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“僕”“私”と言うのが「恥ずかしい」子も? わが子の「一人称」の変化、親はどう関わればいい? 子育てのプロに聞く

子どもが自分のことを呼ぶときの「一人称」は、成長とともに自然と変わっていくもの。その変化・移行に、親はどう関わるのがよいのでしょうか。子育てアドバイザーが解説します。

“僕”“私”と言うのが「恥ずかしい」子も?
“僕”“私”と言うのが「恥ずかしい」子も?

「○○(自分の名前)は…」「○○くん(ちゃん)がね…」。幼い子どもが、親や友達との会話の中で、自分の名前や愛称、親が普段使う呼称を一人称として使っているのを耳にすると、何ともほほ笑ましく感じられるものです。やがて成長とともに、自然と少しずつ、「ぼく(僕)」「わたし(私)」などの一人称に変わっていくことが多いようですが、親の中には「息子の担任に『皆の前で発表するときはそろそろ、僕と言ってみるように声掛けをしています』と言われ、親としてはっとした」「娘は小学生になってもずっと『名前呼び』です」「うちの子は『僕と言うのが恥ずかしい』らしい」「私と言うようになるのを待っていても大丈夫?」と、わが子の一人称に変化がないことを気にする声もあるようです。

 子どもの「一人称」の変化・移行に対する親の関わり方について、子育てアドバイザーの佐藤めぐみさんに聞きました。

「恥ずかしいよ」「変だよ」と諭すのはNG

Q.一般的に、子どもが自分のことを名前や愛称、「○○くん」「○○ちゃん」と言い始めるようになるのは何歳ごろからと考えられますか。

佐藤さん「子どもは、パパやママがその子を呼ぶ呼称で、自分の名前に触れます。親が『○○ちゃん』と呼べば、『○○ちゃん』と覚えていくのです。名前を呼んで反応を示すのは一般に、1歳~1歳半くらいからですが、自分の名前を言い出すのは、もうしばらくたってからです。

3歳児健診の項目で『自分の名前が言えるかどうか』が含まれていることからも、2歳代から、自分の名前や愛称、『○○くん』『○○ちゃん』と言い始めるようになる子が多いと考えられます」

Q.「名前呼び」「○○くん(ちゃん)呼び」を経て、子どもの一人称が「僕/私」に変わっていくことが多いのはいつごろですか。

佐藤さん「これには個人差、性差があるように思います。幼稚園の段階で『僕/私』と言い始める子もいる一方、極端な例では、大人になっても名前で自分のことを呼んでいる人もいます。

性別的には、男の子の方が早く移行するように思います。男の子は幼稚園くらいから、『僕』『俺』と使う子が増えますが、女の子は自分の名前の『ちゃん抜き』で呼んでいる子、『私』を使う子、また、きちんとした場では『私』を使い、友達間では名前呼びと使い分けている子もいます。

一般的に、そのきっかけとなるのが他の子の動きです。『友達が僕、私と言うようになったから』『自分だけ○○ちゃんだと恥ずかしいから』のように、お友達の影響は大きいものです。幼稚園時代は他の子のまねで移行していくことが多く、小学校時代になると、他者の目線がそのきっかけとなりやすいようです。自分がどう映っているかを感じ取れるようになってくることで、『恥ずかしい』という思いを起こすのでしょう。それもあり、小学校時代にほとんどの子が『僕/私』に移行していくと考えられます」

Q.「僕/私」と言うようになっておくのが望ましい時期・年齢の目安はあるのでしょうか。

佐藤さん「先述のように、基本的には周りの動きを見て自然に移行することが多いので、過度に心配する必要はないように思います。ただ、習慣というのは長くなればなるほど根付くものでもあります。思春期に入ると、親のアドバイスをなかなか聞いてくれないことも多いので、小学校の間に移行しておいた方がやりやすいかもしれません」

Q.「僕/私」の一人称が望ましい時期・年齢を迎えても、子どもがずっと名前呼びなどを続けている場合、親はどうするのがよいのでしょうか。

佐藤さん「親から、それとなく働き掛けていくのがいいと思います。ただ、その際は『もう僕って言わないと恥ずかしいよ』『○○ちゃんって呼ぶの変だよ』のような言い方で諭すのは望ましくはありません。基本的に、既に周りが自分のことを一人称で呼んでいることに本人も気付いてはいるからです。しかし、何らかの理由(気恥ずかしいなど)で足踏みしていることが多いので、それを『恥ずかしいよ』『変だよ』と言ってしまうと余計にこじれてしまいます。

自分を振り返ると気付きますが、親も子どもと話すとき、自分のことを『お母さんはね…』『パパはね…』と言い続けているものです。例えば、『ママもこれから私って言うことにするから、一緒にやらない?』とお子さんと同時期に『私』呼びをスタートさせるのもいいかもしれませんね」

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佐藤めぐみ(さとう・めぐみ)

公認心理師(児童心理専門)

ポジティブ育児研究所代表。育児相談室「ポジカフェ」主宰。英レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。現在は、ポジティブ育児研究所でのママ向けの心理学講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポートする活動をしている。著書に「子育て心理学のプロが教える 輝くママの習慣」(あさ出版)など。All About「子育て」ガイド(https://allabout.co.jp/gm/gp/1109/)を務めている。公式サイト(https://megumi-sato.com/)。

コメント

1件のコメント

  1. 男の子は、やんちゃでありながら一応の敬意を払われる「ぼく」に移行することが許されています。しかし女の子はいきなり大人として「わたし」を使わなければなりません。同時に男の子よりも大人らしく振る舞うことを求められます。二人称の敬称でも男の子は「くん」があるのに、女の子は「さん」になります。これは「女の子は男の子のやんちゃを我慢しろ、女の子は自由に振る舞ってはいけない」という男女差別です。特に女の子が「わたし」を使わずに名前呼びするのは、この差別というか、理不尽な差への無意識の抵抗かと思います。