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年収158.8万円未満世帯、子の大学進学望むのは25% 経済と学力格差、どうする?

大学入試改革など、高等教育を中心にしたさまざまな問題について、教育ジャーナリストである筆者が解説します。

「子どもの貧困」は教育にも影響
「子どもの貧困」は教育にも影響

 新型コロナウイルス感染症の影響下で生活する「ウィズコロナ」も3年目に入り、オミクロン株の出現で、さらなる長期化が懸念されています。昨年のユーキャン新語・流行語大賞では、生まれる家庭によって当たり外れがある「親ガチャ」がトップテンに入り、家事や家族の世話などを日常的に行う「ヤングケアラー」も候補の30語にノミネートされました。

 家庭の経済格差の広がりとともに、貧困家庭に生まれた子どもが社会人になっても貧困状態に陥る「貧困の連鎖」が進みかねず、そこにコロナ禍が追い打ちをかけています。子どもの貧困と教育費の問題を、どう考えればいいのでしょうか。

高校から大学まで942.5万円

「国の教育ローン」を取り扱う日本政策金融公庫は毎年、高校生以上の子どもを持つ保護者を対象にした「教育費負担の実態調査」を行っています。昨年12月20日に公表された2021年度(10月、インターネットで実施)の結果によると、子ども1人が高校入学から大学卒業までに掛かる費用は、平均で942.5万円でした。前年度に比べ、22.6万円減少したとはいえ、相当な負担です。

 世帯年収に占める在学費用の割合は平均で14.9%ですが、年収800万円以上の世帯が11.6%にとどまるのに対して、200万円以上400万円未満の世帯では26.7%です。2020年度から、高等教育の無償化(修学支援新制度)が始まったことも影響して、前年度の31.7%から5.0ポイント減少しましたが、それでも、低所得者層が年収の4分の1を子どもの教育費に充てるのは大変なことです。

 新型コロナの影響について尋ねると「進学をあきらめた(または、在学中の学校を退学・休学した)」が3.3ポイント増の12.0%、「学校を変更した」が6.9ポイント増の21.5%になりました。

望む進学先も左右

 コロナ禍も深刻ではありますが、そもそも最初から、大学進学を諦めてしまっている子どももいます。貧困状態に置かれた家庭の子です。内閣府は昨年12月24日、子どもの貧困に関して初めて行った実態調査(2021年2~3月、中学2年生とその保護者5000組を対象に郵送で実施)の分析報告書を公表しました。

 有効回答2715組のうち、年収が158.8万円に満たない「相対的貧困」にある世帯は12.9%でした。現在の生活が「苦しい」「とても苦しい」と回答した世帯は全体で25.3%ですが、相対的貧困世帯では57.1%と半数以上を占めます。「ひとり親世帯」全体では51.8%、「母子世帯」に絞ると53.3%になります。

 食料や衣服が買えなかったり、公共料金の支払いも滞ったりする状況では、子どもの進学を検討することはもちろん、構っている余裕すらない場合も少なくありません。子どもに望む学校段階が「大学またはそれ以上」と回答したのは全体で50.1%ですが、相対的貧困世帯では25.9%と、ほぼ半分。ひとり親世帯では29.8%、母子世帯では32.2%です。

「学校の授業以外では勉強はしない」との回答もそれぞれ、4.9%、12.3%、10.7%、9.6%でした。

小中学生から学力に影響

 既に小中学校の段階から、世帯収入が多いほど成績が高くなることが、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の分析結果から明らかになっています。2021年度調査では、家にある本(雑誌、新聞、教科書を除く)の冊数が「0~10冊」という回答が小学生で11.0%、中学生で14.4%あり、やはり、冊数が多くなるほど成績も高くなっています。

 こうした、家庭の「社会経済的背景(SES)」「文化資本」の違いで、子どもが「親ガチャ」状態に置かれるわけです。ますます、格差拡大が懸念される中、子どもの貧困対策はもとより、家庭・地域格差を乗り越えて、学力を高める学校(「力のある学校」「効果のある学校」)づくりを進めなければなりません。

 昨年12月21日には、2023年度にも創設される「こども家庭庁」の基本方針も閣議決定されましたが、単なる司令塔ではなく、有効な手だてを講じることを期待します。

(教育ジャーナリスト 渡辺敦司)

渡辺敦司(わたなべ・あつし)

教育ジャーナリスト

1964年、北海道生まれ、横浜国立大学教育学部卒。日本教育新聞記者(旧文部省など担当)を経て1998年より現職。教育専門誌・サイトを中心に取材・執筆多数。

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