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障害がある子を連れて帰省、親が気を付けるべきことは? 自閉症の子を育てるライターが解説

何らかの障害を持つ子どもを連れて帰省する場合、親はどのようなことに気を付けるべきなのでしょうか。自閉症の子どもを育てるライターが解説します。

普段会わない親族に接すると、気を使うことが多い(筆者作)
普段会わない親族に接すると、気を使うことが多い(筆者作)

 筆者の息子には、自閉症と知的障害があります。息子はほとんど発語がありませんが、人前では目立つ行動をとらないこと、外見的な特徴がないことなどから、一目で障害に気付かれることはほとんどありません。とはいえ、慣れない場所や状況だと、突然パニックを起こしてしまうこともある息子。夏休みという、普段行かない場所や会わない人に接する機会が多くなる今、息子と過ごす帰省や親族行事で筆者が気を付けていることを紹介します。

「いつもと同じ」が崩れることを嫌う息子

 奇声とともに物を投げ、部屋の隅でお地蔵さんのように動かなくなる息子。長期休みで筆者の実家に帰省したとき、最初の1、2日くらいによく取る行動です。大好きなおじいちゃん、おばあちゃんに会える楽しい帰省も、息子が落ち着くまでには時間がかかります。

 息子は「いつもと同じ」が崩れることを非常に嫌うので、いつもと何もかもが違う空間ではパニックを起こしやすいのです。例えば、長期休暇に入ると、「学校に行く」というルーティンがなくなるので、機嫌が悪くなります。そこで、筆者たち家族は、夏休みなどに1週間くらい帰省します。

 最初は落ち着かない息子ですが、数日たつとその空間が「いつも」に近づいていきます。本人も楽しそうに祖父母宅での暮らしを満喫しているので、なるべく息子が過ごしやすいように気を使いながら、帰省を楽しんできました。

 しかし、帰省したタイミングがお盆や年末年始など、親族の出入りが多い時期だと、予定していなかった突然の来訪もあります。そういうときは息子も不安になりやすいので、あいさつだけ済ませて別室で過ごすようにしています。幸い、実家は田舎で部屋数も多いので、息子が静かに過ごせる場所を確保しやすく、とても助かっています。

 しかし、筆者は息子を親族から隠したいわけではありません。息子も周りもできるだけストレスなく関わる機会を多く持てるように、できるだけ行事にも積極的に参加したいと思っています。

親族が子どもの特性を知らないときは?

 今、息子は7歳ですが、これまで結婚式には2回、葬儀には2回、その他法事などにも何回か出席しています。たまたまうまくいっただけかもしれませんが、事前に準備や根回しをした結果、これまで息子が大きなトラブルを起こしたことはありません。

 筆者が親族行事などの際に気を付けている、事前の根回しのポイントは次の3つです。

【(1)事前に息子の障害を知らせておく、隠そうとしない】
 昔ながらの偏見が残る地域性や、年配の人が多い状況などの場合、外聞を気にして「障害がある」ことを隠したくなるかもしれませんが、筆者はむしろ、隠さずにいこうと思っています。もし何らかのトラブルを起こしてしまったとき、周囲がもともと知っていたか知らなかったかでは、その衝撃や戸惑いは大きく変わります。自分や子ども本人、周りの人のためにも、はっきり伝えておいた方が安心です。

 特に主催者には、不測の事態で子どもが場を乱してしまう可能性や席を外す可能性があることを、大げさに聞こえるぐらいに伝えるようにしています。それでも出席していいかを確認した上で、出席するようにしています。

【(2)クールダウンする部屋や場所が確保できるか確認】
 どんなに準備や対策をしても、子どもが慣れない状況で取り乱してしまうことはあります。そんなときには、とにかくその場を離れることが一番です。

 特に初めての場所では、子どもだけでなく親も不安なものです。そのため、子どもがパニックになってしまったときにクールダウンできる部屋や場所があるかを、事前に確認するようにしています。そうした場所が確保できると分かっていれば、親も落ち着くことができます。

【(3)「いつも」を感じさせるお気に入りのアイテムを持ち歩く】
 息子がよく手にしているおもちゃや、食べ慣れたお菓子、ジュースも準備しておきます。これは、小さい子どもを育てている人なら行っていることかもしれません。

 しかし、息子のような発達特性がある子は、ある程度年齢が大きくなってもこれを続けています。息子の機嫌が悪くなり始めたときにサッと渡せるラムネやグミなどをバッグに入れておくと、「今だけ静かにして…」というときの安心感が絶大です。ただ、おいしい食事が待っていることが多いので、お菓子でおなかいっぱいにならないよう、腹持ちせず小分けになっているお菓子を選ぶようにしています。

 ここまで、3つの事前準備をお伝えしましたが、もう一つ大切なことがあります。それは、もしこれら3つのポイントを押さえるのが難しそうであれば、潔く欠席するということです。

 見極めが難しい場合もありますが、少しでも先方の反応に歯切れが悪いところがあれば、筆者は欠席を選びます。「みんな気にしない人たちだから」「気軽な集まりだから」と言われても、そういった言葉をうのみにせず、できる限りの対策をして望むことが大事だと、経験上思います。

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べっこうあめアマミ(べっこうあめあまみ)

ライター、イラストレーター

知的障害を伴う自閉症の息子と「きょうだい児」の娘を育てながら、ライター、電子書籍作家として活動。「ママがしんどくて無理をして、子どもが幸せになれるわけがない」という信念のもと、「障害のある子ども」ではなく「障害児のママ」に軸足をおいた発信をツイッター(https://twitter.com/ariorihaberi_im)などの各種SNSで続けている。障害児育児をテーマにした複数の電子書籍を出版し、Amazonランキング1位を獲得するなど多くの障害児家族に読まれている(https://www.amazon.co.jp/dp/B09BRGSY7M/)。「べっこうあめアマミ」というペンネームは、障害という重くなりがちなテーマについて、多くの人に気軽に触れてもらいたいと願い、夫と相談して、あえて軽めの言葉を選んで付けた。

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