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“紅白”の区別撤廃、「司会」に統一 ジェンダー平等意識した呼称、肯定派? 否定派?

大みそか恒例の「NHK紅白歌合戦」は今年から、「紅組司会」「白組司会」を「司会」と呼ぶことになりました。昨今、各所で行われている、男女の区別を想起させる呼び方の変更について、一般の人たちはどのように見ているのでしょうか。

今年の紅白歌合戦司会者の大泉洋さん(2021年8月、時事通信フォト)、川口春奈さん(2020年2月、時事)
今年の紅白歌合戦司会者の大泉洋さん(2021年8月、時事通信フォト)、川口春奈さん(2020年2月、時事)

 大みそか恒例の「NHK紅白歌合戦」ですが今年から、「紅組司会」「白組司会」という呼称をやめ、「司会」に統一することになりました。ジェンダー平等に配慮し、男女の区別を際立たせる「紅と白」を少し引っ込めようとする意図があってのことと見られますが、呼び方など、見えやすいところから、ジェンダー平等に取り組もうとする動きは最近、各所で見受けられます。

 しかし、見えやすいところで男女の区別がなくなっても「果たして、意識という本質的な部分でジェンダー平等が浸透しているのか」といった疑問の声も聞かれます。昨今、各所で行われている、男女の区別を想起させる呼び方の変更について、一般の人はどのように見ているのでしょうか。

「やらないよりは断然いい」「中途半端」

 NHKが紅白歌合戦で、呼称を「司会」に統一したことをどう思うのか、一般の人たちに聞きました。すると、賛否がおおむね半々に分かれた印象です。それぞれの意見の一部を紹介します。

~肯定派~

「確かに、番組全体が古くなってきている気はしていたので、数年ごとにこうした変化があっていいと思います。時代に合わせて変化していこうとする姿勢は応援できます」(50代男性)

「日本中が注目する番組ですから、こうしたメッセージの発信は意義深いと思います。『(呼び方を司会に統一したくらいでは)あまり意味ないのではないか』という意見もありますが、やらないよりは断然いいです。少なくとも、今回のNHKの決定でジェンダー平等の議論が巻き起こったわけですから、十分意味はあったのではないでしょうか」(40代女性)

~否定派~

「ジェンダー平等を押し出すなら、『紅組と白組に分かれての対決をやめる』など、思い切った変更をしない限り難しいのでは。少し呼び方を変えたくらいでは根本は変わらないと思うので、中途半端に思えました」(30代女性)

「ジェンダーの問題は非常に繊細なので、取り上げる際はそれなりに覚悟を持つ必要があると考えています。今回の呼び名の変更はそれが欠けていて、やらない方がむしろよかったと思います。『小手先をいじっただけで、ジェンダー問題に配慮しているポーズを見せられても…』という感じです。きちんとジェンダー問題に向き合っている人たちに対して、かえって失礼なのでは」(40代男性)

 紅白歌合戦は長年続いてきた国民的番組なので、今までにない思い切った企画や運営を行うのは、さまざまなしがらみから難しいでしょう。そうした中で、呼び方を「司会」に統一したことはNHKにとっては大冒険だっただろうと思います。とはいえ、試みたこと自体を評価する声がある一方で、その試みの物足りなさを嘆く声も聞かれました。

「看護婦」から「看護師」に変更

 また、「紅白歌合戦」の呼び方の統一に限らず、男女の区別を想起させる呼び方を変更していく世の中の流れに疑問を抱くという声もありました。

「今回の『紅白歌合戦』の呼び方の変更に限ったことではないですが、正直、うんざりしています。例えば、昔は『看護婦』と呼んでいたのが、今は『看護師』と呼ばなければならないように、別に変更せず、前のままでいいのではないかと思う言葉がたくさんあります。

こうした変更は“揚げ足取りの言葉遊び”のようで、もっと別のアプローチに力を注いだ方がいいように思えます。例えば、女性の権利を向上させるのであれば、言葉遊び以外にやれることってたくさんありますよね」(30代女性)

 一方で「そうした表現の変更にも一定の効果がある」という意見もあります。

「『主人』や『奥さん』という言葉は男女差別につながるということで、改める動きがあります。僕たちの世代が最初に『主人や奥さんという言葉は差別につながる』と聞いたときは当然驚いたわけですが、その変更の理由を考えると、納得はできなくても『男女の差別に対して敏感な時代になったのだな』と感じます。

そのように思った人が一人でも増えていくことが、多分、男女差別をなくすことを目指す社会にとっての一歩なのだと思います」(40代男性)

 今年の紅白歌合戦のテーマは「Colorful~カラフル~」で、番組の公式サイトでは「多様な価値観を認め合おうという思いも込められています」と説明されています。日夜、各所で議論が交わされるジェンダー関連の問題ですが、現在は議論が深まっていく過程の真っただ中なのかもしれません。議論をする・される機会が増えれば、世の中の理解が進み、ジェンダー問題の捉えられ方ももう少しスマートな形に落ち着く日が来ることでしょう。

(フリーライター 武藤弘樹)

武藤弘樹(むとう・こうき)

フリーライター

早稲田大学第一文学部卒。広告代理店社員、トラック運転手、築地市場内の魚介類卸売店勤務などさまざまな職歴を重ね、現在はライターとミュージシャンとして活動。1児の父で、溺愛しすぎている飼い猫とは、ほぼ共依存の関係にあるが本来は犬派。趣味はゲームと人間観察。

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