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歯磨きで口をゆすぐ回数は「1回」でいいって本当? 「ゆすぎ過ぎNG」の理由を歯科医師に聞く

あなたは歯磨きのとき、何回くらい水で口をゆすいでいますか。「口をゆすぎ過ぎるのはよくないらしいけど本当?」という疑問の声について、歯科医師に真偽を聞きました。

「口のゆすぎ過ぎはダメ」って本当?
「口のゆすぎ過ぎはダメ」って本当?

「歯を磨いた後、水を口に含み、口の中の汚れや歯磨き粉をゆすぐ」のが、基本的な歯磨きの流れです。中には、口の中の汚れや歯磨き粉をしっかり落とすために、何度もゆすぐのが習慣になっている人もいるようですが、一方で「口をゆすぎ過ぎてもよくないらしい」「1回だけでいいって聞いたことがあるけど本当かな…」との意見も聞かれます。

 歯磨き時の「口のゆすぎ過ぎ」がNGというのは本当なのでしょうか。実際のところについて、高谷秀雄歯科クリニック(宇都宮市)院長で歯科医師の高谷秀雄さんに聞きました。

フッ素を洗い流さないため

Q.歯を磨いた後に水で口をゆすぐ際、「ゆすぎ過ぎるのはよくない」のは事実でしょうか。

高谷さん「事実といえます。最近はフッ素が含まれている歯磨き粉が普及しており、歯磨き粉の成分によって汚れを除去した後、歯の表面にフッ素が行き渡ります。歯垢(しこう)などの汚れに比べ、フッ素は歯に定着しやすい素材のため、歯磨きをすることで汚れを取りながらフッ素を残すことができるのですが、フッ素は水に溶けやすい性質もあるため、過剰に水でゆすいでしまうと、歯の表面のフッ素が残らず洗い流されてしまうのです。

そのため、水でのゆすぎ回数は、歯磨きの汚れを吐き出した後、1回でよいでしょう。ちなみに当クリニックでは、クリーニング後にフッ素を塗布した患者さんには、口内にたまった唾液を吐き出していただくだけにとどめています」

Q.一方で、「しっかり何度もゆすがないと、汚れや食べカスが口の中に残りそうで心配」という声もあるようですが、その点において、少ない回数のゆすぎでも問題ないのでしょうか。

高谷さん「ブラッシングで浮いた汚れは、直後に水でゆすぐことで十分洗い流せます。ただし、食事の内容や歯磨きの間隔によっては十分でない場合もあります。糖分が高いもの、粘度が高いものは特にそうです。チョコレートやあめが虫歯の原因になりやすいのは想像しやすいと思いますが、意外なところではスポーツドリンクやエナジードリンクも歯の状態を悪化させやすいです。

ゆすぎ回数が少なくて不安な場合は、歯磨き時に吐いた唾液の粘度で口内の状態を判断することもできます。歯磨き後の唾液が『サラサラ』になるかどうかが判断の基準です。普段と比べて粘り気があると感じる場合、口内の状態はよいとはいえません。ただし、唾液の粘度は他人と比べることもないでしょう。先述したようにゆすぎ過ぎはよくありませんが、一度丁寧に歯磨きをして、自分にとっての『サラサラな状態』がどの程度か知っておくとよいと思います。食事の内容に心配がある日は、歯磨き粉をつける前に軽く歯磨きをすることも選択肢になるでしょう」

Q.その他、歯磨き時に口をゆすぐ際のポイントや、NG行為はありますか。

高谷さん「冷たい水でゆすぐのはNGです。知覚過敏などで痛みを感じない場合は爽快感があるかもしれませんが、ウイルスや菌の不活化を考えると、低温は有効とはいえません。ゆすぎの際は常温〜40度程度のぬるま湯が理想的です。水道水は環境によって温度が変わりますが、基本的には冷水なので気を付けましょう。コップの材質によって大きく変わるので注意が必要ではありますが、歯磨き中の数分、コップに水を入れて放置しておくだけで室温に近づきます。

ゆすぐ際の水の量は、片側の頬を膨らませる程度で構いません。大人の場合、20ミリリットルが適量です。計量カップなどで水を量って体験してみると分かりやすいと思います。含んだ水で左右交互に、合わせて10秒程度ゆすぐのが理想です。また、口と喉はつながっているので、歯磨きの前後でうがいをすることも効果的です」

Q.歯をゆすいだ後、気を付けた方がよいことはありますか。

高谷さん「歯磨き直後はフッ素成分がまだ落ち着いていないこと、そして悪い菌とともによい菌も減少している状態なので、飲食は控えましょう。悪い菌が先に繁殖してしまうような環境は避けるべきです。また、喫煙は血流を悪くする作用があり、せっかく刺激を与えた歯肉(歯茎)の血行を阻害してしまうので、歯磨き後は喫煙も厳禁です。30分程度もすれば、唾液とともに口内環境は落ち着きます。

ただし、『歯磨きをしたから我慢する!』という方向性よりも、飲食をする可能性が低いタイミングで歯磨きをする方が安心しやすいでしょう。出掛ける前や、勤務している人は始業前などが適しているといえます」

(オトナンサー編集部)

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高谷秀雄(たかたに・ひでお)

歯科医師(歯科口腔外科)

医療法人雄愛会高谷秀雄歯科クリニック院長・理事長。2008年、鶴見大学歯学部卒業。上尾中央総合病院、東芝林間病院歯科口腔(こうくう)外科にて2年間の研修医を経て、湘南東部総合病院歯科口腔外科にて常勤勤務。2014年、湘南美容外科・歯科クリニック分院長就任。2016年、宇都宮市で高谷秀雄歯科クリニックを開設。「断らない医療」をモットーに、患者さんとのコミュニケーションを大切にし、一人一人に合った歯科治療の提供を心掛ける病院を目指している。専門分野は親知らずの抜歯、口腔がんなど歯科口腔外科領域全般。審美歯科治療、インプラント治療も得意とする。高谷秀雄歯科クリニック(https://www.takatani-dental.jp)、公式YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCkrV-TGxGgYXDN1atx7bhNA/featured)。

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