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親は「きょうだいげんか」の仲裁をすべきか? すべきでないか?

小さな子ども同士の「きょうだいげんか」は、どの家庭でも起きることですが、親が仲裁のために介入した方がよいのか悩みどころです。家庭で実践している「きょうだいげんか」へのアプローチを聞きました。

きょうだいげんか、親はどうする?
きょうだいげんか、親はどうする?

 小さな子どもの兄弟や姉妹がいる家庭では、おもちゃの取り合いや、おやつの分量が兄弟で違うなど、ささいなことから“きょうだいげんか”が勃発します。こうしたきょうだいげんかが起きたとき、「原則的に親は介入しない方がいい」とされていますが、目の前でつかみ合いのけんかが起きていたり、毎日けんかを目の当たりにさせられたりしていると、親としてはつい止めに入りたくなるものです。親の立ち位置、けんかの止め方、きょうだいのなだめ方など、家庭で実践しているアプローチを聞きました。

「お姉ちゃんなんだから」はやめる

 5歳の姉と2歳の弟、2人の子育て中のAさん(34歳女性)は、自分の子ども時代のきょうだいげんかを振り返り、「これだけは決してしないでおこう」と心に決めていることがあります。

「私が一番上で、下に弟がいました。けんかをよくしましたが、『お姉ちゃんなんだから』とよく親に叱られるのが、とても悲しく、理不尽に感じたのを覚えています。『けんかの原因をつくっているのは弟なのに、なぜ私ばかり怒られるの?』と思っていました。

ですので、自分の子どもにそうした思いをさせないように、『お姉ちゃんなんだから』という叱り方はやめようと決めています」(Aさん)

 しかし、なかなか思う通りにはいかないようです。

「弟は、年齢的に仕方がないのかもしれませんが、例えば『お姉ちゃんのおもちゃを横取りしたらいけない』と注意しても直らず、横取りを繰り返します。

姉の手前、一応、弟を注意しますが、弟からおもちゃを取り上げると、激しく泣かれるのが目に見えています。姉に『別の遊びをしようか』と言って気持ちを切り替えてもらうようにしていますが、切り替えがうまくいくかどうかは、半々です。

姉に『我慢させられることばっかりで嫌だね。偉いよ』と声を掛けていますが、いつもたくさん我慢させてしまっていることが申し訳ないです」

 2~3歳の子どもは、まだ行動を理性で抑えることが難しく、頭ごなしに怒るのはあまり効果的ではないようです。一方、5歳前後になると、ある程度感情がコントロールでき、言葉でコミュニケーションが取れるようになります。

 そうしたことから、親がけんかに介入する際、5歳前後の子どもに対して「お姉ちゃん(お兄ちゃん)なんだから我慢しなさい」と言うのは、あまり好ましくないようです。なぜなら、理不尽さを感じ、それが繰り返されることで『自分は愛されていない』と思うようになるリスクがあるからです。

 Aさんのようなケースでは、姉の言い分をきちんと聞いて理解を示し、よくなかった部分(例えば「相手をたたく」など)を注意するのがいいようです。

手が出るまでは止めない

 年子(5歳と6歳)の男の子がいるBさん(43歳男性)の場合、きょうだいげんかへの親の関わり方はシンプルです。

「年が近いのでライバル心が強いのか、しょっちゅうけんかをしていますが、『手が出たら止める。それまでは止めない』と決めています。『手を出すことがよくないというのを教えるため』というのが主な理由です。

止めた後、けんかの理由を聞きます。原因をつくるのはどちらかですが、どちらか一方が100パーセント悪いということはほとんどないので、お互いの悪い部分を確認し注意して終わりです。“けんか両成敗”というやつでしょうか」(Bさん)

 きょうだいげんかに親が介入する際、親が審判役になって「こっちが悪い」と裁定を下すのは、あまりよくないようです。「悪い」と判断された方の遺恨が、後々にまで残り積み重なっていくことで、さらなるけんかの誘発や、親子関係が悪化する可能性があるからだそうです。

 そうした点でBさんの“両成敗”は、勝ち負けをつくらない有効な介入法といえるでしょう。また、叱るだけでなく、「双方の言い分を聞いて、それぞれに理解を示す」といったアプローチも、子どもの心をすっきりさせる効果があります。

 なお、手が出るけんかになっても「力加減を学ばせるために、よほど激しくならない限り止めない」という考え方もあるようです。

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武藤弘樹(むとう・こうき)

フリーライター

早稲田大学第一文学部卒。広告代理店社員、トラック運転手、築地市場内の魚介類卸売店勤務などさまざまな職歴を重ね、現在はライターとミュージシャンとして活動。1児の父で、溺愛しすぎている飼い猫とは、ほぼ共依存の関係にあるが本来は犬派。趣味はゲームと人間観察。

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