夏のあいさつ「暑中見舞状」の基本をマナーコンサルタントに聞く
夏のあいさつ、暑中見舞状の「基本」について、マナーコンサルタントに聞きました。

夏、故郷の両親や友人をはじめ、取引先などにも送る「暑中見舞状」は、年賀状とはまた違う、先方に心を伝える機会となります。暑中見舞状の「基本」について、一般社団法人「マナー&プロトコル・日本伝統文化普及協会」(東京都港区)代表理事でマナーコンサルタントの西出ひろ子さんに聞きました。
「小暑」「大暑」の時期に出す
Q.そもそも「暑中見舞状」とは。
西出さん「文字の通り、『暑中』という夏の暑い時期に、日頃お世話になっている皆さまの健康を案じる気持ちをはがきに託して送るものです。
送る時期は、二十四節気でいう『小暑』(7月7日ごろから7月22日ごろ)と『大暑』(7月23日ごろから立秋前8月6日ごろ)が暑中の期間となるので、この期間に送れば良いでしょう。ただし、地域によっては早すぎると『まだ暑くない』と思われる場合もあることから、近年は、7月20日ごろから立秋までに送るのが一般的だと言われています。
立秋(8月7日ごろ)を過ぎたら『残暑見舞状』としてはがきを送ります」
Q.送る相手は一般的にどういった人になるのでしょうか。
西出さん「個人として送る相手は、家族や親戚、恩師、友人などが一般的です。また、会社として送る場合は、取引先関係者やお客さまに送ります。しかし会社関係は虚礼廃止の傾向などから、暑中見舞状を送ることは減少の方向にあります。一方、暑中見舞状に、夏季休暇のお知らせや、セールのご案内を書き加えるなどして活用するケースもあります」
Q.具体的にはどのように書くのでしょうか。
西出さん「まず、季節のあいさつ文として『暑中お見舞い申し上げます』と文字を大きめに書きます。
続いて、行をあらため、あいさつ文より文字を小さめにして、(1)先方の状況を伺い気遣う言葉(2)自身の近況報告(3)先方のご健康を祈る言葉-を書きます。例文としては次のとおりです。
(1)暑い日が続いておりますが、お変わりなくお過ごしでしょうか。
(2)おかげさまで、私はつつがなく過ごしております。
(3)酷暑厳しき折、ご自愛くださいますよう祈念申し上げます。
最後は、行替えをし、日付を書きます。書き出しは冒頭のあいさつ文の一文字目よりやや下の位置から小さめに『令和○年 盛夏』と書きます。『盛夏』と書く場合は和暦で表記するのが一般的です。
句読点については賛否両論ありますが、冒頭のあいさつ文に句読点は不要です。本文に句読点をつけるのは現代では一般的といえます。句読点をつけない場合は、句点の代わりに行替えをし、読点の代わりに少し間隔を空けると読みやすくなります。
(1)暑い日が続いておりますが お変わりなくお過ごしでしょうか
(2)おかげさまで 私はつつがなく過ごしております
(3)酷暑厳しき折 ご自愛くださいますよう祈念申し上げます
また、本文では『暑さ』を感じさせないような言葉を使う配慮もすてきです。例えば、『月下美人に癒やされる今日この頃 お変わりなくお過ごしのこととお喜び申し上げます』といった具合です」
Q. 暑中見舞状を出していなかった相手から届いた場合、どのようにすべきでしょうか。
西出さん「暑中見舞状を出すことは、義務でも決まり事でもありません。あくまでも、暑い時期に日頃お世話になっている皆さんの健康を気遣い、お元気に過ごしていただきたいという気持ちを伝えるものです。
『お中元』をいただいてお返しは不要と言われているのと同様に、暑中見舞状をいただいて返信をしなければいけないという決まりはありません。ただし、マナーの型としては、いただいた形式と同様にお返しをすると言われていますので、返信する場合は、同じ暑中見舞状としてはがきを送るのが良いでしょう。
はがきを送ることができない場合は、メールやLINEで代替としても問題はありません。ただし、目上の人にははがきで送ることをおすすめします。もちろん、目上の人からメールやLINEで送られてきたら、同様のスタイルで返信して構いません。
暑中見舞状をいただいて返信する場合は、立秋を過ぎたら『残暑見舞状』として送ります。なお、返信の意味合いで送る場合でも『遅れて申しわけありません』のひと言は不要と考えます」
Q.その他、暑中見舞状について、心掛けるべきことがあれば教えてください。
西出さん「デジタル化が進む中で、暑中見舞状などの紙でのコミュニケーションは減少傾向にありますが、だからこそそれを行うことで相手の心に残り、あなたの気持ちが伝わりやすくなることもあります。
先ほど述べた通り、暑さを感じさせない季語を調べるなどして、暑中見舞状を出すことを楽しみながら相手を気遣い、酷暑を乗り越えていただくことを祈念いたしております」
(オトナンサー編集部)
コメント