「水ようかん」と「ようかん」、違いは何? 老舗に聞いてみた
夏に食べたいお菓子の一つ「水ようかん」は、普通の「ようかん」と食感などに違いがありますが、材料や作り方にも違いがあるのでしょうか。創業100年超の老舗に聞いてみました。
夏に食べたいお菓子の一つ「水ようかん」。この水ようかん、普通の「ようかん」とは食感などに違いがありますが、材料や作り方にも違いがあるのでしょうか。1899年創業のようかん製造・販売の老舗で、佐賀県小城市に本店があり、本店隣に「村岡総本舗羊羹(ようかん)資料館」も開設している「村岡総本舗」の村岡由隆副社長に話を聞きました。
水分や糖度に違い
Q.水ようかんと普通のようかんは、何が違うのでしょうか。
村岡さん「ようかんの製法としては、大きく分けて、『煉(ね)りようかん』と『蒸しようかん』がありますが、水ようかんは、通常の煉りようかんと材料は基本的に同じです。製法にも大きな違いはありませんが、煉り時間などに違いがあります。
最も大きな違いは水分量で、大ざっぱに申しまして『水分量が多いのが水ようかん』だといえますが、明確な基準はないと思われます。『冷凍して凍るものが水ようかん、凍らないものがようかん』との意見もあり、実際に当店の製品で実験してみたところ、水ようかんは凍りましたが、通常の煉りようかんは凍りませんでした。
話は少しそれますが、当店では凍らないようかんの特性を生かして、ミルクアイスの中にようかんを入れた『羊羹アイスキャンデー』も販売しております」
Q.では、通常の煉りようかんの材料と作り方を教えてください。蒸しようかんもお願いします。
村岡さん「煉りようかんの材料は餡(あん)、砂糖、寒天です。餡は、通常は小豆から作りますが、白餡の場合は白インゲン豆、白小豆などから作ります。
作り方は、水の入った煉り釜に寒天を溶かし、次に砂糖を溶かします。溶け切ったところで餡を入れ、煉り上げます。その後、現代製法のようかんは、ガゼットと呼ばれるアルミニウムの袋に液状のまま流し込み、密封します。袋の中で自然と固まり、それを後日包装して出来上がりです。
伝統製法のようかんは煉り上げた後、流し箱に流して一昼夜すると固まります。その後、切り分け、竹の皮で包み、経木(木を薄く削ったもの)で巻き、セロハンとレッテルで巻いて出来上がります。
蒸しようかんは、小麦粉、葛(くず)、砂糖、餡から作られます。寒天が出来たのは江戸時代なので、それ以前は蒸し羊羹しかありませんでした」
Q.水ようかんの材料と作り方を教えてください。
村岡さん「水ようかんの材料は、基本的には通常の煉りようかんと同じですが、寒天の種類を変えていますのと、当店の場合は葛も使用しています。また、砂糖、餡の使用量も、通常の煉りようかんより少ないです。
作り方は、前日に水、餡、砂糖を合わせたものを用意し、翌日、寒天、葛と合わせ煉り上げます。煉り時間は短く、糖度も低いです。
水分が多く、煉りが浅いため、通常の煉り羊羹の密封式のようにいかないので、アルミニウムの容器に充填(じゅうてん)し、レトルト殺菌を行います。そうすることで、添加物を使用せずに150日間の賞味期間となっています。
当店の水ようかんは、小豆こし餡の『本煉(ほんねり)』や粒餡の『小倉』など6つの味がありますが、7月限定で、生菓子に近い賞味期間5日間のものも、『本煉』のみお出ししております」
Q.水ようかんは夏の季語ですが、冬に食べる地域もあると聞きます。事実でしょうか。
村岡さん「事実です。福井、日光(栃木県)の水ようかんが有名で、これらの地方では、冬に水ようかんを食べるそうです。
ちなみに当店がございます佐賀県小城市は、約20軒が『小城羊羹』を製造するほどようかん業者が多いことで有名で、隣接する佐賀市は、総務省の家計調査で、ようかん購入額が1位の年も多かったのですが、近年は福井市に抜かれる年も出ています」
Q.通常の煉りようかん、水ようかんそれぞれのおすすめの食べ方をお聞かせください。
村岡さん「通常の煉りようかんは40グラムぐらいに切り、2口ぐらいで召し上がると、寒天の効き具合、甘さ、風味がちょうどよく感じられ、おすすめです。小豆餡の『本煉』、『小倉』はコーヒーにも合います。
水ようかんは冷やしても常温でも、お好きなように召し上がっていただければと存じます。水ようかんは食べやすいので、『高齢で食欲がなくなった母が、村岡総本舗の水ようかんだけはおいしいと食べてくれます』と言ったご感想をいただいたことが数回ございました。食欲が減退する人も出てくる夏にはちょうど良いのかもしれません。水ようかんは味があっさりしていますので、あっさりとした飲み物が合うと思います。
また、当店の水ようかんは、寒天も葛も使用していることで、程よい煉り具合も保ちつつ、口溶けも良いのが特徴ですので、ぜひお試しください」
(オトナンサー編集部)
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