乾燥、かゆみ、赤くなる? 「発熱インナー」で肌トラブル、原因や対処法は?
寒い冬を乗り切るために欠かせない「発熱インナー」ですが、肌のタイプや状態によっては過度に乾燥したり、肌トラブルが起きたりすることもあるようです。皮膚科医に注意点を聞きました。
寒い季節に欠かせない存在となった、着るだけで暖かくなる「発熱インナー」。今年の冬も、お世話になっているという人も多いと思いますが、肌のタイプや状態、また、素材の種類によっては「肌がかなり乾燥する」「かゆみが出る」「肌が赤くなった」という人もいるようです。ネット上では「発熱インナーを着たいけど、かゆくなったことがあるから心配」「肌の乾燥を抑える方法はある?」「どんな素材のものを選べばいい?」など、さまざまな声があります。
発熱インナーを着ることで、肌トラブルが起こることはあるのでしょうか。アヴェニュー表参道クリニックの佐藤卓士院長(皮膚科・形成外科)に聞きました。
化学繊維の摩擦が刺激に
Q.発熱インナーを着ると、肌が乾燥したり、かゆみ・赤みが出たりすることがあるのは事実でしょうか。
佐藤さん「事実です。発熱インナー(ヒートインナー)は吸湿発熱繊維を用いたインナーの総称です。この素材は特殊な化学繊維でできており、体から出た汗の水分を吸収して発熱する性質があります。人は運動していなくても、常に水蒸気を皮膚から発しているので、その水蒸気を素材が吸収して発熱し、暖かさを感じるようになるのです。体が温まるというメリットを得られる半面、皮膚が水分を失うため、必然的に乾燥に傾くことになります。
乾燥肌の人は発熱インナーの着用により、もともと水分が少ない肌から、さらに水分が奪われるため、ますます乾燥してしまいます。乾燥している肌は刺激に対して敏感になっているため、乾燥した肌と化学繊維の摩擦により刺激を受け、かゆみが出やすくなります。また、化学繊維は肌との摩擦により、静電気が起きやすくなるため、静電気の刺激によって、チクチクとした感じがすることがあります。
脇や関節部分、ベルト部、下着の締め付け部など蒸れやすい部分に化学繊維の摩擦が重なると、症状が悪化することがあります。ひどくなると、化学繊維に触れている部分全体が赤くなり、湿疹を引き起こすことがあります。また、スポーツによる汗も悪影響を与えます。
発熱インナーは吸湿して熱を出しますが、汗を吸い過ぎるとインナーがぬれ過ぎてしまい、蒸れて、皮膚の常在菌叢(じょうざいきんそう、常に皮膚に集団で存在している微生物群)が乱れ、肌荒れが起こり、かゆみが出たり、あせもやニキビができたりします。汗をかくこと自体はいいことですが、かいたらすぐに拭き取ったり、洗い流したりすることが大事です」
Q.実際に、発熱インナーによる肌トラブルで来院される患者さんはいるのでしょうか。
佐藤さん「冬になると『体がかゆい』と訴えて、皮膚科を受診する人が増えます。乾燥性湿疹やアトピー性皮膚炎の悪化が原因であることが多いのですが、特に湿疹などがないにもかかわらず、かゆみが止まらなくなる人もいます。そうした場合、化学繊維の下着が原因の可能性もあり、綿素材のものに替えると症状が改善するケースもあります。
発熱インナーのみが原因であると特定できることは少ないと思いますが、もともと乾燥肌の人やアトピー性皮膚炎の人などは発熱インナーがきっかけで、症状が悪化するケースは多いと思います」
Q.発熱インナーで、肌の乾燥やかゆみを感じやすくなる人の特徴はありますか。
佐藤さん「先述の通り、基本的には乾燥肌傾向の強い人やアトピー性皮膚炎をお持ちの人は特に注意が必要です。肌は加齢とともに乾燥しやすくなっていくので、高齢の人も注意が必要です。一方、小さい子どもは汗をかきやすい上、皮膚が薄く、敏感肌なので、蒸れてあせもができたり、かゆみの症状が強く出たりします。また、女性の肌は男性よりも皮膚が薄く、デリケートなため、発熱インナーで症状が出やすい傾向にあります」
Q.肌が乾燥しやすい人が発熱インナーを着る際、乾燥やかゆみを抑える方法はありますか。
佐藤さん「化学繊維が原因の場合は綿素材のものに替えましょう。乾燥肌の人はしっかり保湿をしてから、発熱インナーを着用してみて、かゆみが出ないか確認してください。もし、かゆみが出るようなら着用をやめましょう。ちなみに、発熱インナーの下に綿素材の下着を着るのはあまり意味がないと思います。発熱インナーは汗を熱に変えるので、中に下着を着ると熱が通りにくくなり、効果が薄れます。それよりも、綿素材の下着を2枚重ね着する方がよいと思います」
Q.もし、発熱インナーを着て、肌の乾燥やかゆみ、赤みを感じた場合、どうすればよいですか。
佐藤さん「発熱インナーが原因と考えられる場合、まずは発熱インナーの着用をやめてみて、下着を綿素材のものに替え、保湿クリームなどをしっかり塗るなどして、肌を保湿して過ごしてください。それだけでも症状は改善するはずです。改善しない場合、かぶれが進行している可能性があるので、皮膚科を受診してください。
かぶれの他に、あせもやアトピー性皮膚炎、皮脂欠乏性湿疹などの皮膚炎の可能性もあります。通常は外用保湿剤やステロイド軟こう、かゆみが強いときはかゆみ止めの内服薬が処方されます」
(オトナンサー編集部)
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