1人暮らしスタートの救世主! 「ジェネリック家電」とは? 「B級家電」とどう違う?
家電量販店に行くと、あまり名前を聞いたことのないメーカーの製品を見ることがあります。「ジェネリック家電」と呼ぶようですが、どのようなものなのでしょうか。業界団体に聞きました。
新生活スタートの時期、1人暮らしを始めるために、家電製品を買いそろえる人も多いのではないでしょうか。家電量販店に行くと、有名メーカーの製品に交って、あまり名前を聞いたことのないメーカーの製品を見ることがあります。これらの製品を「ジェネリック家電」と呼ぶことがあるようです。「ジェネリック」といえば、ジェネリック医薬品がおなじみですが、「ジェネリック家電」とは、どのようなものなのでしょうか。業界団体「一般社団法人ジェネリック家電推進委員会」代表理事の近兼拓史さんに聞きました。
ブランド力ないけど、高品質で安価
Q.そもそもジェネリック家電とは、どういう家電製品を指すのでしょうか。
近兼さん「ジェネリック家電とは、国内大手家電メーカー8社以外の、国内中小優良家電メーカーが製造するジャパンクオリティー(日本標準品質)を持つ家電製品を、主に言います。
ご存じの通り、家電大手8社の製品も、その多くが中国、韓国など海外の工場で製造されています。これらは国産家電メーカー製品として流通していますよね。大切なのは、メード・イン・ジャパン(どこで造られたか)より、ジャパンクオリティーが保証されていることだと思っています。
具体的には、大手家電8社以外の国内メーカーが販売する、ジャパンクオリティーを持つ家電製品が、ジェネリック家電になります。逆に、いくら知名度が高いメーカーの製品であっても、アフターサービス対応が万全でなかったり、ジャパンクオリティーを持っていなかったりすれば、ジェネリック家電とは呼べません」
Q.ジェネリック家電という言葉は、どういう経緯で生まれたのでしょうか。
近兼さん「ジェネリック家電の前に、家電大手8社のことからお話しします。『家電大手8社』という言葉は、1970年以前から全国に自社の販売直営店ネットワークを持っていた家電メーカーを、『大手8社』とメデイアが呼んだことに起因します。その8社の製品を、日本橋(大阪市)や秋葉原(東京都)の家電卸問屋で取り扱うことになったのが、『家電量販店』のルーツです。
それまで国内では、それぞれの家庭にかかりつけの町の電気店があり、その電気店の系列であるメーカー以外の製品を買うことはできませんでした。それを『テレビはパナソニック、ステレオはソニー、エアコンは東芝』と、自由に購入できる家電量販店が登場したのは、家電販売の歴史上、革命的な出来事でした。
しかし、その圧倒的な人気の中で、家電量販店が大手8社以外のメーカー製品は取り扱わない、という暗黙のルールができたとみられます。どれほど優秀な製品を造るメーカーであっても、家電量販店で販売してもらうことができず、行き場を失うことになりました。この家電量販店から漏れ落ちたメーカーと製品が、家電量販店で販売してもらえない『B級家電』と呼ばれるようになったのです。
この漏れ落ちたメーカーや製品には、大手に勝るとも劣らない製品も多数ありました。もちろん箸にも棒にもかからない、『安かろう悪かろう』の製品もあります。これらを乱暴に『大手8社』と『B級家電』とに2分化する風潮に疑問を感じた、私、近兼拓史が、大手8社以外でも優秀優良な中小家電メーカーを『ジェネリック家電』として、B級家電メーカーから切り分け、『大手8社家電』『ジェネリック家電』『B級家電』と、分かりやすく3グループに分けたことから、『ジェネリック家電』は始まります。
2013年4月に、『週刊プレイボーイ』(集英社)誌上で製品の紹介を始め、同年10月には『ジェネリック家電製品大賞』を設立。優秀なジェネリック家電を毎年表彰しています。2015年9月に非営利の業界団体『一般社団法人ジェネリック家電推進委員会』を設立し、この委員会、各メディアと連動して大賞の選定を続けるとともに、ジェネリック家電やジェネリック家電メーカーの認定を行っています。毎月、認定や加盟申請がありますが、製品だけでなく、サービス体制も含め、ジャパンクオリティーレベルに達していないメーカーは加盟をお断りしているのが現状です」
Q.ジェネリック家電の強み、メリットは。
近兼さん「大手8社の製品と比べて、遜色ない性能を持ちつつ、広告費を押さえたり、機能を絞ったりして、安価であることです」
Q.逆にデメリットはないのでしょうか。
近兼さん「ジェネリック家電には、ブランド力がありません。大手メーカー製品を購入する人は、一流品を持っているという満足感があるはずです」
Q.ジェネリック家電と大手メーカー品とで、どちらを選ぶか迷ったときのポイントは。
近兼さん「1万円以下の製品は圧倒的にジェネリックを選ぶべきです。逆に10万円を超えるような長期使用を考えている製品は、大手8社製品がおすすめです。家電量販店で買うなら、大手、ジェネリックにかかわらず、1年間のメーカー保証が付いていますが、2年目以降の修理の場合、最低でも点検料が5000円、修理すれば1万円以上かかる場合が多く、買い換えるという選択肢のほうが多いはずです。
学生さんや単身赴任者など、4年間使えればいい!という買い物なら、迷わずジェネリック家電ですね。浮いたお金で他の生活レベルアップや貯金ができると思います」
Q.ジェネリック家電メーカーとしては、船井電機、山善、オーム電機、ツインバード工業などがあり、アイリスオーヤマもジェネリック家電製品大賞の選考対象になっているようですが、同社は吉沢亮さん出演のCMもあって、大手メーカーに近い存在に見えます。
近兼さん「アイリスオーヤマさんは、売り上げが頭一つ抜けていますが、カテゴリーとしてはジェネリック家電です。現在約8000億円という売り上げは素晴らしいですが、大手で最も売り上げの低いシャープが約2兆円、パナソニックは約7兆円です。全県へのサポートセンター設置もまだですから、準大手と呼べるのはもう少し先になるでしょうね」
Q.ジェネリック家電は今後も増えていくと見込まれますか。
近兼さん「国の医療費削減に貢献しているのが、ジェネリック医薬品です。家計の節約に貢献するのがジェネリック家電です。ジェネリック家電の認定が始まった2013年の市場規模は約7800億円でした。コロナ禍の巣ごもり需要を受け、2021年は過去最高の3兆円を大きく超える売り上げを記録し、庶民生活には欠かせない家電製品ジャンルへと成長しています。今後も、さらに支持層を増やし続けていくと思われます」
(オトナンサー編集部)
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