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「廃止してほしい」の声も… カラオケ店、「ワンオーダー制」の背景は?

多くのカラオケ店が、ワンオーダー制を導入しているのはなぜなのでしょうか。専門家に聞きました。

カラオケ店が「ワンオーダー制」を導入する背景は?
カラオケ店が「ワンオーダー制」を導入する背景は?

 多くのカラオケ店では、利用客に対して、飲み物か食べ物を必ず1品注文することを求めています。この場合、客は退店時に室料のほかに飲食代も支払わなければなりません。このような料金システムは、一般的に「ワンオーダー制(または、ワンドリンクオーダー制)」と呼ばれていますが、ネット上では「廃止してほしい」「なぜ飲み物を頼まなきゃいけないの?」「料金制度が複雑過ぎる」などの意見が上がっています。

 多くのカラオケ店が、ワンオーダー制を導入しているのはなぜなのでしょうか。経営コンサルティング、総合人材サービスなどを行う企業、アトワジャパン(千葉県習志野市)CEO(最高経営責任者)で、経営コンサルタントの江田泰高さんに聞きました。

閑散時にも一定の売り上げを確保

Q.多くのカラオケ店では、利用時に飲み物か食べ物を必ず1品注文するよう、客に求めています。なぜなのでしょうか。カラオケ店が収益を上げる仕組みも含めて、教えてください。

江田さん「まず、『お客さまがなぜカラオケ店を利用するのか?』について考えてみましょう。お客さまは、家族や仲間とカラオケを歌うためにカラオケ店に行きます。特定のカラオケ店に対するこだわりは強くないケースが多いので、店が混雑しているときは別のカラオケ店を探すと思います。

また、お客さまの目的は、カラオケ店が提供する食べ物や飲み物でもありません。食べ物や飲み物は、あくまでも『ついで』という位置付けです。この『ついで』をうまく活用したのが、ワンオーダー制のような『1品注文』の仕組みです。

ビジネスの基本は売り上げを上げることです。カラオケ店のビジネスモデルは非常にシンプルで、『平均客単価×客数』が1日の売り上げになります。客単価の大部分は、カラオケ店の時間当たりの室料です。そのため、理想を言えば、全ての時間帯に満員になっている状態が1日の最大売り上げになります。 しかし、常にそのような状態になるのは現実的ではありません。

そこで、室料以外の売り上げを増やす手段が『飲食の提供』です。しかし、お客さまが、必ず飲み物や食べ物を購入してくれるとは限りません。そこで、『1品注文』が登場します。カラオケ店では、受け付けが終わり部屋に入った後、部屋にあるメニューを見て電話で注文を行うケースが多く見受けられます。そうすることで、他にもある豊富なメニューや少しぜいたくなデザートなどが視線に入り、購買意欲が刺激されます。複数の人がグループでカラオケ店を訪れている場合、1人でも食事を注文すると他の人も連鎖的に食事を注文することが十分に想定されます。

また、食事やアルコールが提供されていることが分かれば、小腹がすいたときにカラオケを切り上げて食事に行くという選択肢以外に、カラオケ店で食事をするという選択肢も生まれ、滞在時間が長くなる効果も想定されます」

Q.では、「ワンオーダー制」のメリット、デメリットについて、教えてください。

江田さん「メリットとデメリットは、次の通りです。

【メリット】
(1)食事・飲み物を注文することによる『客単価の増加』
(2)飲み物代をカラオケ料金に含めないことで、一見すると『安い』と思わせることができる
(3)フード・ドリンクメニューを認知させることによる注文増加

【デメリット】
(1)オーダーを適切に処理できるよう、事前にスタッフをしっかり教育する必要がある
(2)客が、ワンオーダー制に従わなかった場合に発生したトラブルやクレームに対応する必要がある」

Q.最近では、ワンオーダー制を導入しないカラオケ店も増えつつあるようです。ワンオーダー制を導入するカラオケ店と導入しないカラオケ店とを比べた場合、どちらの方が集客や売り上げが伸びやすいのでしょうか。

江田さん「どちらの方が集客や売り上げが伸びやすいのかは、一概には言えません。ワンオーダー制を導入するカラオケ店、導入しないカラオケ店ともに次のような課題や利点があります。

【ワンオーダー制を導入するカラオケ店】
(1)売り上げを上げるには、フードも含めたメニューの拡充が必要
(2)一定の仕入れが発生することで、ワンオーダー制を導入しないカラオケ店に比べて、経営の難易度が上がる
(3)店舗が立地している地域のニーズを反映した店舗づくりができれば、集客・売り上げにつながりやすい

【ワンオーダー制を導入しないカラオケ店(ソフトドリンクを『ドリンクバー』として提供している店舗を想定)】
(1)オペレーションが確立しており、人数も最小限で展開できる
(2)単独店舗だと売り上げ、利益率が低い。そこで、複数の店舗を同時に展開すると、売り上げや利益の確保につながりやすい
(3)近年では、飲食物の持ち込みが可能な店舗が増えているほか、出前サイトや近隣のパートナー飲食店による飲食物の配達を受け付けるなど、カラオケ店のオペレーションに依存しない形で飲食が提供できる仕組みが増えている

上記の課題を克服しつつ、利点を生かす経営をすれば、集客や売り上げの拡大につながるのではないでしょうか」

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江田泰高(えだ・やすたか)

ビジネス演出家、実業家

ビジネス演出家「エダコDX」として常に挑戦を続ける起業家。敏腕コンサルとして、世界を駆け巡っている。戦略アドバイザーとして複数のベンチャー企業に参画し、コーチングアプリ「クレドル」をプロデュース。ラジオ番組のメインパーソナリティーも務める。アトワジャパン CBP(Chief Business Producer)。アトワジャパン(https://www.atowa-japan.com)、個人ホームページ(https://www.edacodx.com/)。

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