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「学歴フィルター」が炎上中、新卒採用も炎上中! なぜ違和感を覚えるの?

経団連が「新卒一括採用」の見直しを加速させるよう促す方針であることが判明。採用市場は変わるのでしょうか。

「新卒一括採用」見直しは進む?(2021年3月、時事通信フォト)
「新卒一括採用」見直しは進む?(2021年3月、時事通信フォト)

 マイナビの「大東亜」ツイート以降、「学歴フィルター」の議論が活発です。そのような中、経団連が「新卒一括採用」の見直しを加速させるよう、企業に促す方針であることが分かりました。これは4月の新卒一括採用の割合を減らし、中途採用や通年採用を拡大するというものです。採用市場は変わるのでしょうか。

ミスマッチに翻弄される企業と学生

「就活のミスマッチ」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。ミスマッチとは、採用する企業と学生との間に認識のズレがあり、入社後にギャップが生じて、新卒社員が早期に離職してしまうことを意味します。多くの就職本では、3年で3割の新卒社員が離職することが「ミスマッチ」の基準とされていますが、実際はどうなのでしょうか。

 関心のある方は「新規学校卒業就職者の調査」(厚生労働省)の調査レポートを過去にさかのぼって調べてください。昭和40年の高度経済成長時代から、ミスマッチは社会問題として取り上げられています。多少の変動はあるものの、当時の数値と現在の離職率にそれほどの乖離(かいり)があるわけではありません。

 高度経済成長でもバブル景気でも、リーマン・ショックでもコロナ感染拡大でも、それほどは変わらないということです。就職情報会社は「3年で3割も辞めるんです。だから、ミスマッチです」「いい学生を採用しないと大変です」「階層間の分断が生まれます」と声高に言います。3年3割のミスマッチはそれほど異常な事態なのでしょうか。

 この数値を検証してみましょう。ソースは2010年以降のものを参照しますが、米労働統計局によれば、大卒者が32歳までに平均8回転職することが明らかになっています。英国家統計局によれば、大卒者が入社4年以内に3回以上の転職をする割合が「男性22.7%、女性26.4%」で、大韓民国統計庁によれば、大卒者が初めて入社した会社の平均勤続年数は2年未満、3年後の離職率は7割を超えています。

 各国の調査結果は調査項目が統一されていないため比較は難しいですが、少なくとも日本のミスマッチとされている基準(3年3割)が高いとはいえません。高くないということは、日本のミスマッチの定義自体がそもそも間違っているということです。ミスマッチがクローズアップされることが極めてナンセンスだといえるのです。

いっこうに変わらない新卒採用

 学生の志向はどのように変化しているのでしょうか。1970年6月10日、日経新聞に採用関連の記事を見ることができます。「人気企業は安定企業に」とあります。ここでいう安定企業は大手企業のことを指しています。採用市場において、大手企業以外に注目が集まり、応募が殺到したという話は聞いたことはありません。

 これまで、バブル崩壊があり、新卒者の青田買いが社会問題となり、リーマン・ショックがあり、コロナ禍の時代になりました。インターネットが普及し、新たなビジネスが誕生するなど、さまざまな社会システムの変化はありました。しかし、採用は基本的に変化に乏しい市場だということが分かると思います。

 では、企業にとって、新卒採用を行うメリットは何でしょうか。それは社員を純粋培養できることにあると考えています。売れ筋の商品を持っている会社であれば、年齢の高いベテランや中途よりも、新卒の方がはるかに人件費を抑えることができます。新卒入社して、数年は社会勉強の期間です。疑問を持つことなく働いてくれます。

 ところが、入社して数年がたち、役職者になれば、仕事を客観視して、場合によっては疑問を持つことも考えられます。複数企業を経験している中途社員は比較する物差しがありますから、このような違和感に気が付くことがあります。新卒社員は純粋培養されていますから、このような違和感に気付くことはありません。

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尾藤克之(びとう・かつゆき)

コラムニスト、著述家 尾藤克之

コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員/議員秘書、コンサル、IT系上場企業等の役員を経て現職。障害者支援団体のアスカ王国を運営。複数のニュースサイトに投稿。18冊目「伝わる!バズる!稼ぐ!文章術」(秀和システム)発売。プロフの詳細はWikipediaを参照(http://w.wiki/at5)。

筆者への連絡先
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