ペットボトルのお茶、「195ミリリットル」はなぜ人気になった? メーカーに聞く
定番サイズの半分以下である「195ミリリットル」のお茶飲料が売れています。その要因について、メーカーに聞きました。
お茶のペットボトル飲料は、500ミリリットルを超えるサイズの商品が定番となっています。日頃から、お茶を多く飲む人にとってはお得といえるでしょう。ところが、新型コロナウイルスの流行が始まった2020年以降、定番サイズの半分以下である「195ミリリットル」の商品が売れるようになったそうです。なぜ今、小容量サイズのお茶飲料に人気が集まっているのでしょうか。飲料メーカー2社に聞きました。
来客向けのお茶として人気
まずは、お茶ブランド「伊右衛門(いえもん)」を展開するサントリー食品インターナショナル(東京都港区)ブランド開発事業部の多田誠司部長に聞きました。同社は2019年2月から、195ミリリットルのお茶飲料「お茶、どうぞ。」を販売しています。
Q.「お茶、どうぞ。」を開発した狙いについて、教えてください。なぜ、サイズを195ミリリットルに設定したのでしょうか。
多田さん「企業が来客にお茶を出す際の労力を軽減するお手伝いがしたいと考えたからです。従来、来客時には社内にいる人が急須や湯飲み、グラスなどを使い、客にお茶を出すケースが多いと思いますが、その場合、業務を一時的に止めなければなりませんし、食器類の後片付けや洗浄も大変です。そこで、『来客にすぐ提供でき、後片付けも楽なペットボトル飲料』をイメージし、開発を始めました。
サイズを195ミリリットルに設定したのは、飲み切りや持ち帰りを想定したからです。例えば、来客に500ミリリットルのペットボトル飲料を提供しても飲み切れませんし、持ち帰ろうと思ってもかさばるので不便です。195ミリリットルであれば、その場で無理なく飲み切ることができますし、持ち帰る場合でも、かばんにきれいに収まります」
Q.飲み切りや持ち帰りを想定したのであれば、既存商品の小容量サイズを開発してもよかったのではないでしょうか。
多田さん「伊右衛門の既存商品をただ小さくしただけでは、お客さまが物足りなさを感じる可能性もあります。そこで、小さいサイズでも、飲み切ったときに満足していただくために、『お茶、どうぞ。』は伊右衛門の他の既存商品よりも味を濃くしています」
Q.売れ行きは。
多田さん「2019年2月に販売して以降、当社の予想以上に売り上げを伸ばしています。この商品は法人向けの通販サイト『アスクル』でのみ、取り扱っており、コンビニやスーパーなどの店舗では一切販売していませんが、2021年(1月~11月)の出荷本数は前年同期比の約1.8倍となっているほか、販売を開始した2019年(2月~12月で計算)の約4倍に増えました。売り上げが拡大している主な理由は、新型コロナウイルスの影響で衛生意識が高まったためだと分析しています。
急須でお茶を入れた場合、湯飲みへの接触機会が増えるほか、お茶が外気にさらされるため、衛生的にあまりよろしくありません。一方、ペットボトル飲料であれば、接触機会は減りますし、中身が密閉されているので、安心感があります。車の販売店や不動産会社など、客にお茶を出す機会が多い接客業の企業が購入するケースが非常に増えています」
Q.ところで、売り上げが伸びているにもかかわらず、なぜ、一般向けに販売しないのでしょうか。何かメリットがあるのですか。
多田さん「先述のように、法人向けに開発した商品だからです。今後も一般向けに販売する予定はありません。ありがたいことに『この商品をもらって飲んでみたが、どこに売っているのか?』といった問い合わせが毎週のように当社に寄せられますが、『法人向けの商品なので、店舗では販売していません』と返答しています。
一般向けに販売しないメリットとしては、店舗で見掛けない商品なので、お客さま同士のコミュニケーションツールにもなることなどが挙げられます。例えば、来客時に初対面の人に会うときはお互いに緊張することもあるかもしれませんが、そんなとき、『お茶、どうぞ。』を出せば、初めて見た相手は『何だこれ?』『サイズが小さい』と思いますし、それを機に会話が始まることもあるでしょう」
Q.今後、新型コロナウイルスが収束した場合、商品の売り上げに影響はあるのでしょうか。
多田さん「新型コロナウイルスが収束しても、売り上げが大きく下がることはないと思います。衛生意識はすぐに下がらないと思いますし、小容量のペットボトル飲料に一定の需要があると分かったからです。例えば、企業の中には来客用だけではなく、社内での会議時や飲食時に出席者に提供する目的で購入するケースも増えています」
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