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SNSで誹謗中傷 画面のスクリーンショット、「証拠」として本当に有効? 弁護士に聞いた

タレントの中川翔子さんが呼び掛けた、「SNS上の誹謗中傷対策」が話題に。画面のスクリーンショットを撮っておくことは、実際にどのくらい有効なのでしょうか。弁護士が解説します。

スクリーンショットは実際に有効?
スクリーンショットは実際に有効?

 タレントの中川翔子さんが7月7日、自身のツイッターで誹謗(ひぼう)中傷の対応について投稿し、話題となっています。中川さんは、SNS上で誹謗中傷を受けた際の対応として、「誹謗中傷を警察に相談するときには、気付いたときに必ずスクショ(スクリーンショット)しましょう」「書かれた日時と内容の証拠を出すことになるので!」と呼び掛け、「これ大切」「なるほど!」「証拠を残すのが大事」など、多くの反響を呼んでいます。

 社会問題となってからもネット上での誹謗中傷は後を絶ちませんが、実際に、画面のスクリーンショットを撮ることはどのくらい有効なことなのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

URLや投稿日時を含むと、より有力な証拠に

Q.そもそも、SNS上における誹謗中傷に関する法的責任とは。

佐藤さん「SNS上で誹謗中傷した場合、その内容によって名誉毀損(きそん)罪や侮辱罪などの罪に問われる可能性があります。

名誉毀損罪は、公然と“事実を摘示し(示し)”、人の社会的評価を下げた場合に成立し、法定刑は『3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金』です(刑法230条1項)。一方、侮辱罪は、公然と人を侮辱した場合に成立します。事実を示さず、『バカ』や『ブス』などの言葉をSNSで発信すれば、侮辱罪に当たる可能性があります。法定刑は、2022年6月の刑法改正により重くなり、『1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料』です(刑法231条)。

こうした刑事責任の他に、誹謗中傷によって相手が被った精神的損害(慰謝料)などについて、民事上の損害賠償責任を追及される可能性があります。慰謝料の額は、具体的な誹謗中傷の内容などによって変わりますが、名誉毀損の場合、10万円から50万円程度のことが多く、侮辱の場合、数万円程度しか認められないこともあります。こうした慰謝料の金額に加え、損害賠償請求をするために、発信者の調査や特定にかかった費用も損害として認めた例もあります」

Q.SNS上で誹謗中傷を受けた際、スクリーンショットを撮っておくのが有効なのは事実でしょうか。

佐藤さん「事実です。刑事責任と民事責任、いずれを追及するにしても、どのような誹謗中傷がいつ、どこでなされたのかを示す証拠が必要になります。SNSの書き込みは、いつでも発信者自身が削除することができるため、証拠隠滅されやすいといえます。そこで、何らかの形でSNSの書き込みを記録、保存しておくことが重要です。

保存方法としては、投稿されたページをプリントアウトしたり、スクリーンショットで残したり、投稿された画面をカメラで撮影しておくなどの方法が考えられます。被害に気付いたら、できるだけ早く、これらの方法で証拠を残しておきましょう。その際、URLや投稿日時まで記録、保存しておくと、より有力な証拠になります」

Q.その他、SNS上で誹謗中傷を受けた際に、手元に残しておくことが推奨される情報はありますか。

佐藤さん「法的責任追及のためには、発信者を特定することが必要となるため、発信者のプロフィルページなども事前に記録、保存しておくと、役立つ可能性はあります。

ただし、確実に法的責任を追及するためには、発信者のIPアドレスなどを特定した上で、契約者情報を知る必要があります。発信者情報の開示を求める手続きには、裁判が必要となるケースがほとんどであるため、弁護士に依頼するのが安心でしょう。

なお、2021年にプロバイダ責任制限法が改正され、新たな発信者情報開示の裁判制度が創設されました。改正プロバイダ責任制限法は2022年10月1日より施行され、今後、より簡便かつ早期に、発信者の特定ができるようになることが期待されています」

(オトナンサー編集部)

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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