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デパートの食品売り場「デパ地下」が地下階に置かれるのはなぜ? 地上にあった歴史も

「デパ地下」と通称される、デパートの食品売り場は、ほぼ全てのデパートで地下にあります。理由を専門家に聞きました。

食品売り場が「地下」の理由は?(2017年7月、時事)
食品売り場が「地下」の理由は?(2017年7月、時事)

 デパートで、特に多くの来店客でにぎわうのが食品売り場です。この食品売り場ですがなぜか、ほぼ全てのデパートで地下に設置され、「デパ地下」と通称されています。1階の方が来店客にとって便利そうにも思えますが、地域などに関係なく、食品売り場が地下にあるのはなぜなのでしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

地上階にあったデパートも

Q.デパートの食品売り場は必ず、地下に設置しないといけないのでしょうか。1階の方が、来店客が階を移動する必要がなく、利便性が高いように思います。

大庭さん「デパートで食品売り場を地下に設置するのは、決まりがあるからではありません。次の3つの経営的な理由があるからです」

(1)食品売り場では調理も行うため、水道やガス管を設置する必要があり、地下であれば工事が簡単にできる。
(2)食品を陳列することで、においが発生することがあり、売り場が地下にあれば、他の階への影響が少ない。
(3)都市部のデパートは、地下の入り口が地下鉄と接続していることが多く、集客効果の高い食品売り場を地下に設置することで、デパートそのものへの集客を高める効果が期待できる。

Q.これまで、地上階に食品売り場が設置されたことはないのですか。

大庭さん「あります。1967年に東急百貨店本店が渋谷にオープンしたとき、最上階の8階にレストランと併設して、食品売り場が設置されました。ただ、市場や工場などから届く食品を、狭いエレベーターを使って何度も最上階まで上げなければならず、作業効率が極めて悪かったこと、また、地上階の場合、売り場の拡張を行うためには、建物そのものの建て直しが必要となり、簡単に売り場面積を広げることができないというデメリットがありました。

これらの理由から、東急百貨店本店は1990年に建物の改装工事を行った際、食品売り場を地下に移動させました。首都圏で地上階に食品売り場を設置したデパートはこれまでのところ、東急百貨店本店だけです」

Q.最上階にレストラン街を設置すると、行き帰りの「ついで買い」を促して、店舗全体の売り上げを向上させる効果が期待できるとされます。食品売り場の地下設置も、こうしたマーケティング効果を期待してのことでしょうか。

大庭さん「多層階からなる商業施設の経営では、目玉商品を最上階に設置して客を引き付け、下の階に降りる途中でも何かを購入してもらう『シャワー効果』と呼ばれるマーケティング戦略上の考え方があります。魅力のある店舗が集まるレストラン街を最上階に設置するのもこの考え方によるものです。

逆に、集客力のある商品を下の階に設置して客を引き付け、そこで買い物をした客が上のフロアにも足を向けることを期待する『噴水効果』と呼ばれるマーケティング戦略上の考え方もあります。食品売り場を地下に設置する理由の一つとして、噴水効果への期待もありますが、シャワー効果ほどの効果は生まれていないのが実情です」

Q.食品売り場を最上階に設置することはデメリットが多いようですが、集客力の高さは魅力です。レストラン街を設置することと同じく、「ついで買い」を促すことはできませんか。

大庭さん「食品売り場は集客力が高く、仮に最上階に設置すれば、他のフロアへの集客向上効果を期待できるでしょう。しかし、先ほど述べた、食品を最上階まで上げる作業効率の悪さや、地下と異なり、簡単に売り場の拡張を行えないというデメリットの方が大きいと思います。さらに、地下鉄と接続している地下の売り場より集客上の利便性が低いため、最上階に食品売り場を設置することは難しいと思います」

Q.デパートの中には、銘菓を1階で販売し、その他の食品は地下で販売する店舗もあります。同じ食品ですが、なぜ、フロアを分けて販売するのですか。

大庭さん「デパートでは客層の違いを考慮して、フロアごとに特性の共通した商品を設置するからです。例えば、地下1階には高級品や輸入品など、客が時間をかけて、目的に合った商品を探しながら購買する商品を設置し、地下2階には生鮮品や総菜など、客が時間をかけずに目的のものを購買する商品を設置するなどです。

さらに、観光客が多い立地に存在するデパートでは、観光客を呼び込むために、1階に地元の名産品や銘菓などを販売する土産物コーナーを設置するケースもあります。観光客の大半は地上の道路からデパートに入るからです」

Q.「デパ地下=食品売り場」という認識が世の中に定着したように思います。今後も食品売り場を地下に設置する傾向は変わらないでしょうか。

大庭さん「『食品売り場は地下にあるもの』というイメージが世間に定着しています。そのため、地上階に食品売り場を設置すると、来店客の混乱を招く恐れがあるため、今後も食品売り場を地下に設置する流れは変わらないと思います。ただし、食品とその関連商品に特化したデパートが現れた場合、地上階に食品そのものを販売する売り場が設置される可能性はあります」

(オトナンサー編集部)

大庭真一郎(おおば・しんいちろう)

中小企業診断士、社会保険労務士

東京都出身。東京理科大学卒業後、企業勤務を経て、1995年4月に大庭経営労務相談所を設立。「支援企業のペースで共に行動を」をモットーに、関西地区を中心に企業に対する経営支援業務を展開。支援実績多数。以下のポリシーを持って、中堅・中小企業に対する支援を行っている。(1)相談企業の実情、特性に配慮した上で、相談企業のペースで改革を進めること(2)相談企業が主体的に実践できる環境をつくりながら、改革を進めること(3)従業員の理解や協力を得られるように改革を進めること(4)相談企業に対して、理論より行動重視という考えに基づき、レスポンスを早めること。大庭経営労務相談所(https://ooba-keieiroumu.jimdo.com/)。

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