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一般客がほとんどなのに、「スーパー」ではなく「業務用スーパー」と名乗り続ける理由

テレビ番組でよく取り上げられる「業務用スーパー」ですが、来店するのは一般客がほとんどです。それなのに、なぜ、一般の「スーパー」ではなく、「業務用スーパー」と名乗るのでしょうか。

業務用スーパーと一般的なスーパーの違いは?
業務用スーパーと一般的なスーパーの違いは?

 最近、テレビ番組で「業務用スーパー」がよく取り上げられます。そのネーミングから、大容量である業務用サイズの食品がメインで、飲食店関係の客を対象にしたスーパーだと思われがちですが、通常サイズの商品や肉、野菜などの生鮮食品も陳列され、むしろ一般客の方が多いように思います。そのため、「業務用スーパー」と名乗りつつも、低価格での販売を“売り”にするスーパーとの違いが、あまりないように思えてなりません。来店するのは一般客がほとんどなのに、なぜ、「業務用スーパー」と名乗るのでしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

“お得感”のブランドイメージ保持が目的

Q.そもそも「業務用スーパー」は、どのような経緯で誕生したのでしょうか。

大庭さん「飲食店などの事業者は、1営業日あたりの食材などの消費量が、一般家庭よりもかなり多いため、通常のスーパーで販売されている商品では、使いづらいという特徴があります。そのため、従来は食材などの調達を、市場への買い出しや卸売業者を通じた仕入れで賄うことが一般的でした。

しかし、(1)市場や卸売業者は、副菜や調味料などを取り扱っていないことが多い(2)市場は定休日があり、仕入れができない日が発生する(3)卸売業者から仕入れる場合、商品を手に取って選べない(4)卸売業者から仕入れる場合、大容量でしか対応しないことが多い─というデメリットも存在しました。

そうしたことから、『市場や卸売業者が取り扱わない商品を、いつでも、直接、まとまった量で買うことのできる』という利便性を提供する目的で、『業務用スーパー』が誕生しました」

Q,以前は飲食店関係の客だけで、一般客は商品を購入できなかったのですか。

大庭さん「もともと、『一般客は業務用スーパーを利用できない』という決まりはありません。ただし、業務用スーパーは業務用を想定した販売です。商品の分量が通常のスーパーで売られている商品の数倍になることが多く、個人では使い切れない分量であるため、一般客が足を運ぶことが少なかったのが実情だったのではないでしょうか」

Q.多くの一般客が訪れるようになったのは、どのようなことがきっかけですか。

大庭さん「業務用スーパーの草分け的存在である神戸物産(兵庫県加古川市)が運営する『業務スーパー』の出店数が、飛躍的に増加した2010年ごろから、一般客に注目されるようになったと思います。品ぞろえが豊富で、通常のスーパーで売られている分量で比較すると値段が安いこともあり、知り合いの一般客同士で共同購入した商品を分け合う光景も見られました」

Q.来店するのは一般客がほとんどなのに、なぜ、「業務用スーパー」と名乗るのでしょうか。通常の「スーパー」では、不都合があるのでしょうか。

大庭さん「業務用スーパーには、『通常のスーパーよりも安く商品が売られている』『商品1個あたりの分量が多い』というように、お得感が得られるイメージが定着しています。つまり、これらのお得感を重要視する消費者にとっては、大きなブランド力となるため、一般客相手の商売であっても通常の『スーパー』ではなく、あえて『業務用スーパー』と名乗っているのです」

Q.低価格での販売を“売り”にするスーパーと、業務用スーパーの違いが分かりません。違いは何ですか。

大庭さん「通常のスーパーの中にも、宣伝広告費を抑える、大量仕入れを行うなどの工夫で低価格を実現している店もあります。それらの店と業務用スーパーでは、(1)生鮮食料品の取り扱い(2)売り場づくり(3)商品1個あたりの分量─に違いがあります。

低価格を売りにしたスーパーでは、生鮮食料品を豊富に取り扱っていますが、業務用スーパーでは生鮮食料品を取り扱わない店が多いです。もともと、飲食店などの事業者が市場や卸売業者からは手に入れにくい商品を提供するという趣旨で誕生したことの名残だと考えられます。

また、低価格を売りにしたスーパーの売り場は、購買の動線を意識した売り場づくりが行われており、商品も棚にきれいに陳列されていますが、業務用スーパーでは、商品の詰まった段ボールケースがそのまま置かれているなど、購買の動線を意識しない無機質な売り場となっています。売り場づくりにコストをかけないことでより安く売るという考えによるものです。

商品1個あたりの分量は、先述したように、業務用スーパーは通常のスーパーと比較して多いという特徴があります」

Q.通常のスーパーと業務用スーパーを、私たち消費者はどのように使い分けて買い物をするのが、賢いやり方ですか。

大庭さん「例えば、賞味期限の長い商品や冷凍保存できる商品は、業務用スーパーで大容量の商品を購入した後に小分けして使うことで、その都度、通常のスーパーで購入するよりも得になります。

また、うどんやそばなどのゆでた麺や、豆腐などの商品は、業務用でも通常のスーパーで売られているものとサイズは同じであり、同じサイズのものを安く買うことができます。そのような商品は、業務用スーパーで買うようにすることで、家計を節約できます」

(オトナンサー編集部)

大庭真一郎(おおば・しんいちろう)

中小企業診断士、社会保険労務士

東京都出身。東京理科大学卒業後、企業勤務を経て、1995年4月に大庭経営労務相談所を設立。「支援企業のペースで共に行動を」をモットーに、関西地区を中心に企業に対する経営支援業務を展開。支援実績多数。以下のポリシーを持って、中堅・中小企業に対する支援を行っている。(1)相談企業の実情、特性に配慮した上で、相談企業のペースで改革を進めること(2)相談企業が主体的に実践できる環境をつくりながら、改革を進めること(3)従業員の理解や協力を得られるように改革を進めること(4)相談企業に対して、理論より行動重視という考えに基づき、レスポンスを早めること。大庭経営労務相談所(https://ooba-keieiroumu.jimdo.com/)。

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