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グッズを母親に無断で処分された中学生ラブライバーに共感の声「家族でも犯罪」、親の法的責任は?

大量のグッズであふれた部屋をよく思っていなかった母親に、グッズを無断で処分されてしまった、という趣旨の投稿が話題に。このようなケースで、親の法的責任を問うことはできるのでしょうか。

母親が無断でお気に入りのグッズを処分して…

 SNS上で先日「母親にコレクショングッズをすべて処分された」という、女子中学生の投稿が大きな話題となりました。投稿者が体調を崩して休んでいた時、部屋にあった「ラブライブ!」のグッズを母親が勝手に処分。母親は普段から大量のグッズであふれた部屋をよく思っていなかったらしく、翌朝「返してほしければ私の言うことを素直に聞くんだね」と言われたそうです。これに対し「先に警告するならまだしも無断はひどい」「また1から集めるのどれだけ大変だと思ってるんだ」「こういうのは家族間でも犯罪になるのでは?」など、さまざまな声が上がっています。

 こうしたケースで、子どものグッズを無断で処分した親は法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。オトナンサー編集部では、グラディアトル法律事務所の刈谷龍太弁護士に聞きました。

「器物損壊罪」が成立する可能性

Q.他人の所有物を本人の許可なく勝手に処分した場合、どのような罪に問われる可能性がありますか。それは親子間や家族間でも同様でしょうか。

刈谷さん「他人の所有物を本人の許可なく勝手に処分した場合、器物損壊罪(刑法261条)が成立する可能性があります。器物損壊罪というと『物を壊した』時の犯罪であるかのように受け取られがちですが、ここでいう『損壊』とは、物理的な損壊以外に物の効用を失わせる行為を広く含むと解釈されています。そして、コレクショングッズは集めること以外にも、見たり聞いたり、場合によっては触ったりするなどして楽しむことが通常ですから、隠すことによってそうした行為をできなくすることは、『損壊』にあたると言って差しつかえないように思われます。ただし、今回のケースはあくまでも家庭内での出来事であり、母親も教育の一環として一時的に隠しているに過ぎないため、教育の方法として社会的に許されない行為とまでは言えないことから、刑罰をもって臨むほどの違法な行為とはならないでしょう。なお、器物損壊罪は『親告罪』であり、被害者の告訴がない限り犯罪として裁判にかけられることはありません(刑法264条)」

Q.今回のケースで、娘は母親に対してどのような法的措置を取ることができますか。

刈谷さん「まず、娘が母親に対して取りうる法的措置としては、器物損壊罪について母親を刑事告訴することです。しかし、この措置は、母親が3年以下の懲役または30万円以下の罰金刑に処せられることを求めることになるので、手段として穏当とは言いがたく、刑罰が科せられることは誰も望まないでしょう。次に、母親にコレクションを引き渡すよう求め、場合によってはお金を支払うよう求めるという民事的な措置を取ることが考えられます。未成年であったとしても、所持する財産に対する権利は民法上保護されているので、たとえ母親であったとしても、許可なくコレクションを処分した場合は違法な財産権の侵害となりうるでしょう。このように『理論的』にはさまざまな方法が考えられますが、最も大事なことは、親子間で裁判沙汰になることがないよう、母親が強硬策に出ない程度に日頃から言うことを聞いておくことかもしれません。十分なコミュニケーションが大切なのです」

(オトナンサー編集部)

刈谷龍太(かりや・りょうた)

弁護士

1983年千葉県生まれ。中央大学法科大学院修了。弁護士登録後、都内で研さんを積み、2014年に新宿で弁護士法人グラディアトル法律事務所(https://www.gladiator.jp/)を創立。代表弁護士として日々の業務に勤しむほか、メディア出演やコラム執筆などをこなす。男女トラブル、労働事件、ネットトラブルなどの依頼のほか、企業法務において活躍。アクティブな性格で事務所を引っ張り、依頼者や事件に合わせた解決策や提案力に定評がある。

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