オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

「わが子は発達障害かも」と悩む母…周囲に反対されても診断を受ける「3つの意義」

わが子の様子を見て、「もしかして発達障害かも」と思っても、診断を受けることを周囲に反対されるケースがあります。診断を受ける意義はどこにあるのでしょうか。筆者の見解です。

わが子を見て「発達障害かも」と思ったら、どうしますか?
わが子を見て「発達障害かも」と思ったら、どうしますか?

 私の知人の話です。他の子と比べて明らかに異質な行動をするなど、個性の範囲では片付けられない発達の凹凸があるわが子を目の前にして、「もしかして、うちの子は発達障害児かもしれない」と不安がよぎり、「一度、専門の病院に連れていって、診てもらおうと思うんだけど」と夫に相談したそうです。

 すると、夫から、「幼いうちから診断名なんか付けられてしまうと、伸びるものも伸びなくなるぞ」「似たような子は他にもたくさんいるじゃないか。個性の一つなんだから、それを伸ばさないと」と言われ、心が揺らいだといいます。知人は、もんもんとしてしまい、出口の見えないトンネルに放り込まれてしまいました。

「この子はどういう状況にあるのか」が分からない

 この状態を、「せきが出る」状態で考えてみます。せきが止まらないとき、新型コロナウイルスによるものなのか、それともインフルエンザなのか、ぜんそくを発症したのか、単なる風邪なのか…原因がはっきりすれば対処できます。しかし、原因が分からないと対処法も分からず、不安になるものです。仮に、「原因不明」で突き返されてしまったら、「このせきの原因は一体何だろうか?」と不安な思いが募るばかりでしょう。

 これは、発達障害の診断と似ているような気がします。診断名がつかないと、「この子はどういう状況にあるのか」が分からないまま、あらゆることを他の子と比べる“比べる病”がますます悪化し、もんもんとした日々を過ごすことになるのではないでしょうか。

 では、診断を受ける意義はどこにあるのでしょうか。3点、説明します。

【医師の診断により、合理的配慮を得られる】

 発達障害の診断がついていないわが子に関して、親が、「集中力がないので、本人に努力を求めるのではなく、座席の位置を前にして友達が視界に入らないようにしてほしい」「運動場が見える窓際に座らせないでほしい」と学校へ要求すると、「他にも似たような子がたくさんいますから、個性の一つです。ですから、おたくのお子さんだけ特別扱いするわけにはいきません」と断られてしまうことがあります。もしかすると、担任から「家庭でのしつけができていないだけなのに」「本人の気合や努力が足りないんだ」と思われてしまったのかもしれません。

 しかし、医師の診断書というお墨付きがあれば、親だけの要求ではなくなります。障害者差別解消法により幼稚園、保育園、学校側に対し、合理的配慮も求めやすくなるでしょう。

【家族の理解を得ることができる】

 夫から、「おまえのしつけの仕方が悪いからだ!」「気合の問題だ」と根性論を押し付けられていたとします。でも、診断名が付くことで、理解してもらいやすくなるかもしれません。もし、賛同されなかった場合、それでもむやみに戦うと、妻自身が精神的に疲弊してしまいます。夫には黙って、診断名をもらいに専門機関へ行くとよいでしょう。

【自分を責めなくなる】

 診断を受けることで、親は「しつけの仕方が悪い」が誤解だと分かり、本人も「自分が友達と同じことができないのは、障害のせいなんだ」と自分を責めることがなくなります。生まれつき持っていた「脳の機能」のせいだった、と分かるからです。周りも、むやみに叱責することが減るのではないでしょうか。

 近視の人が黒板の文字が読みづらいとき、眼鏡をかけることを禁止され、「努力不足だ!」と言われたらどうしようもなくなります。発達障害のある子への配慮も、それと同じなのではないでしょうか。

 ただ、障害があっても一人一人に個性はあり、性格も違います。正しく、詳しい診断を受けることによって、「発達障害は◯◯という行動をし、△△が好き」といった型にはめることなく、わが子を育てていくことも大切だと思います。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

コメント