飼い主の“体調不良”を犬や猫が理解し、心配するというのは本当か?
ペットの犬や猫は飼い主が体調不良のとき、心配して、普段とは異なり、おとなしくしているという話を聞いたことがありますが、本当でしょうか。

飼い主が体調不良のとき、ペットの犬や猫がそれを理解するという話をよく聞きます。しかし、一緒に過ごす時間が長いとはいえ、犬や猫は人間ではないため、人間の体調不良という状態を理解できるのは不思議です。中には、お構いなしに飼い主に飛びついてくる犬や猫もいると思いますが、飼い主を心配して、普段とは異なり、おとなしくしていることも多いそうです。
ペットの犬や猫が飼い主の体調不良を理解し、心配するというのは本当でしょうか。獣医師の増田国充さんに聞きました。
起床時間の違いも察知か
Q.ペットの犬や猫が飼い主の体調不良を理解し、心配するというのは事実ですか。
増田さん「事実とは断定できませんが、飼い主が体調不調のとき、同居するペットの犬や猫がそれを察知して飼い主に近寄り、心配そうにしているという事例をよく聞きます。個人的な経験や、飼い主から話を聞いていても思うのですが、ペットの犬や猫が何かいつもと違う様子を察知していることは、かなり、信ぴょう性があると考えます」
Q.なぜ、ペットの犬や猫は飼い主の体調不良を理解できるのですか。
増田さん「さまざまな理由がありますが、ペットの犬や猫は人間が考えている以上に人間、あるいは周囲の環境をよく観察しており、それが飼い主の体調不良に気付く大きな理由だと思います。例えば、飼い主の起床する時間がいつもより少し遅いなど、普段の振る舞いにわずかな違いがあれば、それを察知して、『いつもと違うな』と思うようです。
また、空気を読むことができるのも理由だと思います。例えば、ペットの犬や猫を健康診断や予防接種で動物病院に連れて行く日に、なぜか、部屋の奥に隠れたり、足取りが重かったりと、普段の様子と異なる様子を見せることがあります。犬や猫は病院を苦手とする場合も多く、そのような行動を取るのですが、飼い主が平静を装っていても、雰囲気など隠しきれない部分があるのかもしれません」
Q.飼い主が体調不良だと理解したとき、心配した犬はどのような行動を取りますか。
増田さん「人間は体調不調のとき、動きに精彩を欠き、声色をはじめとした一挙手一投足が普段と異なる様子を見せます。犬はその特性から、群れ(家族内)の様子を普段からよく見ていると考えられ、飼い主の普段とは異なる様子を敏感に察知して、不安として認識し、飼い主のことを心配すると考えられます。
その際、犬は飼い主の近くに寄り添ってずっと離れないなど、普段よりも飼い主との距離を近づける場合もあれば、逆に体調不調を察し、少し遠慮深げに様子をうかがっていたりと、個々によって差はあるようです」
Q.同じく、猫の場合、心配してどのような行動を取りますか。
増田さん「猫は『自分以外には無関心』というイメージを持たれがちですが、犬と同様に人間との絆を育む可能性があるという海外の文献があります。つまり、飼い主が自身にとって安全な存在であるかどうかを見極めているようです。そのため、猫にとって安心な存在である飼い主に、何か普段と異なる様子が見られた場合、異変や不安を敏感に感じるようです。そのとき、猫は飼い主に寄り添うことが多いでしょう」
Q.犬や猫以外のペットの動物も飼い主の体調不良を理解し、心配してくれることはあるのでしょうか。あるいは、犬と猫しか理解できないのでしょうか。
増田さん「犬や猫はさまざまな研究や調査が行われ、感情による行動パターンが明らかになっていますが、その他の動物に関しては、人間の体調不良を理解し、心配するのかどうか、はっきりしたことは解明されていません。例えば、ペットとして飼う人が多いウサギやハムスターは飼い主の体調不良を理解して心配し、犬や猫と同様の行動をするのかどうか、詳しく調査されていないので、はっきりしたことを現時点で言及できません。
今後、犬や猫以外の動物でも、飼い主の様子やしぐさによって、行動にどのような影響が出るかを調査したデータが出てくるかもしれません。人間とさまざまな動物とが絆を通じて、一層、心を通じ合わせることができれば、完全には理解できなくとも、相互に考えていることを感じ合えるのではないかと期待しています」
(オトナンサー編集部)
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