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感染過去最多「梅毒」ってどんな病気? 治療・予防法、なりやすい人は? 医師に聞く

主に性的な接触によって感染する「梅毒」の感染者報告数が今年、過去最多を更新しました。近年、増加傾向にあるという梅毒とはどんな病気なのか、産婦人科医に聞きました。

感染者増の梅毒とは?
感染者増の梅毒とは?

 性行為などで感染する「梅毒」の今年の感染者報告数が、現在の集計方法になってから、過去最多の7134人になったことが12月14日、国立感染症研究所から発表されました。感染者は全国的に増加傾向にあるといい、ネット上では「怖い」「どんな病気か、ちゃんと知らないかも」「命に関わる?」など、さまざまな声が上がっています。

 患者数が増え続けている梅毒とは、どのような病気なのでしょうか。産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。

初期は感染に気付かないケースも

Q.梅毒とは、どのような病気でしょうか。

尾西さん「梅毒とは『梅毒トレポネーマ』という細菌による感染症で、主に性交渉で感染します。感染後1カ月くらいで、感染した場所(唇や陰部、口腔咽頭粘膜、陰部周辺、肛門周辺など)に丘疹(皮膚の隆起)、びらん(ただれ)、潰瘍(かいよう)などの症状が現れます。リンパ節が腫れることも多いです。

ただ、感染しても初期には症状がなかったり、症状が軽くて気付かなかったりする場合もあり、感染後3カ月くらいで、全身の皮膚に紅斑や丘疹、脱毛斑、肉芽腫などが見られることで気付く場合も多いです。腎臓や胃、肝臓などさまざまな臓器に病変が見られることもあります。

また、妊娠している人が梅毒に感染すると、胎盤を通して胎児に感染し、死産や早産、新生児死亡、奇形などが起こることがあります。近年、妊娠中に胎児が梅毒感染してしまう『先天梅毒』も増加しており、問題となっています」

Q.梅毒に感染しやすい人の特徴とは。

尾西さん「梅毒患者は2012年の875人から2016年の4559人へと4年で5倍以上に急増しています。これまでの最多は2018年の7007人でしたが、今年、この数字をさらに上回った形です。男性では40代、女性は20代が最多です。コンドームを使用しない性交渉やオーラルセックスをする人は感染しやすいといえます」

Q.梅毒感染後、受診・治療せずに放置するとどうなりますか。

尾西さん「感染後、数年を経て、皮膚や筋肉、骨などに『ゴム腫』と呼ばれる腫瘍が発生することがあります。心臓、血管、脳、神経などの臓器に病変が生じると、場合によっては死に至ることもあるため、早めの受診が肝心です」

Q.梅毒の感染が疑われる場合、病院では何科を受診すべきでしょうか。

尾西さん「皮膚科や感染症科の他、男性は泌尿器科、女性は婦人科(産婦人科)で診察を受けることができます。口の中に異常が生じた場合、耳鼻咽喉科などで診察を受けることも可能です。性的接触の後、いつもと違う症状を感じたら、早めに医療機関を受診し、血液検査(抗体検査)を受けましょう」

Q.病院では、どのような治療が行われますか。

尾西さん「抗生剤の内服を行いますが、場合によっては入院の上、抗生物質の点滴を行います。適切に治療を行えば完治する病気です。ただ、完治しても再度感染する可能性はあるので、きちんと予防する必要があります」

Q.梅毒はどう予防すればよいですか。

尾西さん「梅毒の病原体である梅毒トレポネーマは、傷口からの滲出(しんしゅつ)液や精液、膣(ちつ)分泌液、血液などの体液に含まれており、パートナーの粘膜や傷口などと直接接触すると感染します。実際は感染経路の多くが性器や肛門、口など粘膜を介する性的接触となっているため、まずはコンドームをしっかり使用することです。

避妊のためにピルを内服している場合やオーラルセックスでも感染のリスクがあるので、コンドームの使用を心掛けてください。さらに、パートナーを1人に限定することなどでも感染の拡大が防げるといわれています。また、不特定のパートナーがいる人は定期的に検査をすることが大切です。

近年は梅毒という病気自体を知らない人が増加しているため、知らない間にうつされたり、他人にうつしてしまったりしていることがあるので注意しましょう」

(オトナンサー編集部)

尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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