立て続けに休職者…”メンタル不調”社員が多い企業、「6つの特徴」とは
適切なメンタルヘルス対策を実施せず、多くの従業員がメンタル不調を訴える企業はいまだ少なくありません。そうした企業の特徴や共通点はどこにあるのか、専門家に聞きました。

「働き方改革」の推進が続く中、従業員が心身ともに健康に働くことのできる環境づくりは、企業にとっての大きな課題です。しかし、適切なメンタルヘルス対策を実施できていない企業も、いまだ少なくないようで、「夫の会社もここ数年、立て続けに休職者が出ている」「メンタル不調になる社員が多い会社には、何か理由があると思う」「そういう会社を見抜くコツが知りたい」といった労働者の声も聞かれます。
メンタル不調の従業員が多い企業の特徴や共通点とは、どのようなものでしょうか。精神保健福祉士・公認心理師・キャリアカウンセラーの小松美智子さんに聞きました。
「心が病気でなければ大丈夫」ではない
Q.そもそも、メンタルヘルス対策とは何でしょうか。
小松さん「メンタルヘルスというと『心の病気』『精神疾患』という限定的なイメージがあるかもしれませんが、『心の健康状態』として広義で捉える必要があります。つまり、『心が病気でなければ大丈夫』ではなく、さまざまな日常生活の場面で、主体性を持って意欲的に臨める心の状態にあるかが問われます。
『自分にとって満たされた心の状態とはどんな状態か』をひもとくことが、メンタルヘルス対策の第一歩です。まずは仕事や家庭の場面で、どんなときに楽しさを感じ、喜びを得て、内面から生き生きとした活力が湧いてくるのか、自分で心の状態を理解する必要があります。楽しさや喜びを感じるためには、その対極にある苦しさや悲しみの感情と向き合う必要があるでしょう。
どのようなモノ、言葉、環境、人と触れ合ったときに自身の思考や感情、身体感覚に変容が起こったのか、もしくは起こらなかったのか。どんな行動をしたのか、もしくはしなかったのか。自己の内界と外界環境の両方へ焦点を当て、意識して捉えることが大切です。メモなどに書き留めて整理すると客観的に捉えられます」
Q.企業にとって「適切なメンタルヘルス対策」とは、どのようなものだとお考えですか。
小松さん「労働契約法で、企業には『安全配慮義務』が課せられ、厚生労働省は『労働者の心の健康の保持増進のための指針』を示しています。この中で、企業が策定すべき『心の健康づくり計画』が定められ、次の4つのメンタルヘルスケアを、計画的かつ継続性を持って行うよう提唱しています」
【(1)セルフケア】
労働者自身が、自身にとってのストレスや得手・不得手を正しく理解し、身体の不調や心のモヤモヤ、意欲低下などが生じた際に、自身で早期に適切な対策を取るようにします。
先述の通り、普段から自分の心と体、環境の変化に意識を向けることが大切です。睡眠、食事、運動の見直しはもちろん、どうしたら回復するのか、安定した状態を継続維持できるのかなど、人によって手法はさまざまです。自分に合った方法を身に付けましょう。
【(2)ラインによるケア】
管理者は、部下の健康状態や労働時間、仕事の量や質を日常的に把握し、部下が心身ともに健康で意欲的に業務に臨めるようマネジメントする必要があります。状態や状況を正しく把握し、よりよい職場にするためには、普段からの良好なコミュニケーションや信頼関係の構築が欠かせません。管理者には、傾聴技術や、相手に合わせた柔軟なコミュニケーション技術の体得が求められます。
【(3)事業場内産業保健スタッフなどによるケア】
職場内にメンタルヘルスの相談室を設けたり、産業医や保健師、精神保健福祉士、カウンセラーなど専任スタッフを配置したりして、ケア対策をします。一定水準の知識と技術を持つ専門家からの支援によって、医学的・心理学的なアプローチから職場の生産性ロスを最小化し、成果を高めることが期待できます。
スタッフは現場との密接な連携が必要です。常勤の専任スタッフがいると、企業内にいるからこそ理解できる、その職場ならではの人間関係、組織・人事労務管理体制、職場の文化・風土に着目したアプローチが可能になるでしょう。
【(4)事業場外資源によるケア】
職場外部の専門的な知識を有する専門機関と連携し、メンタルヘルスケア対策に取り組みます。社外資源は、従業員が安心して利用しやすいというメリットがあります。職場内のスタッフには言いにくいことでも、社外の人だと言えることもあります。主な専門機関には、産業保健総合支援センター、精神保健福祉センターなどがあります。
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