ロマンチック婚? 割り切り婚? どちらが幸せになれるのか問題
相手へのときめきを重視する「ロマンチック婚」か、恋愛感情よりも経済力を重視する「割り切り婚」か―。両者の実例をもとに、「どちらがより幸せになれるのか」を考えてみます。

「恋愛の延長線上に結婚がある?」「恋人と結婚相手は違う人を選びたい?」…私はこの質問を、たくさんの人に問い掛けてきました。ロマンチストタイプの人はもちろん、「愛する人とそのまま結婚するのが理想」と答えます。ここで、「愛した人が、実は仕事していなかったらどうする? 大きな借金が発覚したらどうする?」と畳み掛けると、「他の堅実な人を探す」と。負の要素が一つでもあると揺らぐようでは、その相手と結婚してはいけません。
「恋愛はときめく刺激がある方がいい。結婚相手には安心感と強さを求めたい。でも、熟年になってもずっとときめいていたい」という意見を耳にしますが、そんな都合のいい相手がいるわけはありません。私はセックスレス改善を専門にしていますが、結婚後に安心・安定すると、ときめき感は激減し、レスに突入するカップルが増加するというのは周知の事実です。レスでもよしとする2人なら問題なしですが、レスは嫌という人は相当数います。
大好きな相手との結婚か、それとも、「大して好きではないけれど、生活はやっていけそうだから」という視点での結婚か。さあ、どちらがよいのでしょうか。今回は、熱烈な恋愛相手と結婚した女性、そして、結婚相手を恋愛感情抜きで選んだ女性、この両者のパターンを見ていきます。
4年かけた略奪愛の行く末
雪さん(38歳、仮名)は敏則さん(50歳、同)と職場で出会いました。派遣社員として勤めた商社の上司が敏則さんで、当時、彼には同い年で専業主婦の妻がいました。2人の間に子どもはいません。
雪さんと敏則さんが不倫関係になるのに、時間はかかりませんでした。当時30歳だった雪さんには同じ年齢の彼がいましたが、精神的に幼い彼と敏則さんを比較してしまい、大人の魅力と包容力のある敏則さんにのめり込んでいきました。
しかし敏則さんは、「離婚すれば妻が路頭に迷う」という思いと、不貞行為への後ろめたさから離婚の決断ができません。一方の雪さんは、友人たちから「あんな年上の人と結婚すると、子どもが大学に行く頃にはおじいちゃんになってるよ」「結婚したらすぐ介護になっちゃうかも」と言われ、同世代の彼との結婚を推されましたが、「絶対に敏則さんがいい」と聞く耳持たず。同世代の彼と、きっぱり別れました。
敏則さんへのプロポーズは雪さんからです。とはいえ、既婚者へのプロポーズです。その後、雪さんは4年もの間、辛抱強く待ち続け、ついに敏則さんが雪さんのことを妻に打ち明ける日が来ました。相当額の慰謝料と、都内の一軒家を奥さんに渡すという条件で離婚が成立し、晴れて雪さんは敏則さんと結婚することになりました。渡すものが多かったためか、妻側はすんなり受け入れたそうです。話し合いの様子を聞くに、「奥さんは『商社マンと結婚すれば、ずっと生活費を得ることができると思って結婚した。あなたのことは特に好きではなかった』と言った」とのこと。それが奥さんの本心かどうかは分かりませんが。
安定した結婚相手を選んだのが奥さん。熱烈に恋した相手を、踏ん張り続けて勝ち取ったのが雪さん。修羅場にならなかった不倫事例として、私のノートに書き留めておきました。
結婚するなら年収1000万円以上
「令和の時代に『高身長・高収入・高学歴』にこだわる人はいない。2人で共に働いて家事分担しながら支え合っていくのが主流だ」という風潮にはなっているものの、年収にこだわる女性はいまだに存在します。
一般社団法人日本リレーションシップ協会が2021年12月、25歳以上50歳未満の女性414人を対象に行った調査によると、結婚相手に求める条件の上位3つは、既婚者(232人)も未婚者(182人)も、「経済力」「価値観」「人柄」でした。既婚者の回答では、1位の「経済力」は63.4%、2位の「価値観」は38.4%と大差を付けています(未婚者は63.7%と48.4%)。一方、未婚者がパートナーに求める年収は「600万以上800万円未満」と、日本人男性の平均を上回る年収を希望しています。昔も今も、求めるものは経済力なのです。
友加里さん(29歳、仮名)は学生時代から、高身長で顔立ちが整った男性が大好き。ただ、そんな男性は稼ぐ力がないか、早々に結婚している人が多いと感じていました。そこで、「思う存分、高身長のイケメンと恋愛を楽しんだら、28歳で本格的に婚活をスタートさせて、年収1000万円以上の男性と結婚する」と明確な目標設定をしました。
複数の恋愛をし、いよいよ28歳を迎え、婚活アプリで結婚相手を探した友加里さん。マッチングした男性は年収縛り一択です。年齢や離婚歴、趣味など関係なく次々と出会い、数人に絞り込みました。結果、妻に不倫されて離婚したシングルファーザーと結婚することに決めました。
「年収が高いだけでなく家も持っているし、まだ息子は2歳で小さいからかわいいし、何より彼がすごく優しい。何でも言うことを聞いてくれる。ちょっとおなかが出ていて、顔は全く好みじゃないので肉体関係は嫌ですけど、結婚すればセックスレス夫婦なんて当たり前だし、何とかなると思います。昨年まで恋愛を楽しんだからもういいです」
私はこれを「割り切り婚」と名付けました。友加里さんの恋愛遍歴を知る友人たちは彼女の結婚後を心配していますが、本人はどこ吹く風です。
自分で決めたことを徹底して貫いた友加里さん。強い意志のもと、年月をかけて結婚にたどり着いた雪さん。2組とも、今のところ順調なようです。自分の結婚観をとことん深掘りし、ぶれない意志を持つのであれば、ロマンチック婚でも、割り切り婚でも、幸せな未来が待っていることでしょう。
(「恋人・夫婦仲相談所」所長 三松真由美)
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