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拒否できない? プロ野球選手の「年俸」はなぜ公開されるのか “推定”方法は?

プロ野球選手の契約更改交渉が始まりましたが、「年俸」を公表する義務は選手にも球団にもないはずです。なぜ、プロ野球選手の年俸は推定とはいえ、公表されるのでしょうか。

6年総額12億円プラス出来高(推定)で契約更改を終えたDeNAの宮崎敏郎選手(2021年11月、時事、代表撮影)
6年総額12億円プラス出来高(推定)で契約更改を終えたDeNAの宮崎敏郎選手(2021年11月、時事、代表撮影)

 プロ野球選手の契約更改交渉が始まりました。年明けにかけて、各球団の選手の「年俸」がどれくらいアップ、またはダウンしたのかなどの報道が続きます。しかし、本来であれば、年俸を公表する義務は選手にも球団にもないはずです。なぜ、プロ野球選手の年俸は推定とはいえ、公表されるのでしょうか。また、選手は公表を拒否できないのでしょうか。福岡ダイエーホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)で球団業務にも携わったことがある、一般社団法人日本スポーツマンシップ協会理事の江頭満正さんに聞きました。

他の選手の目標となるため

Q.プロ野球選手が自らの年俸を公開し始めたのは、いつごろですか。

江頭さん「1974年12月31日の新聞に、巨人の王貞治選手の年俸に関する記事が掲載されました。これがきっかけとなり、プロ野球選手の年俸に関する報道が多くなったようです。1974年は長嶋茂雄選手が引退した年です。王選手はずっと、長嶋選手より低い年俸でしたが、長嶋選手の引退により、当時のプロ野球界で最高年俸となり、公開したそうです」

Q.なぜ、プロ野球選手は公表の義務がないにもかかわらず、自分自身の年俸を明らかにしたり、年俸額についての取材に応じたりするのでしょうか。

江頭さん「『他のプロ野球選手の目標になるため』という説と『プロ野球選手は老若男女から憧れられる存在でいるため』という説があります。先述したように、球界を代表する存在である王選手が自分の年俸を公開していれば、他の選手は隠すわけにはいきません。当時は公開を嫌がる選手もいたそうですが、『プロ野球界に注目が集まるよう、王選手は本来隠したい年俸を公開しました。それなのに、あなたはしないのですか』と記者に迫られ、反論できる選手が1974年のプロ野球界にはいなかったのです」

Q.はっきり金額を公表する選手もいますが、多くの場合は「推定」です。報道する側は選手の年俸をどのように推定しているのでしょうか。

江頭さん「この時期、球団事務所の中に記者会見室が設けられ、年俸交渉を終えた選手は例外なく、記者会見を行います。『更改しませんでした』の一言で終える選手もいますが、更改した選手には記者から、金額に関するさまざまな質問が飛びます。『大台は超えましたか』と聞かれ選手は『うーん、まあ』『そこまでは』などと回答します。記者は直接的な金額を聞かないのが不文律です。

記者会見が終わると、記者たちは会見内容などから、推定年俸を記者の間で相談して金額を統一しています。そのため、全国紙とスポーツ紙の間で推定年俸の違いは出ません」

Q.選手は自分自身の推定年俸が公表されることをどう思っているのでしょうか。気にしない選手や喜んでいる選手、自慢している選手もいるのでしょうか。

江頭さん「『球界での査定』をされていると考えています。他の選手との序列を気にするようです。『○○選手の半分だ』『チームで3番目の高額だ』などと、自分の位置をこの契約更改が知らせてくれるのだそうです。また、プロ野球選手になり、レギュラーとして定着した選手のモチベーションを維持するためとも言われています。多くのプロ野球選手と比較するとき、この年俸を目安にするそうで、格付けのようなものです。

年俸1億円と9500万円では、所得税が引かれると差は小さくなりますが、この違いにこだわる選手も少なくありません。それは格付けの意味があるからです」

Q.年俸についての取材を拒否することは不可能なのでしょうか。

江頭さん「選手が年俸をどのように更改したのか、公開を拒否しても大丈夫です。ただ、球団事務所で行われる記者会見では『金額に関してはちょっと』と言っても、記者たちにさまざまな質問をされ、ノーコメントで通し切れなくなるようです。プロ野球界には記者クラブがあり、番記者制度が残っています。1年間143試合のほとんどで、自分を取材して好意的な記事を書いてくれた記者をむげにできないのでしょう」

Q.メディアで発表される選手の推定年俸は、実際に選手が得ている年俸とほぼ一致しているのでしょうか。あるいは、実際は若干の開きが見られるのでしょうか。

江頭さん「大きな違いはないそうです。ただし、選手が恥をかかないように、年俸がダウンした選手には記者が忖度(そんたく)して、事実と異なる年俸の数字を“推定値”とすることもあるようです」

(オトナンサー編集部)

江頭満正(えとう・みつまさ)

独立行政法人理化学研究所客員研究員、一般社団法人日本スポーツマンシップ協会理事

2000年、「クラフトマックス」代表取締役としてプロ野球携帯公式サイト事業を開始し、2002年、7球団と契約。2006年、事業を売却してスポーツ経営学研究者に。2009年から2021年3月まで尚美学園大学准教授。現在は、独立行政法人理化学研究所の客員研究員を務めるほか、一般社団法人日本スポーツマンシップ協会理事、音楽フェス主催事業者らが設立した「野外ミュージックフェスコンソーシアム」協力者としても名を連ねている。

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