銭湯で長年親しまれている“コーヒー牛乳” 容器によって味が違う?
「コーヒー牛乳」は、容器によって味が異なるのでしょうか。メーカーに聞きました。
銭湯で長年親しまれている飲み物の一つが瓶入りのいわゆる“コーヒー牛乳”です。銭湯で飲んだことのある人も多いのではないでしょうか。ところで、店舗で売られている“コーヒー牛乳”は紙パック入り商品が主流で、瓶入り商品はあまり見かけません。ネット上では、「銭湯で飲むコーヒー牛乳は、なぜかよりおいしく感じる」という声もありますが、瓶入り商品と紙パック入り商品とでは、味が異なるのでしょうか。瓶入りの“コーヒー牛乳”を販売するメーカー2社に聞きました。
瓶特有の「特別感」「ひんやり感」が人気
まずは、瓶タイプとペットボトルタイプの「明治コーヒー」を販売する、明治(東京都中央区)の広報担当者に聞きました。
Q.「明治コーヒー」は、いつごろ発売したのでしょうか。
担当者「瓶入り商品は1956年、ペットボトル入り商品は2013年にそれぞれ発売しました。瓶入り商品の方は、発売以来、『新鮮』『おいしさ』といった特別感が評価されています」
Q.瓶入り商品とペットボトル入り商品とでは、味が異なるのでしょうか。また、瓶入り商品が高く評価されてきた中で、なぜペットボトル入り商品を開発したのでしょうか。
担当者「明治コーヒーの場合、瓶入り商品とペットボトル入り商品とでは、成分や製造方法(殺菌工程など)が異なるため、味に違いがあります。瓶入り商品は無脂乳固形分を3.2%含んでおり、公正競争規約(景品表示法の規定に基づいて、業界が自主的に定めている景品と表示についてのルール)では、瓶入り商品は『乳飲料』(乳固形分が3%以上含まれる飲料)に分類されます。
一方、ペットボトル入り商品に含まれる乳脂固形分は1.06%で、瓶入り商品よりもコーヒーの使用量を増やしており、この商品は、公正競争規約で『コーヒー飲料』(内容量100グラム当たり、2.5グラム以上5グラム未満のコーヒー生豆から抽出したコーヒーを使用した飲料)に分類されます。
当社では、販売先に合わせた商品設計をしており、瓶入りタイプは宅配向け商品や、温浴施設などの事業者向け商品として、ペットボトル入りタイプはスーパーやコンビニエンスストア、自動販売機向け商品として販売しています。店頭でも瓶で飲む情緒を味わいたいというニーズがありますが、飲み終わった空き瓶の回収が難しいため、瓶のような形状のペットボトルで店頭向け販売を行っております。
なお、瓶は乳との相性がよく、また、当社の調査で、乳飲料は瓶で飲むことで、よりおいしさを感じる傾向にあることが分かったため、当社は瓶での販売にこだわっています。ぜひ温浴施設を利用したときは、風呂上がりに片手を腰に当てながら、瓶入りの明治コーヒーを飲んでみてください」
Q.なぜ瓶入り商品を店頭向けに卸さないのでしょうか。
担当者「瓶入り商品のよさは、お客さまからも評価いただいている『新鮮さ』『特別感』に加え、瓶ならではの『ひんやり感』『濃厚な風味』にあり、この点がペットボトル入り商品や紙パック入り商品との差異化につながっています。
また、この評価を支えているのは商品そのもののよさだけではなく、販売戦略にあるとも捉えております。そのため、当社では、瓶入り商品を店頭に卸さず、宅配や温浴施設などを利用いただくお客さまに特別な時間を過ごしていただくように、販売先を限定しています」
Q.牛乳や乳飲料のペットボトル入り商品をあまり見かけないのは、なぜなのでしょうか。
担当者「牛乳や乳飲料は、『瓶や紙パックで飲むもの』というイメージが強く、特にペットボトルで牛乳類を飲むことに抵抗感があるお客さまがいらっしゃいます。また、チルドの牛乳、乳飲料は温度の影響を受けやすく、持ち歩いて飲むという飲用シーンが少ないことも、ペットボトル入り商品が普及しない要因だと考えています」
続いて、瓶タイプと紙パックタイプの「雪印コーヒー」を販売する、雪印メグミルク(東京都新宿区)の担当者に聞きました。
Q.「雪印コーヒー」はいつごろ発売したのでしょうか。
担当者「まず、1957年に瓶入り商品を発売しました。その後、1963年に紙パック入り商品を発売し、『雪印コーヒー』としてのブランドを確立しました」
Q.「雪印コーヒー」は、瓶と紙パックとでは、味が異なるのでしょうか。
担当者「瓶入り商品、紙パック入り商品ともに中身は同じなので、味は変わりません」
Q.「雪印コーヒー」の瓶入り商品を店頭で見掛けることが、あまりないと思います。なぜ店頭向けに卸さないのでしょうか。
担当者「瓶入り商品は、瓶の再利用を前提として販売しているからです。宅配のお客さまが使用した瓶は、配達をした牛乳販売店が回収し、当社工場に持ち運ぶことができますが、店頭で販売した場合、お客さまからの瓶の回収が困難となります。そのため、牛乳販売店が瓶を回収できるよう、主に宅配向けや温浴施設などに設置されている自動販売機向けに販路を限定しています。
また、昔ながらの『情緒的価値』や、瓶特有の『ひんやり感』、『宅配や、銭湯の自動販売機でしかお目にかかれない』といった瓶ならではの『特別感』を感じていただくお客さまも多く、そういった特別感を大切にしたいという思いがあるのも、店頭向けに卸さない理由の一つです」
(オトナンサー編集部)
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