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橋本奈々未、嗣永桃子、有安杏果…アイドル“卒業”の背景にあるもの

今年の大学受験は失敗しましたが、元NMB48の須藤凛々花さんには「哲学を学ぶ」という明確な目標があります。須藤さんのように夢に向かう人や将来への不安が頭をよぎる人、アイドルの“卒業”もさまざまなようです。

元乃木坂46の橋本奈々未さん(2012年、志和浩司撮影)

 元NMB48のタレント・須藤凛々花さんが、大学受験に失敗したことをツイッターで報告、浪人して来年再挑戦することが分かりました。須藤さんは昨年のAKB48選抜総選挙開票イベントで突如として結婚することを発表し、大きな話題となりました。その後、8月をもってNMB48を卒業しましたがタレント活動は継続しています。

 卒業後、在籍時は多忙で通えず残していた体育の単位を取るために再入学し、高校卒業認定試験に合格するなど、着々と大学受験のためのステップを上っていましたが、今年は残念な結果に終わりました。それもこれも、単に学歴が欲しいのではなく「哲学の勉強がしたい」というはっきりとした目的あってのことです。来年はぜひ良い結果を出してほしいものです。

 須藤さんは21歳と、アイドルとしてもまだまだ通用する年齢です。須藤さんの場合は、やりたいことがあって積極的に人生の選択をしたのでしょうが、10代でアイドルデビューして20代前半ぐらいになると、人によっては迷いや悩みが出てくるケースも少なくないようです。一般の同級生など周囲の友人たちが、進学や就活など、次々と進路を決めていくタイミングでもあります。中には早婚の人もいるでしょう。

 一方でアイドル業というのは、職業として考えると不安定なものです。芸能界全般にも言えることではありますが、特にグループアイドルとなると勝ち組負け組ではありませんが、売れ方に差が出てくるのは宿命ですし、自身の立ち位置をうまく見いだせなければ悩みも大きくなるでしょう。同じグループのメンバーも、仲は良くてもライバルでもあり、孤独を感じることも多いのは否めません。

 そんな中で、グループから一度卒業し、ソロのタレントや歌手、女優として自分の力を試してみたいという人も出てくるのは当然かもしれません。メジャーなグループであれば、在籍時はグループの看板にいかに助けられていたのかを実感する人も多いでしょう。しかし、あえてそこから離れることで見えてくるもの、得られるものもあるはずです。

 一方で、卒業イコール芸能界引退という形もあります。ももいろクローバーZの有安杏果さんは、1月にグループを卒業するとともに所属事務所との契約も終了したことから、芸能界といったん距離を置くという選択をしました。その他、乃木坂46を卒業し引退した橋本奈々未さんやハロー!プロジェクトを卒業するとともに引退した嗣永桃子さんなど、いずれも人気抜群のトップアイドルが卒業と同時に芸能界を引退するケースもあるのです。それぞれに明確な目的意識があっての決断のようです。

「二十歳(はたち)の夢に向かって、動き出さなきゃいけないと改めて思いました」

 これは、前田敦子さんがAKB48から卒業することを発表した際のコメントです。二十歳前後は、社会人としてはやっと大人の仲間入りですが、10代から芸能界で活躍してきたアイドルにとっては、「アイドルとしてはベテラン」というケースも少なくありません。フレッシュな後輩たちは台頭してくるし、上を見れば先輩の歌手や女優と比べてまだまだキャリア不足で、上と下との板挟み状態になります。さまざまな迷いと悩みがよぎるのは当然でしょう。

 芸能界全般が、昭和の昔とは違って、デビューしたからといって一生いる世界ではなくなったという面も多少影響しているのかもしれません。テレビ主導だった時代は番組の出演料なども高かったですし、CDやレコードも売れましたが、現在はどのアイドル運営もマネタイズには昔以上に苦労しているようです。また、昔も途中でリタイアするタレントはいたものの今はアイドルの数が多く、ネット時代で情報量も多いので目立つようになっただけだと解釈することもできます。

 いずれにしても、応援していたアイドルが選択した道ですから、ファンとしてはその未来における成功を祈るしかありません。

(ライター、フォトグラファー 志和浩司)

志和浩司(しわ・こうじ)

ライター、フォトグラファー

1980年代にカメラマンとしてデビュー。90年代から各種紙媒体の編集に携わり、その後、モバイルサイトを経て新聞や雑誌、ウェブメディアなどでエンタメを中心に取材。CBCラジオ「丹野みどりのよりどりっ!」などのラジオ、テレビ番組出演も多数。芸能分野ではアイドルから演歌歌手、スポーツ選手までを幅広くインタビューしている。

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