「プロパンガスは高い」という声もあるのに…都市ガスエリアでプロパンガスを使う理由は?
都市ガスの供給エリアでプロパンガスを使う住宅があるのは、なぜなのでしょうか。考えられる理由について、専門家に聞きました。
住宅でガスを使用するときは。基本的に「都市ガス」か「プロパンガス(LPガス)」のいずれかとなります。国土交通省によると、全国の都市ガスの普及率は約5割(2014年度末時点)で、都市ガスの供給エリアでない地方に加え、都市ガス供給エリアでも、プロパンガスを使用している住宅があります。ネット上では「プロパンガスは高い」といった声も聞かれますが、なぜ、都市ガスエリアでプロパンガスを使っているのでしょうか。また、プロパンガスから都市ガスに切り替えるには、どうすればいいのでしょうか。
事業用不動産の管理などを手掛ける、シェパード(東京都港区)の犬塚康太朗社長に聞きました。
都市ガス用配管、十分に通らず
Q.そもそも、都市ガスとプロパンガスは何が違うのでしょうか。
犬塚さん「ガスの原材料や成分、使用可能な器具(ガスコンロなど)、発熱量に違いがあります。また、ガス漏れをした場合、都市ガスは空気よりも軽いため天井付近にガスがたまりますが、プロパンガスは空気よりも重く、床面近くにガスがたまるため、警報機の取り付け位置もそれぞれ異なります」
Q.都市ガス、プロパンガスのメリット、デメリットについて、教えてください。
犬塚さん「一般的に都市ガスの方がプロパンガスよりも料金が安いです。都市ガスは道路下の配管によって供給されますが、プロパンガスは各住宅に設置されたボンベを通じて供給されるため、どうしてもコストがかかってしまいます。また、地方など都市ガスの供給エリア外の場合、都市ガスを選ぶことはできません。
プロパンガスのメリットは、災害時などに復旧が早いことです。都市ガスと違い、ボンベが壊れたり空になったりしない限り、供給が止まることはないので、復旧がしやすくなっています」
Q.都市部に住んでいると、都市ガスの普及が進んでいるように見えますが、国土交通省によると、全国の都市ガスの普及率は約5割と意外に低い状況です。また、東京23区内でもプロパンガスを使用している住宅があります。なぜでしょうか。
犬塚さん「道路下の都市ガスの配管が十分に通っていないからだと思います。都市ガスを使うためには、自宅前の道路下にガスの配管がなければなりません。配管が通ってない場合は、近くの道路から自宅前まで配管を通す工事をしなければならず、その際の費用は利用者が負担します。ガスの配管を引き込む距離が長いほど、その分費用がかさんでしまうので、初期費用だけでなく、長期的に見てもプロパンガスの方が割安なケースがあります。
また自宅前の道路が私道の場合、その所有者から道路を掘る『掘削承諾』を取らなければならず、所有者からの許可が下りなかったり所有者が不明だったりすると、工事ができません」
Q.では、都市ガスの供給エリアなのにプロパンガスを設置している住宅(戸建て、アパート、マンション)が、都市ガスに切り替えることは可能なのでしょうか。
犬塚さん「都市ガスの供給エリア内であれば、配管工事をすることで切り替えることができます。先述のように、配管工事の費用は利用者が負担しますが、長期的に考えて都市ガスの方が割安なのであれば、切り替えた方がよいと思います」
Q.都市ガスの供給エリアで、プロパンガスから都市ガスに切り替える場合、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。
犬塚さん「一般的に都市ガスのガス管は、1メートル引き込むごとに1万円から2万円の工事費がかかります。自宅前のガスの配管を調べてみないと分かりませんが、配管工事の距離が長くなると、数十万円になることもあり得ます。不動産の購入時に、不動産業者が添付資料として、ガスの配管図を提供することが多いので、購入時の書類を確認すると、おおよその距離が分かると思います」
Q.「プロパンガスは料金が高い」とよく言われます。プロパンガスの利用時に料金を抑える方法はあるのでしょうか。
犬塚さん「プロパンガスは料金が自由化されているため、ガス会社ごとに料金プランが違います。費用が高いと感じるようなら、ガス会社の切り替えを検討することをおすすめします」
(オトナンサー編集部)
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