肉球は大丈夫? 夏の犬の「散歩」 注意点を獣医師に聞く
酷暑の夏、散歩時に愛犬が足にやけどをしないか、心配な人もいるでしょう。夏の散歩の注意点や、やけどをした場合の治療法などを獣医師に聞きました。
酷暑の夏、犬の散歩は早朝や夜間にしている人が多いようですが、それでも路面が熱いときもあり、犬が足にやけどをしないのか心配です。夏の散歩の注意点や、やけどをした場合の治療法などを獣医師の増田国充さんに聞きました。
時間帯選び、なるべく日陰を
Q.そもそも、犬の散歩は毎日必要なのでしょうか。
増田さん「犬にとって、散歩は重要な日課です。他の犬とのコミュニケーションの場であったり、飼い主と過ごす楽しい場の一つであったりしますし、ストレス発散や健康維持のための運動としても重要な意味を持っています。
とはいえ、近年は酷暑ともいえる暑さのせいで、散歩を健康的に行うことが難しくなっています。本来、散歩は犬にとって楽しいものですが、その散歩で健康を損なっては本末転倒です。そのため、犬も人間も熱中症になるリスクが低い時間に散歩することになろうかと思います」
Q.夏の暑い日、日中に散歩すると、肉球など足の部分をやけどすることはあるのでしょうか。
増田さん「肉球は他の皮膚と比べると角質が分厚く、少々の刺激には耐え得る構造となっていますが、どんな条件でも無傷でいられるわけではありません。熱によって肉球にダメージが加わってしまうことがあります。
マンホールや側溝の金属製のふた、舗装された路面は、気温30度で日差しに当たった状態だと60度以上になることがあります。さすがにこれだけの高温にもなると、散歩の最中に触れてしまった場合、丈夫な肉球でもやけどを生じてしまいます」
Q.肉球を含む足の部分をやけどしたことは、どのような様子や症状で分かりますか。治療法や受診の目安も教えてください。
増田さん「やけどですので、人間と同じように痛みを生じます。足の裏(肉球)に痛みがあることによって、足を接地したがらず、片足を引きずるような様子が見られます。肉球の発赤やただれなどが見られる場合もありますが、黒い肉球だと見た目で判断が難しい場合があります。
犬自身も痛みや違和感があることによって、しきりに足の裏をなめようとする様子が見られるかもしれません。肉球がただれると、回復するまでに時間がかかります。また、人間の低温やけどのように、ある程度時間がたってから、足の裏の痛みや肉球の変化など、やけどの症状が現れることもあります。
これらの様子が見られた場合は、早めに動物病院を受診しましょう。動物病院での治療は炎症や痛みを抑える薬を注射したり、内服させたりします。犬自身が患部を気にしている場合は包帯を巻いたり、靴下を履かせたりして、患部の保護を行うこともあります」
Q.やけどを防ぐには、どうすればよいでしょうか。
増田さん「足の裏は、起立しているときは常に地面と接しています。肉球に大きな負担を強いる条件を極力取り除くことが予防につながります。つまり、炎天下で舗装路やマンホールなどに足を踏み入れないことが重要です。直射日光が当たっている場所ほど温度が上昇しますので、日陰を選んで散歩することも工夫の一つです。
そもそも、酷暑の中、屋外で遊ぶことは、やけどだけでなく熱中症の危険にもつながります。早朝、あるいは夕方以降の涼しい時間を選んで散歩するのがよいでしょう」
Q.やけどまでいかなくても、犬が熱がっているときはどのような様子で分かるでしょうか。
増田さん「相当な熱を持っているときは『キャン』と鳴くことがあります。歩き方に変化が現れることもあるでしょう。人間の素足よりは熱に対して強いとはいえ、熱いと感じるときは、できるだけ熱を持っている部分に触れたくないものです。普段の様子と比べて、歩きたがらない、散歩したくない様子が見られたら無理は避けた方がよいでしょう」
Q.早朝や夜間に散歩をさせている飼い主をよく見かけますが、気温が落ち着いても地面が熱いことがあるようです。どのようにして確認すればよいでしょうか。
増田さん「都市部の場合は、生活する多くの場所が舗装されており、気温が下がっても、地表には熱が蓄えられています。夕方であっても、日の当たる部分は日陰に比べて温度が高くなっていることが予想されますので、散歩の際はなるべく日陰を選ぶとよいと思います。
日没後に散歩する場合、地表に熱が残っていないか、路面を飼い主が手の甲で触ってみるのも一つの方法です。数秒で熱いと感じるなら危険です。時間を置いた方がよいでしょう」
Q.足に限らず、夏、犬を散歩させる際の注意点を教えてください。
増田さん「やはり、熱中症とやけど対策でしょう。暑さを感じる要因は温度だけではありません。湿度や風の有無、照り返しによって体感温度は変わります。犬種によっても違いがあります。特に寒い地域原産の犬は暑さがとりわけ苦手です。持病や年齢といった要因でも、体温調節機能が低下することがあります。
体の中心が地表に近いことで、犬が感じる暑さは人間のそれより、かなり高いことを念頭におく必要があります。また、涼しいときであっても十分に水分を取れるよう、飲み水を携行しておきましょう」
(オトナンサー編集部)
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