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収入は親の年金のみ、でもサプリ等に月6万円…52歳ひきこもり妹を案ずる姉の思い

ひきこもりの子どもが浪費する場合、家族はどのように対処すればよいのでしょうか。専門家が解説します。

ひきこもりの子どもが浪費…どうする?
ひきこもりの子どもが浪費…どうする?

 無収入のひきこもりのお子さんでも、親御さんのお金で買い物をしたり、サービスを受けたりすることはあります。買い物などは社会とのつながりが持てるのでよい行動だと思うのですが、それはあくまでも適正な金額の場合であり、家計を圧迫してしまうような金額の出費は望ましくありません。しかし、ひきこもりのお子さんの中には、限度を超えた買い物などを続けてしまうケースもあり、ご家族が頭を悩ませることがあります。

将来への不安やストレスが原因?

「ひきこもりの妹(52)のことで相談をしたい」という依頼を受けた筆者は面談当日、姉(55)から話を伺うことにしました。両親はともに80代で高齢のため、代わりに姉が相談することにしたそうです。状況を把握するため、まず、家族構成から確認しました。

■家族構成
父 85歳
母 82歳
妹 52歳 ひきこもり当事者
親子3人暮らし

姉 55歳
既婚、妹家族とは別居

 本題に入ると、姉は語気を強めました。

「両親も高齢になってきたので、妹家族のお金の話をしておきたいと思い、まずは現在の家計収支を洗い出してみました。すると、妹の出費だけで月6万円以上もかかっていることが分かったのです。収入は両親の年金だけで、生活に余裕がないにもかかわらずです。毎月赤字で、昔、1800万円ほどあった貯金は他の出費があったこともあり、300万円ほどに減っていました。このままでは家族は破産してしまいます」

「なるほど。それは心配ですね。妹さんは一体何にお金を使っているのでしょうか」

「主に栄養補助食品(サプリメントなど)や高級だしパック、化粧品、衣服、アクセサリーのほか、1~2カ月に1回の美容院やネイルサロン代などでした。妹は健康や美容にこだわりが強いようで、いろいろな種類のサプリメントを試していました。たくさんありすぎて全部消費できないようですが、それでも、新たに買ってしまうようです。また、外出するときはきちんとしたメークや服装をしないと嫌なようで、そちらにもお金がかかっています」

 そこまで話を伺った筆者は、家族の収入についても確認しました。

■現在の収入
父親 公的年金 月額約16万円
母親 公的年金 月額約5万円
妹 無収入
合計 月額約21万円

 筆者は念のため、仮に父親が亡くなった後の収入と妹の収入(老齢年金)の試算もしました。

■父親が亡くなった後の収入
母親 老齢年金と遺族年金 月額約14万円
妹 無収入(※)
※妹が65歳になった後は、老齢年金が月額約5万円

 妹が65歳になったとき、母親は95歳。そのため、父親が亡くなった後も、当分の間は母親の年金収入だけが頼りとなりそうです。親子2人暮らしで収入は14万円。生活はかなり切り詰めたものになることでしょう。月額6万円以上の出費はとても続けられそうにありません。

妹は現実を受け入れることができるのか

「妹の浪費を今すぐにでもやめさせたいのです。一体どうすればよいですか」

 姉はそう訴えました。しかし、筆者はすぐに答えを出すことができませんでした。妹に限度を超えた出費を改めてもらう方が望ましいと思うのは筆者も同じです。しかし、事態はそう簡単ではありません。妹が自身の行動を改めてくれるかどうか。そう懸念する筆者の頭には、過去の幾つかの相談事例が浮かんでいました。

 ひきこもりのお子さんは、将来の不安やストレスを和らげようとして、買い物を続けてしまうこともあります。お子さんには収入がないので、お金は親御さんが払うことになります。「親御さんのクレジットカードで買い物をする」「代引き払いを利用する」「現金を親御さんにその都度要求する」といったもので、中には月10万円以上の買い物をし続けているケースもありました。

 もちろん、親御さんも何もしていないわけではありません。買い物をやめるよう注意したり、クレジットカードを使えなくしたり、代引きで注文した商品をそのまま玄関口で返品したり、手渡すお金を少なくしようとしたりといった行動を取っています。しかし、それでも事態は好転しないことが多いようです。

 親御さんのこうした対応にお子さんが激怒し、「何時間でも親御さんを責め続ける」「大声で怒鳴り散らす」「暴れる」といった状態が続いてしまうと、親御さんの方が折れざるを得ません。親御さんも「このままではいけない」と思いつつも、なかなか改善の糸口が見えない状態が続きます。

 そうした家族の相談を受けると、筆者もこれといった解決策が見当たらず、もどかしい思いをします。とはいえ、いつまでも限度を超えた出費を続けることはできません。いずれ、収入の範囲内で生活をしなければならないときが来るからです。それは今回の相談者家族も同じです。

【表】ひきこもりの子どもが浪費するとき、家族が取るべき対応リスト

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浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

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