「ピル」は子宮内膜症などの薬なのに“避妊薬”としか認識されていない…本来どんな薬?
「低用量ピル」は子宮内膜症やPMSの治療薬なのに避妊薬としてしか認識されていない、という趣旨の投稿が話題になりました。低用量ピルとは本来どのような薬なのか、医師に聞きました。

SNS上で先日「低用量ピル」の用途が話題となりました。きっかけは「ピルは子宮内膜症やPMS、月経不順の治療薬なのに避妊薬としてしか認識されていない」「男性だけでなく女性にも正しく理解されていないと思う」という趣旨の投稿。これに対し「避妊効果はオプション」「正直、若い頃は知らなかった」など、さまざまな声が上がっていますが、低用量ピルの“本来の”用途とはどのようなものでしょうか。オトナンサー編集部では、医師の尾西芳子さんに聞きました。
女性ホルモンのエストロゲンを抑えた
Q.低用量ピルとはそもそも何でしょうか。
尾西さん「ピルは『卵胞ホルモン(エストロゲン)』『黄体ホルモン(プロゲステロン)』という2つの女性ホルモンを含んだホルモン剤です。その中でも、副作用ができるだけ少なくなるようにエストロゲンの量を抑えたものが低用量ピルと呼ばれます。最近では、エストロゲンの量をさらに抑えた超低用量ピルも出てきています。同じ低用量ピルでも、避妊用に開発されたもの(OC=Oral Contraceptive)と、月経痛や子宮内膜症の治療薬として開発されたもの(LEP=Low dose Estrogen-Progesteron)があり、薬の種類によってホルモンの種類は少しずつ異なりますが作用はとても似ています」
Q.低用量ピルはどのような病気や症状に効果があるのですか。
尾西さん「低用量ピルは、排卵や子宮内膜が厚くなるのを抑えることによって、痛み物質であるプロスタグランジンが過剰に産生されるのを抑え、痛みを軽減する働きをします。そのため生理の量が多い人や生理痛がひどい人に効果があります。また生理痛や下腹痛、性交痛、排便痛などの症状があり、放置すると不妊の原因にもなる子宮内膜症に関して、痛みを軽減するだけでなく病気の悪化も防ぐことができます。保険は適用されませんが、月経周期を一定にするために使用したり、PMSの治療のために処方したりします。また、ピルを内服している人の方が子宮体がんや卵巣がんの発症が少ないことも明らかになっています。日本では内服している人が少ないピルですが、海外には無料で配布されている国もあり、フランスにおける服用率は4割を超えているほど身近な薬です」
Q.低用量ピルを避妊薬として使うようになった経緯はどのようなものでしょうか。
尾西さん「ピルは1960年に初めて避妊薬として誕生しましたが、この時はまだ高用量ピルでした。低用量ピルが出てきたのは1973年のことです。しかし、日本では遅れて1999年に避妊薬として初めて発売されました。というのも、経口避妊薬で簡単に避妊できるとなると風紀が乱れ、性感染症が増加するのではないかという社会的な不安があったからです。その後、ピルには避妊以外の効果があるということで2008年に月経困難症の治療薬として認められました。ちなみに、低用量ピルは避妊薬や治療薬としてありがたい存在ですが、性感染症は予防できません。ピルを飲んでいてもコンドームを使用するなど、自分の体は自分で守りましょう。避妊用のピルも治療用のピルも医師に相談の上、一緒に選んでいくので恥ずかしがらずに婦人科を受診してみてください」
(オトナンサー編集部)
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