発達に不安がある子の就学先選びに必須! 「就学相談」とは? どうやって受ける?
「就学相談」とは、どのような制度なのでしょうか。知的障害を伴う自閉症の息子を育てる筆者が実体験を紹介します。
あなたは「就学相談」を知っていますか。一般的には、あまりなじみがない言葉かもしれません。しかし、発達に不安がある子どもにとっては、非常に大切な機会を示す言葉です。今回は、知的障害を伴う自閉症の息子を育てる筆者の体験を基に、「就学相談」についてお伝えします。
幼稚園の年中時から情報収集
子どもが小学校に上がる前の年の秋ごろになると、「就学時健康診断」の通知が届きます。就学を控えた子ども全員に通知が届くこの健診と違い、「就学相談」は、発達に遅れや凸凹(得意、不得意の差が大きい)がある、何らかの障害や病気があるなどで就学に不安があるお子さんとその家族が、教育委員会に就学先を相談する機会です。
就学相談の時期や内容は地域によって差がありますが、筆者が住む地域では例年、就学の前の年の5月から受け付けが始まります。
就学相談では、まず本人の障害の状態や教育的ニーズを把握します。そして、教育や医学、心理学などの専門的な意見、学校や地域の状況なども加味しながら、最も適した就学先を検討します。
専門家の意見だけでなく、本人や保護者の意見も踏まえながら、最終的に全員が納得できる形で就学先を決めていきます。
就学相談の最後には、教育委員会から就学先の判定を言い渡されます。保護者も判定内容に同意すれば、そこで就学先は決定です。
しかし、意見が食い違うと話し合いが続きます。なぜなら、教育委員会から就学先の判定を言い渡されても、それは決定事項ではなく、あくまで保護者の意見が尊重されるからです。
「就学相談を受けたら、普通級に行きづらくなってしまうのでは?」
そんな不安があるかもしれませんが、就学相談を受けたことで、就学の選択肢が狭められてしまうことはありません。むしろ、支援級や支援学校といった、何らかの特別な支援がある就学先を希望している場合は、就学相談を受けないと選択できないこともあるようです。
また、親から見た子どもの発達状態と、第三者から見た子どもの発達状態とでは、見解が違うということもあり得ます。
実際、筆者の周りにも、支援級を検討しつつ就学相談を受けたところ、教育委員会からは普通級をすすめられたお子さんがいらっしゃいました。反対に、普通級を希望して就学相談を受けたところ、教育委員会からは支援級をすすめられたお子さんもいらっしゃいました。
子どもにとって大切な「就学」。冷静に適切な判断をするために、就学相談は非常に大切な機会なのです。
就学相談はどうやって受ける?
「就学相談」という言葉は知っていても、実際にどんなスケジュールで進んでいくものなのか、ピンと来ない人もいるかもしれません。
筆者の息子は就学相談の結果、特別支援学校をすすめられました。その結果は筆者も納得できるものだったので、息子は特別支援学校に入学し、今は小学部の2年生です。
ここで、就学先決定までの流れの一例として、息子の就学相談のスケジュールがどんな経緯で進んでいったのか、お伝えしたいと思います。
筆者が息子の就学先選びについて考え出したのは、息子が幼稚園の年中の年の春でした。通っていた療育の先生から「そろそろ就学先を考え始めた方がいい」とアドバイスをもらったのがきっかけで、就学に関する説明会や学校見学などに行き始めました。
年中というと早過ぎると思うかもしれませんが、就学先選びに早過ぎることはなかったと思います。長い期間をかけてじっくり考えられたおかげで、納得がいく判断ができたからです。
息子の場合、年長になったのが2020年の春でした。コロナ禍という特殊な事情だったこともあり、感染症対策のため、年長の年の説明会や学校見学は、大きく制限されました。そのため、まだコロナ禍に突入していなかった年中のうちから動いていたことは、筆者にとって大きなメリットでした。
息子が年長の年の5月、療育の先生から案内があり、就学相談に申し込みました。地域によっては、通っている児童発達支援センターなどから自動的に申し込まれるところもあるようです。
しかし、筆者が住む地域では、親が自分で教育委員会に電話をし、申し込まなければなりませんでした。就学相談の申し込み方法は地域差があり、市区町村のホームページなどにも掲載されているので、親が自分で情報を入手して、動いていく必要があります。
筆者は案内を受けてすぐ、5月に申し込みましたが、就学相談の申し込みは殺到していて、1回目の面談の日程は最短で7月末でした。
1回目の面談は親子で参加し、「教育委員会との面談」「発達検査」「医師の診察」が行われました。事前に用意していた書類を基に、息子の状況や、就学先に対する親の希望や考えなどを話します。
2回目の面談は、9月の初めに行われました。このとき親は待合スペースで待っているだけで、子どものみが順番に部屋に通されます。
そして、何人かの子どもの中での様子を見る、「行動観察」が行われました。息子は言葉を話せないので何が行われたのかはよく分かりませんが、学校生活を想定して、集団の中でどのような行動をするのかを見られていたのだと思います。
そして、3回目の面談、就学先の判定結果の報告です。本来はここでも面談があるはずだったのですが、息子のときはコロナ禍のため省略され、9月に電話で報告を受ける形となりました。電話で、発達検査の結果などに触れながら説明を受け、「特別支援学校が最適」という判定を受けました。
就学先が普通級や支援級に決まる場合は、ここで就学相談は終わりです。しかし、息子のように支援学校に決まった場合、まだ相談は続きます。支援学校は市区町村ではなく都道府県の管轄だったため、次は支援学校で面談を受ける必要がありました。
とはいえ、既に「支援学校が最適」という判定が出ているため、ここから判定が覆るようなことはありません。11月に入学予定の支援学校で面談と、クラス分けの参考のために息子の行動観察などをして、入学に至りました。
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