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小池栄子、ドラマやMCで引っ張りだこの“安心感” “威圧系”タレントからの進化

威圧系タレントから安心感のある名脇役への進化

 脇役は脇役でも“主役を食ってやる!”と言わんばかりの重厚感ある演技が小池さんの魅力。ドラマでいえば、「母になる」(日本テレビ系、2017年)で演じた、誘拐された主人公の子どもを数年間、実子として育てた門倉麻子役も挙げられます。妻になれ、母になれという世間からの重圧に耐えかね、罪を犯した麻子の悲しみと、子どもを育てることで芽生えた深い愛情をにじませる名演が心に残りました。

 また「美食探偵 明智五郎」(同系、2020年)では、自身を「マグダラのマリア」と名乗る美しき連続殺人鬼を恐ろしいほどの魅力で体現しました。同作の原作となった東村アキコさんの原作ファンからも「小池栄子さんにしか演じられなかった」という声が相次ぐほどでした。

 そんな小池さんが40代に突入し、名脇役としての地位をさらに強固なものとせんばかりの活躍を見せています。「鎌倉殿の13人」では、鎌倉幕府を開いた源頼朝(大泉洋さん)の妻、北条政子を熱演。序盤は頼朝に恋焦がれる乙女の姿がそこにありました。しかし、妻の座を得てからは頼朝の愛人だった八重(新垣結衣さん)に対する嫉妬の炎をたぎらせ、頼朝にも物おじせず意見する強さを宿していきます。それでもどこかチャーミングな一面があり、小池さんが演じたことで「日本三大悪女」の一人とされた政子のイメージが変わったという人も多いのではないでしょうか。

 そして「競争の番人」では、元刑事の主人公・白熊楓(杏さん)が所属する公正取引委員会・第六審査、通称“ダイロク”の主査・桃園千代子を演じています。仕事のできそうな強い女性を頭に思い浮かべるかもしれませんが、千代子もまたどこか親しみを感じさせる女性。頼り甲斐があり、厳しい一面もありながら不思議と威圧感はありません。かつて“威圧系”をと言われていた小池さんですが、さまざまなキャリアを積み上げていくなかで、そこにいるだけで“安心感を持てる存在”へと魅力の幅を広げてきたのです。

 それは、トーク番組などでのMCとしての小池さんも同じ。経済情報番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)では、作家・村上龍さんとゲストの高度な知識を必要とする難しい話題を、視聴者目線で質問を投げかけながら緩和していく役割を担っています。また、「クレイジージャーニー」(TBS系)や「芸能人が本気で考えた!ドッキリGP」(フジテレビ系)といったバラエティー番組で、「ダウンタウン」の松本人志さん、「バナナマン」の設楽統さん、東野幸治さんらを相手にしていても、飾らない姿勢を崩さず、同時に頭の回転の速さで番組をまとめる“名司会者っぷり”も見せています。

 これからもドラマやバラエティー番組などで、出演者やスタッフから必要とされる“名脇役”としてだけではなく、視聴者を魅了し続ける、さらなる活躍に期待が高まります。

(ライター 苫とり子)

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苫とり子(とま・とりこ)

エンタメ系ライター

1995年、岡山県生まれ。東京在住。学生時代に演劇や歌のレッスンを受け、小劇場の舞台に出演。IT企業でOLを務めた後、フリーライターに転身。現在は「Real Sound」「AM(アム)」「Recgame」「アーバンライフメトロ」などに、エンタメ系コラムやインタビュー記事、イベントレポートなどを寄稿している。

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