端午の節句ゆかりの「ちまき」、東西で全然違うって本当?
5月5日は「端午の節句」です。この日に「ちまき」を食べる地域がありますが、この「ちまき」、地域によって違いがあるようです。
5月5日は「端午の節句」です。この日に食べるものといえば、「ちまき」という地域もあれば、「柏餅」という地域もあると思います。ただ、この「ちまき」も地域によって違いがあり、主に西日本では「甘いお菓子」、東日本では「食事的なもの」というイメージがあるようです。さまざまな「ちまき」について、料理研究家の長田絢さんに聞きました。
西はお菓子、東は食事
Q.そもそも「ちまき」とは、どういう食べ物なのでしょうか。
長田さん「『ちまき』とは、もち米やうるち米、米粉などで作った餅もしくはもち米を、三角形や円すい形にして、ササなどの葉で包み、イグサなどで縛った食品のことです。葉に包んだまま加熱し、葉をむいて食べます。昔、茅(チガヤ)という植物の葉で巻いていたことから、『茅巻(ちまき)』と呼ぶようになったといわれています。
その種類は多様で、おこわが葉に包まれた三角形の『中華ちまき』や、日本の端午の節句でお祝いとして食べられる、米粉で作った餅を葉で包んだ円すい形の『ちまき』もあります」
Q.なぜ、端午の節句で、ちまきを食べるようになったのでしょうか。
長田さん「端午の節句でちまきを食べる風習は、中国に由来があるとされています。紀元前、中国、戦国時代の楚(そ)に、『屈原(くつげん)』という有名な詩人がいて、国王の側近として仕えていました。しかし、陰謀によって国を追われることになり、悲観して汨羅 (べきら)という所の川へ身投げし、命を絶ってしまったのです。それが5月5日のことでした。屈原の死を悲しんだ国民(屈原の姉との説も)が供養のために、川にちまきを投げ入れ、やがて、ちまきを投げ入れる風習が、国の安泰を祈願するものになっていったそうです。
奈良時代、この風習が日本にも伝わり、端午の節句でちまきが出されるようになったといわれています」
Q.ちまきは地域によって、お菓子だったり、食事的なものだったりすると聞きます。どのように違いがあり、地域的にはどのような分布になっているのでしょうか。
長田さん「北海道、東北、関東・甲信、四国や九州の一部では、『おこわ』のちまきが一般的なようです。いわゆる中華ちまきで、もち米と一緒に味付けした豚肉やタケノコ、シイタケなどを、竹の皮で包んで蒸し上げたものです。端午の節句というより、中華料理として食べるものです。
一方、東海・北陸、近畿、中国、四国や九州の一部、沖縄では、『甘くて細長いお団子』をイメージする人が多いようです。こちらは、ササの葉に白くモチモチとした、細長くて甘いお団子が包まれていて、ササの葉の香りがほんのりついています。
鹿児島県では、『灰汁(あく)巻き』というお菓子を端午の節句に食べ、これを『ちまき』と呼ぶこともあるようです。灰汁に漬け込んだもち米を竹の皮で包み、灰汁で炊き、砂糖じょうゆや黒砂糖、きな粉を付けて食べるそうです。
さらに山形では、もち米をササの葉で包んでお湯で煮た『ちまき』が『笹(ささ)巻き』と呼ばれ、端午の節句に食べられています。『日本の食生活全集』という書籍シリーズには、日本各地のさまざまな『ちまき』が50種類以上載っています」
Q.端午の節句に食べるお菓子として、柏餅の地域もあります。主な地域分けを教えてください。
長田さん「端午の節句にちまきを食べる風習があまり定着しなかった東日本や北日本では、柏餅を食べるのが主流です」
Q.ちなみに、中国では中華ちまきを端午の節句に食べるのでしょうか。
長田さん「中華ちまきを食べることが多いようです。中華ちまきはもち米で作られており、中身はいろいろで、肉、豆などが入っています。竹やアシの葉で三角形か長方形のちまきを作り、草や縄で固定して加熱します」
Q.変わり種のちまきがあれば教えてください。
長田さん「『台湾ちまき』といわれるものは、主に北部系と南部系に分かれていて、いずれも素材になるのは、豚肉、卵の黄身、干しエビ、ピーナツなどですが、もち米の種類と炊き方が異なります。
その他、中国浙江(せっこう)省の『湖州ちまき』は細長いのが特徴で、蒸しあげる方式です。おかず系は豚肉、スイーツ系はナツメや小豆の餡(あん)が使われています。『ベジタリアンちまき』と言われるものもあり、もち米に、ピーナツ、干し大根を混ぜてゆで上げ、ピーナツの粉やコリアンダー、しょうゆだれを付けていただきます。
ちまきの具材に、特に決まりはないので、お好みの具材のちまきをご家庭で作ってみてはいかがでしょうか」
(オトナンサー編集部)
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