「それ人権問題!」と眉をひそめるものまで多岐にわたります。
亮介さんは続けます。
「付き合っていた頃から、響子はおとなしくて文句を言うタイプではなく、代わりに、あまり自分の気持ちを言ってくれないところがありました。それが結婚して、子どもが生まれてから特にひどくなって…。数週間無視された挙げ句、突然泣き出して、理由を聞いても何も答えてくれない。翌日は仕事もあるし、相手にしていられないから寝ようと布団に入ると怒鳴る。すると子どもが泣き出して、寝かしつけで朝まで眠れない。そんなことがたびたび起こるんです。
また今日も口をきいてもらえないのか、寝かせてもらえないのか、と思うと帰りたくなくて。後輩と立ち飲みに行ったり、ネットカフェで時間をつぶしたりしています。体力的にも限界です」
亮介さんは「言われたら何でもやるけど、言われるまで全く気が付かないタイプ」と自覚しています。職場でも「指示待ち系」だそうです。そんな男性が、相手が何を悩んでいるか「察する」ことは非常に難しいのです。
私は亮介さんに、響子さんと一緒に相談に来るよう促しました。二人一緒にお話を聞かないと、いつまでたっても平行線だろうと考えたからです。
後日、彼は響子さんを連れて来ました。何日も無視をして、亮介さんが理由を聞いても答えないのはなぜかとズバリ尋ねました。
「この人は私のことをバカにしているんです。理由が分かっているのに、わざと聞いてくるんです。きっと『理由を言ったら論破してやろう』と思っているに違いありません。それが悔しくて」と響子さんは泣き出しました。
驚いたのは亮介さんです。自分は本当に響子さんが無視したり泣いたりする理由が分からないんだ、と言っても彼女は聞く耳を持ちません。私は、なぜ亮介さんが理由を知っているのにわざと聞いてくると思うのか、と彼女に問い掛けました。
「だって当たり前じゃないですか。私が毎日、家事と育児に追われているのに連絡もせず、平気で酔っぱらって深夜に帰宅して。私が目の前で離乳食を作ったり、洗濯物を片付けたりしているのに手伝おうともしない。いつか態度を改めるんじゃないかって我慢して待っているんですが、突然苦しくなって涙が止まらなくなるんです」
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