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広告をスマホで撮影、SNS上に投稿する行為は著作権侵害になるのか?

新聞広告など紙媒体の広告に、人気漫画のキャラクターが登場したとき、SNS上でそれらが拡散することがありますが、著作権侵害にはならないのでしょうか。

広告を勝手にSNS上にアップ、法的問題は?
広告を勝手にSNS上にアップ、法的問題は?

 全国紙の新聞広告など紙媒体の広告に、人気漫画のキャラクターが登場するケースが時たま見られます。さまざまな異なるデザインの広告を掲載し、ファンがそれらの広告をSNS上にアップして拡散することで、より多くの人に広告を見てもらおうとするものです。新聞広告の価値を高める手法として定着してきましたが、著作権について問題になるようなことは聞いたことがありません。許可なく広告をSNS上に投稿することは、著作権法に違反しないのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

宣伝効果の高まりを期待、黙認するケースも

Q.許可なく新聞などの紙媒体の記事をSNSに投稿すると、著作権法に違反するとされています。なぜ、新聞などを購入して所有権を得たはずなのに、違反になるのでしょうか。

牧野さん「新聞などを購入しても、紙媒体の“所有権”を取得しただけであり、記事の“著作権”を購入したわけではないためです。そのため、著作権法で保護されている記事などの著作物(思想・感情の創作的な表現)を権利者の許可なくSNS上に投稿すると、引用など正当な理由がない場合には、原則として著作権(複製権、公衆送信権)侵害となります」

Q.人気アニメのキャラクターが描かれた新聞広告のように、気に入った広告をSNS上に投稿することがよく行われています。許可なく広告をSNS上に投稿することは、著作権法に違反しないのでしょうか。

牧野さん「人気アニメのキャラクターや、新聞広告の内容が著作権法で保護されている著作物(思想・感情の創作的な表現)に当たる場合には、権利者の許可なく広告をSNS上に投稿すると、引用など正当な理由がない場合には、原則として著作権(複製権、公衆送信権)侵害となります。記事と同様の扱いです」

Q.「記事と同様、著作権侵害となる」ということですが、SNS上に投稿することについて、「広告は大丈夫」というような風潮が、世の中にあるように思います。なぜでしょうか。

牧野さん「広告の場合には、SNS上に投稿され拡散すると、宣伝効果がさらに高まることが期待でき、そうしたメリットから、権利者が著作権について黙認する場合があるためだと思います。しかし、法的には、引用など正当な理由がない場合には原則として著作権(複製権、公衆送信権)侵害となります」

Q.「引用など正当な理由がある場合」は、著作権に違反しないとのことですが、この「引用」とは、どのようなことでしょうか。

牧野さん「著作権法では、『公表されている著作物を“引用”して利用できる』(同法32条1項)とありますが、一般的に“引用”の範囲が誤って広く解釈されることが多いのが現状です。本来であれば、次の5要件を満たす必要があり、引用が簡単に認められるものではありません。

(1)公表された著作物であること
(2)引用は自己の著作物が『主役』で、引用される著作物は『脇役』の『主従関係』(3)批判・論評など引用が必要な場合
(4)出典の明示
(5)引用部分を勝手に改変しない

この5要件が必要です」

Q.私たちは、映像や記事、漫画だけではなく、広告についても著作権について意識した方がよいのでしょうか。

牧野さん「映像や記事、漫画の著作権侵害は、最近、頻繁に見聞きするので、一般人の中にも『許可なくSNS上に投稿してはいけない』という認識は広がっていると思います。同様に広告も、映像や記事、漫画の著作権と同じ考え方が適用される可能性があることを知ってもらいたいです」

(オトナンサー編集部)

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牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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