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スマホの共有機能を使ってわいせつ画像を送りつけてくる“デジタル痴漢”、どうしたら防げる?

スマホの共有機能を使用し、わいせつ画像を他人に送りつける新しい“デジタル痴漢”が話題となっています。iPhoneの「AirDrop」を通じて被害が出ているようですが、これを防ぐ手段はあるのでしょうか。

新しい“デジタル痴漢”はどうしたら防げる?

 スマートフォンの機能を使って、自分のわいせつ画像を他人に送りつける新しい手法が、SNS上などで話題となっています。体験談の中には、知り合いがiPhoneを購入し、ファイル共有機能「AirDrop」の共有範囲を「すべての人」に設定していたら、知らない人の自撮りの下半身全裸画像を共有させられた、というケースも。被害に遭わないためには、AirDropの設定切り替えが必要だと指摘するコメントも見られます。

 このAirDropの機能や使い方、また新しい“デジタル痴漢”の法的問題とはどのようなものでしょうか。一般社団法人日本情報技術振興協会(JAPRO)認定講師の久原健司さんとグラディアトル法律事務所の刈谷龍太弁護士に取材しました。

友人同士などで画像や動画を共有

Q.AirDropとはどのような機能でしょうか。その目的や使い方、メリットについて教えてください。

久原さん「『AirDrop』はiPhoneやiPadなどアップル製の端末同士でWi-FiやBluetoothを使用し、ファイルを転送する機能です。目的としては、友人と遊びに行ったときの画像や動画を共有するために使用されることが多い傾向にあります。使い方は(1)お互いの端末でAirDropを有効にする(2)データを送る側の端末でAirDrop機能を有効にしている端末を検出しファイル送信する(3)データを受け取る側の端末で『受け入れる』をタップする、という3つのステップが必要です。暗号化されたデータが素早く送られるメリットがあり、画質も落とさずに高解像度で写真を共有するのに適しています」

Q.AirDropによって他人から突然画像共有させられる仕組みとは。

久原さん「自身が持っている端末のAirDropの受信設定が『すべての人』になっていることで、連絡先に存在しない人、見ず知らずの他人からもデータを受け取れる状態になっています。ただし、受信設定が『すべての人』になっている場合でも『辞退』をタップすることで、突然画像共有させられることはなくなります」

Q.デジタル痴漢の被害を防ぐための設定を教えてください。

久原さん「AirDropの受信設定が『すべての人』からになっている場合、設定を『連絡先のみ』に変更すれば、友人からのファイルしか受信しません。使用しない場合は『受信しない』に設定することをお勧めします」

わいせつ電磁的記録等送信頒布罪の可能性

Q.上記のようなデジタル痴漢には、どのような法的問題がありますか。

刈谷さん「AirDropでの共有先端末の数が不特定、または多数であると評価できる場合、『わいせつな電磁的記録』を『頒布』したとして、『わいせつ電磁的記録等送信頒布罪』(刑法175条第1項)にあたると考えられ、2年以下の懲役または250万円以下の罰金もしくは科料、または懲役と罰金の両方が科される可能性があります。また、各都道府県で定められている迷惑防止条例に違反する可能性もあります。民事上は、受信した人が不快な思いをして精神的苦痛を与えられたとして、不法行為(民法709条及び710条)による損害賠償請求の対象となる余地もあるでしょう」

Q.これまでに事件や裁判になった例はありますか。

刈谷さん「スマートフォンのファイル共有機能という新しい技術を使った行為ですので、実際に刑事罰を受けた事件や裁判例は今のところないようです。ただし今後、送信されるデータの内容や送信される範囲・回数によっては事件化されるケースが出てくるかもしれません」

(オトナンサー編集部)

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久原健司(くはら・けんじ)

株式会社プロイノベーション代表取締役、ITジャーナリスト

1978年生まれ。2001年に東海大学工学部通信工学科を卒業後、ITの人材派遣会社に入社。大手コンビニエンスストアのPOSシステム保守運用業務を担当する。2003年からソフトウエア開発会社で、システムエンジニアとして、大手通信会社のWebアプリケーションシステム開発など多くの業務に携わるも、2006年、小さな頃からの夢であった独立を決意。2007年(29歳)に株式会社プロイノベーション(http://proinnv.com/)を設立し、当時としては珍しいオブジェクト指向によるモデリング開発でのサービス提供を始める。2018年「振り向くホームページ」サービスを開始(http://furimuku.com/)。プロのフリーランスを集めて企業の成長をサポートすることで、フリーランスとしての働き方を応援する傍ら、日本一背の高いITジャーナリストとして、さまざまなウェブメディアでも活躍中。

刈谷龍太(かりや・りょうた)

弁護士

1983年千葉県生まれ。中央大学法科大学院修了。弁護士登録後、都内で研さんを積み、2014年に新宿で弁護士法人グラディアトル法律事務所(https://www.gladiator.jp/)を創立。代表弁護士として日々の業務に勤しむほか、メディア出演やコラム執筆などをこなす。男女トラブル、労働事件、ネットトラブルなどの依頼のほか、企業法務において活躍。アクティブな性格で事務所を引っ張り、依頼者や事件に合わせた解決策や提案力に定評がある。

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