オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

飲食店、3年以内の廃業率は70%…それでも芸能人が経営しようとする理由

芸能人が副業で飲食店の経営を始めることがありますが、飲食業の経験が浅くリスクが高いと思います。それでもなぜ、芸能人は、飲食店の経営を始めることが多いのでしょうか。

芸能人が飲食店を経営するのはなぜ?
芸能人が飲食店を経営するのはなぜ?

 芸能人が副業で、飲食店の経営を始めることがあります。しかし、飲食店の経営以外にも、収入を得る手段は他にもいろいろあるはずです。店や企業の経営経験がほとんどない芸能人が飲食店の経営を始めるのは、リスクも高いように思います。それにもかかわらず、なぜ、芸能人は、飲食店の経営を始めることが多いのでしょうか。飲食店コンサルタントの成田良爾さんに聞きました。

節税対策や「名義貸し」も多い

Q.飲食店の経営を順調に進めることは、とても大変だと聞きます。どれほど大変なことなのでしょうか。

成田さん「飲食店の経営を順調に進めることが、とても大変なのは事実です。数字で示すと、飲食店が新規開業して1年以内に廃業する割合は、およそ35~40%、3年以内の廃業率は約70%であり、飲食店100店が開業すれば、3年後に店が残っているのは30店前後というのが現実です。これは、他の業種と比べてもかなり高い廃業率です。飲食店の経営を順調に進めることが、どれほど大変かは、この廃業率を見ても明らかでしょう」

Q.それほど廃業率が高いにもかかわらず、なぜ、芸能人は、リスクの高い飲食店の経営を始めることが多いのでしょうか。

成田さん「飲食店は、『食品衛生責任者』の資格と初期投資の資金があれば、その他には特別な資格や経験がなくても開業できるため、他の業種に比べて参入しやすいことが特徴です。芸能人に飲食店の経営が人気なのも、それが理由かもしれません。

もちろん、純粋に飲食業が大好きで、自分で接客したり料理を作ったりしたくて飲食店を開業する芸能人もいます。しかし、実際には、本業である芸能人としての仕事の節税対策や、サイドビジネスとしての『名義貸し』も多いようです」

Q.「芸能人が経営する店」とうたうことは、飲食店の経営にとってアドバンテージになるのでしょうか。

成田さん「飲食店の経営を順調に進めるためには、『常連客の獲得』が必要不可欠です。一般的に、新規開業した飲食店は、どの店も常連客がゼロの状態からスタートします。常連客になってもらうためには、まず多くの新規顧客に来店してもらい、料理のおいしさや接客の良さを知ってもらわなければなりません。

そうした点を考えると、経営する芸能人の知名度にも左右されますが、『芸能人が経営する店』とうたうことで新規顧客が集まりやすく、常連客が生まれる確率も上がります。多くの飲食店が苦労する開業初期には、大いにアドバンテージとなるでしょう」

Q.サイドビジネスとして「名義貸し」をする芸能人もいるとのことですが、その飲食店で食中毒など問題が起きれば、「名義を貸していただけ」では通用せず、自らの評判も落とすリスクがあると思います。なぜ、中途半端に関わるのでしょうか。

成田さん「名義貸しだけで、芸能人が経営に関わっていない飲食店は、飲食店の経営について経験豊富な外食企業や、飲食店専門のコンサルティング会社が店舗運営していることがほとんどです。そのため、芸能人自身が経営するよりも、失敗するリスクは明らかに少ないでしょう。

芸能人と外食企業や飲食店専門のコンサルティング会社が組むのは、それぞれの得意分野を生かして飲食店の経営を順調に進めるための戦略です。つまり、名義貸しをして『芸能人が経営する店』とうたうことで、多大な宣伝効果を生むと同時に、飲食店の経営のプロが、店舗経営やリスク管理を行うことで、繁盛店にしようとしているのです。

ただし、名義貸しするパートナーを芸能人側が見誤って、店舗で食中毒が起きてしまったり、経営難に陥ったりした例も多々あります。芸能人がどのようなパートナーを選ぶのかにもリスクが伴い、決して楽をしてお金もうけをしているのではありません」

Q.飲食店コンサルタントとして、芸能人にはどういう気持ちで飲食店を経営してほしいですか。

成田さん「一般人が飲食店を経営する主要な目的は、生活のためだと思います。一方、芸能人の場合は、本人が接客をしたい、節税対策のため、サイドビジネスで利益を得るためなど、飲食店を経営する目的が一般人とは少し異なると思います。

とはいえ、『お客さまに喜んでもらいたい』という気持ちは共通するでしょうから、飲食店に関わる芸能人には、手段は違っても、おいしい食事やすてきな接客で『お客さまを幸せにする飲食店』を経営してもらいたいものです」

(オトナンサー編集部)

成田良爾(なりた・りょうじ)

飲食店専門経営コンサルタント

ヴィガーコーポレーション代表取締役。厚生労働省公認レストランサービス技能士(国家資格)、文部科学省後援サービス接遇検定準1級、食生活アドバイザー2級、他。飲食業界25年以上。ミシュランガイド掲載の高級レストランから個人経営の小さな大衆店まで幅広いジャンルの飲食店に携わり、その経験に基づく統計解析および枠にとらわれないアイデアで多くの赤字店を黒字化させてきた実績を持つ。「100年続く店づくり」をモットーに、次世代育成や飲食業の働き方改革などにも力を入れており、食文化普及の他、職業訓練校講師(フードビジネス科)や子育て女性就職支援事業講師なども歴任。現在も多くの飲食店経営者のサポートを手掛ける。飲食店専門のコンサルティング「オフィスヴィガー」HP(http://with-vigor.com/)。

コメント