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「早生まれの子どもは不利なことが多い」のは本当か メリットは存在しない?

1月1日から4月1日に生まれた「早生まれ」の子ども。さまざまな側面から、「不利」だといわれることもあるようですが、本当なのでしょうか。

早生まれの子どもは不利?
早生まれの子どもは不利?

 春までに出産を控えている人もいると思いますが、一般的に、1月1日から4月1日に生まれた子どもは「早生まれ」と呼ばれます。この早生まれについては、「発達の度合い」「保育園の入園申請」などで不利になるとされ、「早生まれは損」と考える人も少なからずいるようですが、ネット上では「早生まれ特有のメリットもあるのでは?」「早生まれの子を育てるときのポイントは?」といった疑問の声や「『どうして、早生まれにしたの?』と言われてモヤッとしたことがある」という本音もあります。

「早生まれの子どもは不利なことが多い」というのは本当なのでしょうか。子育てアドバイザーの佐藤めぐみさんに聞きました。

身体面・心理面で差が出やすいものの…

Q.一般的に、早生まれの子どもには、どのような特徴がみられるのでしょうか。

佐藤さん「人間は生まれてから1歳になるまでの1年で、身長は約1.5倍近く、体重に至っては2倍以上になるのが一般的な成長です。また、その成長に伴って、寝返りやハイハイ、歩行といった身体機能も備わってきますし、心理面の発達に関係する認知機能の成長も月ごとに目覚ましく変化していきます。よって、身体面・心理面において、年齢が低ければ低いほど、早生まれの子と遅生まれの子の差が出やすく、同じ年度に生まれた子どもの中では、早生まれの方が体が小さい傾向があります。

また、制度面について悩み事になりやすいのが、0歳で保育園に入れたい場合です。0歳児クラスは1歳児クラスよりは競争が激しくないため、その枠を狙いたいご家庭もあるかと思いますが、早生まれの場合、0歳児クラスの4月入園に応募したくとも既に締め切りが終わっていたり、生後の日数(生後57日以上、半年以上など)が条件を満たさずに申し込めなかったりして、競争の高い1歳児クラスに応募しなくてはいけないケースもみられます」

Q.「早生まれの子には不利なことが多い」という声が少なからずあるようですが、実際のところについて、さらに詳しく教えてください。

佐藤さん「早生まれについての心配は『学年』という区切りが発生するときに起きやすいものです。先述の保育園問題は0歳でしたが、幼稚園や小学校のような仕組みに入ると『1学年』という区切りが明確になるため、早生まれを気にする人は多くなります。このようなとき、欧米には『レッドシャーティング』という仕組みがあります。

これは学年を1年落として教育を受ける方法です。そうすることで、学年の中で一番年上になるわけです。しかし、学年で年長になることが実際に優位になるかというと、そうでもないということが諸外国の調査でも出ています。例えば、ノルウェーの調査で18歳になった時点の知能指数(IQ)を調べると、1年遅らせて教育を受けた子どもたちのIQはそのクラスメートと比べても著しく低かったのだそうです。

さらに、別の研究では、自分よりも月齢が高い子たちと同じ環境に身を置いた場合のポジティブな効果も報告されています。月齢での差がありながらも仲間に追いつくために努力する中で、結果的にクラスメートを上回る結果をもたらしたのだそうです。そのため、幼少期の体の大きさといった避けられない不利さはある一方で、自分が置かれた環境の中で伸びていくことも事実といえます」

Q.一方で、早生まれ特有の「メリット」といえるものはあるのでしょうか。

佐藤さん「先述の研究が示唆していますが、人間は置かれた環境に染まっていくことが多いものです。早生まれの子は小さいうちから、みんなよりも頑張らなくてはいけない場面があったり、努力をすることで追いつく経験を多くしていたりする傾向があるので、それが長い目で見るとメリットにつながると思います。

育児相談などで受けるお悩みを見ても、努力というのは一朝一夕で身に付くものではないと感じるので、小さいうちは気苦労も多いと思いますが、長期的に見れば、努力する習慣を得るのは大きな収穫といえます」

Q.早生まれの子どもを育てるとき、特に意識するとよいポイントはありますか。

佐藤さん「早生まれであることを気にするのは子ども自身よりも親の方です。もちろん、わが子が心配だから気になってしまうのですが、お子さんに対し、『早生まれは損』というようなことを刷り込んでしまうと、『どうせやっても無駄だ』『早生まれだからできない』というような思い込みを持つようになり、やる前から諦めてしまいかねません。

これは早生まれに限らずいえることですが、子育てにおいては親がいったん、『できていないことを拾う目モード』になると、子どものダメなところばかりが目につき、さらに、それができている子と比べてしまいがちです。大事なのはその子の中の成長なので『昨日、できていなかったけれど、今日、ちょっとできるようになったこと』など“少しの進歩”を拾うことを意識してみてください。見る角度を変えることで、自然とまなざしや声掛けまでもが変わってきます」

Q.早生まれの子と遅生まれの子の差がなくなってくるのは、一般的に、いつごろなのでしょうか。

佐藤さん「早生まれの悩みは小さい頃ほど多く、小学校の低学年でもまだ聞くものです。しかし、それ以降だんだんと減ることからも、小学校の中~高学年というのが平均的なところではないでしょうか。ただ、体格を見ると、中学校時代に成長期を迎える子も多いので、もし、早生まれで、かつ、成長のピークがまだ来ていない場合は、クラスメートとの体格差を感じるかもしれません」

Q.早生まれの子を持つ親の中には「どうして、早生まれにしたの?」などと言われて、モヤモヤした経験がある人もいるようです。早生まれと遅生まれを巡る親たちの思いやコミュニケーションについて、メッセージをお願いします。

佐藤さん「『どうして、早生まれにしたの?』とはずいぶん直球というか、品位に欠ける話に聞こえますが、中にはそういう人もいるのですね。もし、そのように言われたことで思い詰めてしまって、お子さんを言葉で強く傷つけてしまうことがあれば、それこそ、早生まれがデメリットになってしまい、本当にもったいないです。

早生まれというのは『学年』という区切りが存在する期間の悩みであり、大人になれば、年の違う先輩や後輩に囲まれるのが普通です。むしろ、同じ職場に同学年の仕事仲間がいることの方が珍しいですよね。ですから、もし、周囲に心ない一言を言われたとしても『今は学年の枠があるからだ』と捉えてほしいと思います。

あとは『早生まれは親の方が気にしてしまいがち』という事実を踏まえ、独り立ちするまでに、本人に余計な劣等感やネガティブな自己評価を植え付けないことがとても大事だと思います」

(オトナンサー編集部)

佐藤めぐみ(さとう・めぐみ)

公認心理師(児童心理専門)

ポジティブ育児研究所代表。育児相談室「ポジカフェ」主宰。英レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。現在は、ポジティブ育児研究所でのママ向けの心理学講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポートする活動をしている。著書に「子育て心理学のプロが教える 輝くママの習慣」(あさ出版)など。All About「子育て」ガイド(https://allabout.co.jp/gm/gp/1109/)を務めている。公式サイト(https://megumi-sato.com/)。

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