コロナ禍で「肩こり」「腰痛」に悩む人も… どうやって改善する? 理学療法士に聞く
在宅勤務がきっかけで発症した肩こりや首のこり、腰痛を改善するにはどうしたらよいのでしょうか。理学療法士に聞きました。

コロナ禍が3年目となり、在宅勤務など家にこもる時間が長くなったことをきっかけに運動不足となり、「肩こり」「首のこり」「腰痛」などに悩まされるようになった人も多いようです。コロナ禍で発症した肩こりや首のこり、腰痛を改善するにはどうしたらよいのでしょうか。医療法人社団鎮誠会顧問で理学療法士の金川潤也さんに聞きました。
姿勢が悪くなっていないか確認
Q.在宅勤務がきっかけで、肩こりや首のこり、腰痛といった症状に悩まされるようになった人も多いようです。なぜこれらの症状が出るのでしょうか。
金川さん「肩こりや首のこり、腰痛といった症状の多くは、姿勢が悪いことで起きる、筋肉の痛みが原因であることが多いです。在宅勤務が増えたことでの運動不足について、アメリカのTison GH氏らの研究(2020年)によると、世界187カ国のスマートフォンアプリのサンプルを利用したデータから、新型コロナのパンデミック時に1日当たり27.3%も歩数が減ったことが判明したと報告されています。また、活動量の減少だけでなく、在宅ワークの際に仕事で使う机、椅子など周辺環境の変化も、このような『こり』『痛み』の原因につながると考えられています。
男女問わず、30代から40代の働き盛り世代のほとんどの人は、20代の頃と比較して筋肉量が減少し、体の柔軟性が低下しているため、『こり』や『痛み』を自覚する状態に陥りやすいことも、原因の一つとして考えられます。20代の頃と比較してヒップ(尻)の周径や太ももの周径が減少している場合、筋力が低下している可能性が高いです。ぜひこの機会に鏡で後ろ姿を確認してみてください」
Q.では、肩こりや首のこり、腰痛を改善する方法を教えてください。
金川さん「まず、『楽な姿勢=体に負担がかかりにくい姿勢』とは限らないことを理解することが大切です。横になったり、休憩したりした後も痛みが緩和しない人は、休息時に悪い姿勢となっていることが多くあります。そのような人はまず、日常生活の中で『体を丸める』などの姿勢を無意識にしていないかチェックしてください。
体が痛みやだるさを感じる前に、ストレッチや軽い運動をする習慣を身に付けることも大切です。また、『人に見せる姿勢を日常的に意識する』だけでも、姿勢のよい状態を保ちやすくなります。このような姿勢や、ストレッチを中心とした運動を意識すれば、こりや痛みはおおむね改善することが多いと思います。今日からできることとして、毎日、目一杯の背伸びを頻繁に行うだけでも効果的です。
パソコンを使った仕事が多い人に、ぜひ実践してほしいことがあります。背筋を伸ばして椅子に座っている状態で、下を向かずに軽くあごを引いた姿勢でパソコンのモニターの上端が目線と合うように、画面の高さを調整してください。
ノートパソコンの場合は、ノートパソコン用の市販の卓上スタンド(角度調整可能なタイプ)を購入し、ワイヤレスキーボードやマウスなどと併せて利用することで姿勢が良くなり、作業効率が上がります。カフェなどでは、折り畳み式の卓上スタンドを利用するか、モバイルバッテリーやおしぼりなどをパソコンの下に置いて、少しでもモニターの高さを上げるとよいかと思います」
Q.肩こりや首のこり、腰痛に悩まされている時期にやってはいけないことはあるのでしょうか。
金川さん「先述しましたが、背中が丸くなるような姿勢や左右非対称の姿勢など、姿勢が悪い状態を継続することはおすすめできません。呼吸法やストレッチを意識しながら、可能な範囲で全身を動かすことをおすすめします」
Q.それでは、肩こりや首のこり、腰痛を防止するために効果的な呼吸法やストレッチの方法は。
金川さん「呼吸法ですが、座りながら胸式呼吸(あごを引いてしっかり胸を持ち上げる)と肩で呼吸(しっかり肩をすくめる)を数回ずつ繰り返してください。
ストレッチについては『いすに座ってひざを伸ばし、へそを足先に近づける意識で前のめりになり、ふくらはぎを触る』『おへそで8の字を描くように動かす』『あごを引きながら胸を持ち上げるストレッチ』『あごを引きながら両手を耳につけた状態で背伸び』を実践してください。
また、先述のように、日常生活では『長時間同じ姿勢を続けないように意識する』『少し汗をかく程度の運動を毎日継続する』『スマートフォンのアプリを使用し、睡眠、歩数、体重などを毎日確認する習慣をつける』『きれい、かっこよく見える姿勢を日常から意識し実践する』を心掛けてください」
Q.病院に行った方がよい目安はあるのでしょうか。
金川さん「主に次の症状が出ている場合、何らかの問題が生じている可能性があるため、早めに医療機関に受診することをおすすめします。
・しびれや、左右非対称な冷えなどの症状
・動悸(どうき)や息切れも伴う肩や背中などの痛み
・手足の指などが動かしにくい、力が入らないなどの症状が急激に出る
・あおむけで眠れないほどの背中や首の痛み
・上記ほどではないが、痛みが数カ月続く
また、慢性的な痛みに悩まされている人の中には、痛み止めや睡眠導入剤などを自己判断で多用するケースも見受けられますが、症状の緩和にはつながらないことが多いです。安易に自己判断をするのではなく、医師の診察を受けることを検討してください」
(オトナンサー編集部)
コメント