12月末退職を伝えたら、会社から11月15日にしろと言われ「ストレスで憤怒」「カツカツ」、法的には?
会社に12月末退職を伝えたところ、仕事の縮小を理由に「11月15日退職」を指示された、という趣旨の投稿が話題となりました。こうしたケースでは、会社の言い分に従わなければならないのでしょうか。
SNS上で先日「退職の時期」に関する投稿が話題となりました。「仕事したくなさすぎてお腹痛い」「会社自体が苦痛でまずいことになってきた」という投稿者が「12月末で退職したい旨伝えたら、案件の契約縮小されて11月15日になって、それに合わせて退職してくれ」と伝えられたとのこと。「毎月カツカツでどう貯蓄しろっていうんじゃ」「ストレスで憤怒している」と不安が募りましたが、その後、社長と面談すると「12月末で退職するなら、もらえるお給料は6割だけども、休業してしっかり現金貰って、そのうえで転職活動するとかしたほうがいいんじゃない?(中略)休業自宅待機扱いにしてバイトしつつ転職とか」と提案され、従ったといいます。
こうしたケースで早期の退職を求められた場合、労働者はこれに従わなければならないのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
会社側の言い分に従う必要はない
Q.「案件の契約縮小」など会社側の都合で退職日を早めるように言われた場合、これに従う必要はありますか。
牧野さん「投稿者は12月末で退職したいと伝えており、12月末での退職届を行ったと解釈されるので、『退職後に禍根を残したくない』ことを理由に早期退職に任意で同意すれば別ですが、基本的に、会社側の都合で退職日を早めることに同意する義務はありません。なお『退職届』のように、労働者が労働契約の解約を使用者へと一方的に通告した場合、使用者の承諾がなくてもその意思表示がなされた期日(このケースの場合は12月末日)に解約の効力が生じるので(平成9年6月20日「ジャレコ事件」東京地裁判決)、どうしても『その日』に退職したい場合は、退職願ではなく退職届を出す方がよいでしょう」
Q.社長が「12月末で退職するなら、もらえるお給料は6割だけども、休業してしっかり現金貰って…」と提案したことの意味は何でしょうか。
牧野さん「労働基準法26条は、使用者側の責に帰すべき休業(労働者が労働契約に従って労働を提供する準備をし、かつ、労働するという意思があるにもかかわらず、使用者に労働の提供を拒否、または不可能となった場合)について、休業期間中は当該労働者にその平均賃金の60%の『休業手当』を支払わなければならないとしています。11月15日までは通常の給与が、それ以降12月末までは休業手当が支給される、という趣旨だと思います。退職日は希望通りに12月末日とはするが、11月16日以降12月末までは『休業』扱いにするという意味でしょう」
Q.「11月15日退職」を余儀なくされていた場合「会社都合退職」となりますか。その場合、12月末に「自己都合退職」するのとではどちらが有利でしょうか。
牧野さん「会社から『11月15日退職』を言われてそれを余儀なくされた場合、実質的には会社の退職勧奨に該当し、会社都合退職となる可能性があります。その場合、給与は11月15日までではなく、12月末日までの分がもらえます。月給制の場合、民法第627条第2項で『期間によって報酬を定めた場合には、解約の申し入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない』と規定されているからです。会社都合退職の場合、失業保険にもメリットがあります。会社都合退職は自己都合退職の場合よりも給付開始日が3カ月早く、期間も最大で180日長くなるのです。一方、投稿者が自己都合退職を主張する場合には、投稿者が12月31日付で退職届を行ったと理解すると12月31日が退職日となり、その日までの給与がもらえると解釈できますが、失業保険は自己都合退職扱いとなります」
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