画面が大きいスマホと小さいスマホ、目に負担がかかるのはどっち? 負担を減らすには?
画面が大きい電子機器と画面が小さい電子機器とでは、どちらの方が目に負担がかかりやすいのでしょうか。専門家に聞きました。

スマホやパソコン、タブレットを購入するときに、画面の大きさで選ぶ人は多いと思います。スマホの場合、近年は大画面の製品が多く売られるようになりましたが、「画面が小さい方が持ち運びやすい」といった理由で、小さい画面のスマホを好んで使う人もそれなりに多いようです。ところで、小さい画面の製品と大きい画面の製品とでは、どちらの方が目に負担がかかりやすいのでしょうか。また、目に負担をかけないためには、画面からどの程度離れて使用すべきなのでしょうか。かわな眼科(千葉県松戸市)の川名啓介院長に聞きました。
小さい画面だと目を近づけがちに
Q.スマホやパソコン、タブレットを使う場合、小さい画面の製品と大きい画面の製品とでは、どちらの方が目に負担がかかりやすいのでしょうか。
川名さん「画面が小さい製品の方が目に負担がかかります。画面が小さいと、表示される字も小さくなるために、目を画面に近づけることが多くなるからです。そうすると、目の中の『毛様体筋』(物を見るときに、ピントを調節する筋肉)が緊張することが多くなり、その分、目が疲れやすくなるほか、近視になりやすくなります。できる限り大きな画面の製品を使った方が、目が疲れにくいでしょう」
Q.小さい画面だと近視になる可能性が高まるということですが、近視が進みやすい年齢について、教えてください。また、スマホやパソコンを長時間使用するなどして目に負担をかけ続けた場合、近視以外にどのような健康被害が生じる可能性があるのでしょうか。
川名さん「近年の研究で、近視が進むスピードは8歳から13歳までが最も大きいということが明らかになりました。また、20代半ばまではゆっくりと近視が進むということも分かりました。
近くを見る時間が増えるほど、近視は進みやすくなり、進行すればするほど、白内障や緑内障、網膜剥離、近視性黄斑症(近視により、網膜の中心にある黄斑に障害が起きること)といった目の病気にかかりやすくなります。
近視以外の症状としては、スマホなどの使い過ぎで目の疲れが悪化すると、眼精疲労や肩こり、頭痛、自律神経の乱れなどさまざまな体の症状を引き起こすことがあります。その他、夜間にパソコンやスマホを使うと、ブルーライトの影響により、いわゆる『体内時計』が乱れて、睡眠障害や目覚めの悪さ、日中のだるさなどを感じることがあります。
近視の進行や目の疲れを防止するためには、スマホなどの電子機器の使用時間が長くなり過ぎないよう気を付けるとともに、近くを見る時間をできるだけ減らして、目に負担をかけ過ぎないことが大切です」
Q.スマホやパソコン、タブレットを使うときは、画面からどの程度、目を離すのが望ましいのでしょうか。
川名さん「スマホやタブレットの場合、画面から30センチメートルは離した方がよいとされています。しかし、スマホの画面は小さいため、ついつい目を近づいてしまいがちです。意識的に離して見るようにするか、あるいは近くを見る時間をできるだけ減らすことが有効です。
パソコンの場合、目と画面との距離は40~60センチメートルというのが一般的です。こちらも不便がない程度に画面から目を離すのと、画面を見るときは目線を少し下げるのがおすすめです。パソコンの画面を見るときは上目遣いになりがちなので、まばたきが減ってドライアイの症状が悪化することが知られているからです。目線を下げると、上目遣いのときよりも目を小さく見開くようになるので、その分、まばたきの回数が増え、ドライアイを緩和できます。
いずれにしても、近くを見るときには、目の中の毛様体筋が緊張するため、目をいたわるためにもその時間をできるだけ減らすのが大切です。毛様体筋の緊張を緩和するためにも、画面からできるだけ離れて使いましょう。
近年、『スマホ老眼』という症状も話題になっています。一般的に、老眼は40歳以降に新聞や本が読みにくくなる症状を指しますが、最近は10代であっても、スマホなどで近くを見る時間が長くなり過ぎたために目のピント調節機能がうまく働かなくなり、近くも遠くも見えにくいという状態になることがあります。
スマホを使っていると、楽しくてつい時間を忘れて使用してしまいがちです。そこで、スマホを30分使ったら、20秒でもよいので遠くを見るなど、うまく付き合うのがおすすめです。また、多くのスマホには『スクリーンタイム』という、累計の利用時間を確かめることができる機能があるので、一度使用してみるとよいでしょう。実際に使ってみると、大体の人が予想よりもかなり長い時間、画面を眺めていることが多いです」
Q.スマホやパソコンを長時間使用した場合、どのように目をケアするのが望ましいのでしょうか。「目を温めると効果的」と聞きますが、事実なのでしょうか。
川名さん「一番よいのは『近くを見過ぎないこと』です。昔から、『遠くの森を見ると目が良くなる』といいますが、これは目の毛様体筋がリラックスするためです。毛様体筋は自律神経と同じで、自分の意志で動かせるものではなく自動的に動く筋肉なので、毛様体筋を休めるには、物理的に、近い物をあまり見ないようにして、勝手に毛様体筋が働かないように心掛けないといけません。意識的に休ませることが大切です。
タオルやアイマスクなどで目を温めることも有効です。温めている間は目の血行が良くなりますし、目をつぶれば近くにピントが合わない状態となり、目を休ませることができます。さらに目を温めると、まぶたの中にある『マイボーム腺』という脂を出す場所からよい脂が出るようになります。これにより涙が安定するようになり、ドライアイの予防にもなるので、まさに一石二鳥の方法といえます」
(オトナンサー編集部)
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